ブランド横断で顧客データを活用 新たなカスタマーエンゲージメントの創出へブランド横断で顧客データを活用 新たなカスタマーエンゲージメントの創出へ

目指すのは
ファッションエンターテインメント創造企業

 数々のレディースアパレルや、ストリートファッションなど、50以上のファッションブランドを展開するTSIホールディングス。同社を代表するブランドの1つ「ナノ・ユニバース」は、手頃な価格帯と洗練されたデザインで男女、年代を問わず多くのファンを持ち、オフィスカジュアルに利用する顧客も多い。ゴルフを趣味に持つ読者なら、「パーリーゲイツ」「PINGアパレル」「ニューバランスゴルフ」などを運営している会社と聞けばピンとくるかもしれない。

 現在、同社は大きなビジネスの変革に挑んでいる。目指すのは「脱アパレルonly企業」「ファッションエンターテインメント創造企業」だ。総合アパレル企業の大手として、数多くのブランドとアパレルプロダクトを提供してきたが、プロダクトに限らない、新しい価値の提供にチャレンジしようとしているのである。

 「これまで私たちはウエアやアクセサリーなどの『モノ』を提供することそのものがビジネスであり、顧客エンゲージメントの中枢と捉えていましたが、現在のお客様が求めるのは、モノそのものによる価値だけではなくなってきています。では、お客様は、そのブランドやファッションに何を求めているのか。よく『コト』と表現されますが、モノの品質や機能、デザイン性だけではなく、そのモノが実現してくれるコトによる豊かさや、得られる新たな体験や楽しみです。つまり、ファッションは『楽しい』エンターテインメント。モノ・コト・イミの体験、そして、それらの体験をエンハンスするコンテンツやサービスまでが一連のストーリーとなったエンターテインメントこそがファッションなのです。ファッションアイテムは、この全体のストーリーの中の一部に過ぎない。極端にいえばリアルな洋服を提供しなくてもファッションによるエンターテインメントは提供できる。私たちは、新しいエンターテインメントを創出し、お客様に新しい価値を提案していきたいと考えています」と同社の渡辺 啓之氏は述べる。

データのサイロ化が
顧客理解を阻む

 友人や恋人と食事を楽しむ。仲間とスケートボードやゴルフを楽しむ。顧客がファッションと共に過ごす時間に、どんな価値を提供できるのか。「例えばスケートボードなら、仲間がパークに集まってトリック(技)を披露する。最近は、それを動画に撮影し、SNSなどを通じて、その場にはいなかった人とも共有するなどコミュニケーションも多様化しています。このように現在の体験はオンラインとオフラインが密接に融合しています。OMO(Online Merges with Offline)といわれますが、このようなオンとオフ、それぞれの良さを生かした体験はファッションエンターテインメントの一例です。リアルなイベントを開催しながら、仮想空間のコミュニティでお客様と一緒にそれを盛り上げ、ともにブランドを育てていくなど、様々な可能性が考えられます」と渡辺氏は言う。

 新しい発想で、新しい体験を創出し、変革を実現していくには、従来のように買い物のタイミングに限定された「点」ではなく、顧客の生活に寄り添って、顧客の好みやライフスタイル、顧客行動の原動力となっているモチベーションなどを深く理解しながら、「線」で継続的なエンゲージメントを持ち続ける必要がある。

「ブランドごとに、お客様一人ひとりの理解を深めるのはもちろん、グループ全体でもお客様をさらに深く理解し、パーソナライズしたコミュニケーションとストーリーによる楽しさを継続的に提案していかなければならないと考えています。各ブランドが見ているお客様は、1つの側面にすぎませんが、全社でお客様と向き合えば、そのお客様をもっと多面的に理解することができます」と同社の岸 武洋氏は言う。

 継続的なエンゲージメントの根底にあるのは深い顧客理解だが、前述した通り同社はブランドごとに顧客対応を行なってきたため、顧客情報もブランドに分散している。仮にある顧客が平日はレディースアパレル、休日にはゴルフウエアを着用してくれていても、ブランドをまたいで、それを一人の顧客と把握することはできない。

