場の熱量が心を揺さぶり
発想の転換を呼び起こす

新規事業を生み出さないと生き残れない。しかしゼロからの立ち上げは容易ではない。表現革新カンパニーを目指し事業創出に挑む老舗筆記具メーカーの三菱鉛筆は東京・渋谷に約2年半前に開設された共創施設「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」を活用し、社員のマインドセットを突き崩しにかかる。

野村 2019年12月、まず数原さん個人に経営者としてQWSコモンズに入会していただきました。長期ビジョンを描き始めた時期だそうですね。

数原 ええ。この2月には、筆記具メーカーから表現革新カンパニーへ生まれ変わるという長期ビジョンを発表しました。筆記具は一人ひとりのユニークを表現することに貢献するという原点に立ち返りました。ここQWSでも随分、討議を重ねましたよ。

野村 長期ビジョンの達成には新しい事業の立ち上げも求められますね。

数原 柱である筆記具事業は人口減やデジタル化の影響で持続性に課題があり、事業の立ち上げは必須です。デジタル時代は変化も大きく、社外とのネットワークが求められますが、単一事業で垂直統合を強みにしていたためそこが弱かった。

その中でゼロから事業を立ち上げるのは容易ではありません。そこでまず、2020年4月に社内公募でプロジェクトチームを組織しました。事業が生まれるまでは収益を生みませんから、社内の目に耐えられる熱量を求めたのです。

このチームの活動開始に合わせ、QWSコーポレートメンバーに入会しました。社外とのネットワークを強化したいといっても、相手は選ぶ必要があります。その点、ここで出会える人は審査を経た安心できる人です。短期間で深い関係性を築くなら、QWSのような信頼できるプラットフォームが必要です。

活動拠点として提供する「PROJECT BASE」

■施設概要 「SHIBUYA QWS」は渋谷駅直結直上の渋谷スクランブルスクエア15階にある。東急、東日本旅客鉄道、東京地下鉄の3社で設立した渋谷スクランブルスクエアが2019年11月に開設し運営する。QWSコーポレートメンバー・パブリックメンバーは企業と自治体を合わせ31法人・団体(2022年2月現在)。入会金は5万5000円、会費は年額110万円

常駐コミュニケーターが
会員をさりげなくつなぐ

野村 QWSにはコーポレートメンバーのほか、何らかの課題意識の下で新しい価値創造に挑戦する個人やグループがQWSメンバーとして入会しています。審査ではやる気のほか、なぜそれに挑戦するのか、思いの原点を見ます。高い壁を前にしたとき、乗り越えられるか否かは、その強さにかかっていますから。

渋谷というまちの多様性や寛容性が反映された場でもあります。QWSメンバーは30代までが約65%を占め、10代も10%近くいます。新しい価値観を持つ若い世代の発想に触れ、事業を生み出すチャンスが眠っています。

数原 出会いの演出はすごいですよ。私たちだけでは誰ともつながれませんが、コミュニケーターという常駐する人材が適切な人とさりげなくつないでくれます。しかも、後々まで丁寧にフォローまでしてくれます。

典型は、ギャルマインドを会議の場に持ち込む「ギャル式ブレスト」の考案者である「バブリースクール」との出会いです。正直、成果に期待していたわけではありませんが、私もブレストに参加し、非常に刺激を受けました。

そこでは、自分の感性で感じたことを率直に主張できるのが「ギャル」という定義を聞かされました。ノリがいいだけでなく、意識が高く何かを変えるパワーを持つ人たちであると気付き、運営側の見る目への信頼が高まりましたね。

野村 彼女たちは「QWSチャレンジ」の2期生です。「未知の価値に挑戦するプロジェクト」を3カ月ごとに公募するもので、採択チームはここを無料で利用できます。こうしたプログラムが、出会いの幅を広げています。

数原 QWSの利用から8カ月後には、クリエーターが講師を務めるオンラインレッスン配信サービス「Lakit(ラキット)」の事業化を決め、2021年6月から運用を始めています。社外パートナーと協業しサービスを提供するマインドを持てたのは、ここのおかげです。

「問い」を立てることで
新しい視点やアイデアを

数原 事業立ち上げ時は、それがなぜ必要か、どう役立つか、という視点が必要ですが、技術者は得てして、どうつくるかという点に目を奪われがちです。チームメンバーは「なぜ」の重要性に改めて気付かされた、とも話しています。

活動中の「問い」を掲示する「Project Board」

野村 QWSでは「問い」を立てることを、皆さんにまず求めています。「問い」を立てることで、新しい視点やアイデアに気付かされます。それが、新しい価値創造につながっていくのです。

ここで活動中はテーブルの上に「問い」を書いたパネルを立ててもらい、出会いの呼び水にしています。どのような課題意識を持っている人か分かれば、話し掛けやすいですからね。コミュニケーターもそうですが、日本の共創施設には出会いを促す仕掛けが欠かせません。

数原 長期ビジョン検討時、筆記具を通して人の創造性を解き放つことに貢献してきたという視点が生まれました。そうしたマインドセットの転換も、QWSだからこそ可能でした。今後も、表現革新カンパニーへの生まれ変わりに向け、ここを活用していきます。

野村 ビジネス立ち上げ段階での支援が不十分といわれる中、QWSはそこに特化しています。多様な「スペース」と「コミュニティー」、独自の「プログラム」という持ち味を生かし、皆さまのブレークスルーを後押ししていきます。

お問い合わせ

SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)

https://shibuya-qws.com/premembershiplp/