コロナ禍を背景に、多様な働き方が浸透しつつある。今、企業に求められているのは、場所や時間に縛られず、社員が仕事に集中でき、成果を最大化できるようなデジタル上の環境を整えることだ。そこでセールスフォース・ジャパンが提案するのが「Digital HQ」という概念である。同社が提供するサービス「Slack」を活用し、時流に即した高度なコミュニケーション/コラボレーションを実現する方法に迫る。
ビジネスの歴史の中で、我々の働き方は大きく変化してきた。オフィスの自分のデスクで仕事をするスタイルから、1990年代~ 2000年代には社員間のコラボレーション促進を目指したフリーアドレス制の導入が加速。そしてコロナ禍を経た現在は、クラウドサービスをフル活用したリモートワークと、オフィスワークのハイブリッド型を採用する企業が増えている。
「これらの変化を経験した上で感じるのは、重要なのは仕事する場所ではなく、社員が仕事に集中でき、成果を最大化できるかどうかだということです。そのための機能を備えた環境として、当社は『Digital HQ』を提唱しています」とセールスフォース・ジャパンの伊藤 哲志氏は説明する。
Digital HQとは、文字通りデジタル空間の本社(Head Quarter)であり、会社を動かすデジタル中枢となるという意味で誰もがいつ・どこからでもアクセスでき、仕事に集中できるようなデジタル上のワークスペースのことを表している。
このDigital HQの基盤となるのが、同社が提供する「Slack」だ。Slackをビジネスチャットツールだと考えている人は多いかもしれない。ただ実際は、ほかにも多彩な機能を備えている。「Slackは、社員のコミュニケーション/コラボレーションを加速し、ビジネスライフをより快適かつ有意義なものにするために生まれたビジネス用のメッセージングプラットフォームです。Digital HQに必要な機能を網羅的に提供することで、その実現を支援します」と伊藤氏は強調する。
具体的に、必要な機能とは「サイロ化の解消」「柔軟性の向上」「仕事の自動化」の3つだ。
1つ目のサイロ化の解消について、Slackでは、トピックやプロジェクトなどのテーマに沿ったコラボレーション、ディスカッションを行うための仮想スペースとして「チャンネル」を用意している。「チャンネルは、いわばドアのない、ガラス張りの会議室。誰でも自由に議論に参加できる環境を用意し、組織のサイロ化の解消につなげます」(伊藤氏)。
その特性は、メールのコミュニケーションと比較すると分かりやすい。例えば、誰でも一度は、件名が「Re:Re:Re:Re:Re:Re:」となったメールを見たことがあるだろう。やり取りを続けるうちに返信メールが重なっていく。その途中では重要な添付ファイルが抜け落ちたり、タイトルが内容と無関係なものになっていたりする。「これでは適切な情報共有はできません」と伊藤氏は言う。
一方、Slackのチャンネルでは、扱われるトピックの最新情報をすぐ参照できるほか、蓄積された過去のやり取りも簡単に時系列で閲覧可能。後から加わったメンバーも、スムーズに状況をキャッチアップできるだろう。
2つ目は柔軟性の向上だ。コミュニケーション/コラボレーションにかかわる場所・時間の制約を取り払う。これを実現する代表的な機能が「Slackハドルミーティング」と「クリップ」だ。
Slackハドルミーティングは、Slackのチャンネル内での音声によるコミュニケーションを支援する機能。一般的なWeb会議のように事前に日時を設定せず、「気軽に」「今すぐ」会話する用途を想定している。「オフィスでは『今ちょっといい?』といった感じで、同僚と会話することがあると思います。Slackハドルミーティングは、この立ち話のような距離感をデジタル上で実現する機能です」と伊藤氏は紹介する。
もう1つのクリップは、短時間の簡易音声/動画データをチャンネル内で共有する機能だ。例えばシステムの操作方法などを説明する場合、ドキュメントでは煩雑になり、分かりにくくなりがちだ。そんなとき、画面操作を録画した動画データを共有できる。各ユーザーがオンデマンドで確認できるため、タイムゾーンの異なる場所/拠点で働く同僚との齟齬のない非同期のコミュニケーションにも効果を発揮するだろう。
そして3つ目の仕事の自動化。様々なワークフローをマウス操作だけの「ノーコード」で作成できる。さらに、SaaSなどの多様な外部アプリケーションとの連携も可能だ。「2022年6月現在、連携可能なアプリケーションは2500以上。それらのアプリケーションに格納されている情報をSlack上で検索して取り込むといったことが簡単に行えます」と伊藤氏は語る。
これにより様々な業務や作業が効率化できる。例えば、Googleカレンダーに登録されたスケジュールを基に、「まもなく会議が開始される」といった通知をSlackで受け取ることが可能。または、Slackのチャンネルでミーティングをする際、Salesforceから売上情報を取り込み、それを見ながら複数名で話し合うといったことが簡単に実現できるという。
「特に、自社製品であるSalesforceとの強力な連携は強みの1つです。当社は、かねて『Customer 360』のコンセプトのもと、Sales CloudやService Cloud、Marketing Cloudなど特定部門向けサービスを提供してきました。そこにSlackが加わったことで、お客様・社内とのコミュニケーションのすべてを、Slack上で統合的に扱えるようになっています」(伊藤氏)
働く場所や時間について、幅広い選択肢が存在する現在、社員のモチベーションやパフォーマンスを最大化し得る職場環境を整えることが、ひいては組織の持続的成長を支えることになる。セールスフォースが提唱するDigital HQ、およびその基盤になるSlackは、これからの時代の働き方のカギを握るものといえそうだ。