 「ブランドを横断して顧客データを統合しよう――。そう考えましたが、ブランドごとに管理しているデータの種類や粒度に違いがあるという問題に直面しました。店舗とECサイトでIDを統合こそ実現できていましたが、購買以外の来店やECサイト来訪時の行動データ、アプリのデータなどを多面的に管理できているブランドとそうでないブランドが存在していました。1年前の購買データを基にオファーを送り続けているケースなどでは、すでにお客様は家族を持ったり、ライフスタイルが変わったりして、そのブランドのファッションを着用するステージにいないかもしれない。これでは統合しても、偏った、ともすれば誤ったお客様の側面を見ることになってしまいます」(岸氏)

最適なデータ活用プロセスの
構築を目指す

 このような状況を打破するために、同社はグループ統合CDP(Customer Data Platform)として「Treasure Data CDP」を導入。各ブランドの持つ顧客データを、ここに収集・統合することにした。

 「しかし、単に仕組みを導入することは私たちにもできますが、各ブランドでどんなデータを取得して、どのように整理し、どのようなロジックで分析すれば、どんなインサイトが得られるかといった、一連のデータ活用のプロセスを私たちだけで早期に構築するのは困難であると考えました」と渡辺氏は話す。

 そこで、力を借りることにしたのがソフトバンクだ。

 近年、ソフトバンクは、企業や社会のDX支援を事業の柱の1つに据える中で、データ活用についても様々なプロジェクトに取り組み、豊富な知見を蓄積している。具体的には、データ活用の戦略立案・施策実行、運用・テクノロジーの導入、デジタルマーケティング施策の実行までをワンストップでサポートするデータ活用コンサルティングサービスを提供しており、そのソフトバンクのノウハウに大きな期待を寄せたのである。

 「私たちが持っているデータだけでなく、外部のデータと組み合わせることでより深いインサイトに辿りつける。ソフトバンクなら、活用ノウハウから外部データの提供まで、データ活用のベストプラクティスに基づいた幅広いサポートが期待できる。そこで力を借りることにしました」と渡辺氏は言う。

「LINE」を活用した
マーケティングの最適化から確実に歩を進める

 顧客情報を全社で統合し、ブランド個々ではなく、グループ全体で顧客を理解し、新しい価値を提案していく。

 とはいえ、単にデータ環境の整備を掲げても漠然としていて、ブランド側の担当者は、どこから手を付けるべきか判断が難しい。そこで、ソフトバンクと議論し、まずは各ブランドの「LINE」を活用したマーケティングの最適化と強化を目先のテーマに据えた。

 「先ほど述べたようなお客様情報のサイロ化はLINEを活用したマーケティング上でも起こっています。例えば、LINEの友達登録はされていても、そのLINE IDとECのIDはひも付いていない。そうしたブランドなどが存在しています。これでは、買った商品、買った時期に応じてパーソナライズしたメッセージを送ることもできません。まずはLINEとECのID統合を図り、ブランドとお客様とのコミュニケーションを活性化。その過程で、どんなデータを追加すれば、よりよいコミュニケーションが行えるかも検討しながら、全社の統合データ環境の整備を進めていきたいと考えています」と岸氏は言う。

 支援を行うソフトバンクの小林 紘平氏(デジタルマーケティング本部)は、次のように述べる。「多くの企業がDXに取り組んでいますが、中心にあるのはデータ。DXとは、データを価値に変えるための取り組みともいえます。業種や業態によって、所有するデータや実現したい価値は変わってきますが、ソフトバンクは様々なお客様を支援する中で汎用的なデータ活用ノウハウだけでなく、各業界に特化したノウハウも蓄積しています。今回、TSIホールディングスが取り組んでおられるB to C領域の顧客理解もその1つ。経験と知見を駆使して、TSIホールディングスの取り組みを力強くサポートしていきます」。

 ファッションエンターテインメント創造企業への変革を掲げ、その実現に向けた取り組みを加速させているTSIホールディングス。これから、どのような体験や感動、楽しさを私たちに提供してくれるのか。大いに期待したい。

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※7/21 時点の記事です