2025年の崖を越えるため、企業はシステム環境をレガシーからクラウド、そしてコンテナに代表されるFuture ITへ進化させようとしている。だがインフラや使う技術が変わっても、市場に変化を起こす「源」となるのはデータだ。真の意味で崖を乗り越えるには、データを確実に保護し、新たな価値を生み出すためのデータマネジメントが重要になる。Veeam Softwareの講演では、変革に向けたデータマネジメントのポイントを解説した。
DXに向けて多くの企業がレガシーシステムからの脱却を本格化させている。その流れはサーバー/ストレージ/ネットワークなどで構成されていた物理インフラの仮想化からスタートし、クラウドによる自動化へと移行。これによりプライベートクラウドやハイブリッドクラウド、SaaSサービスの活用が一気に進んだ。
今後はさらにアプリケーションやサービスの開発を加速させるため、コンテナ環境へ進化していくと予想される(図1)。
コンテナとは、アプリケーションの実行環境(CPU/メモリ/ファイル/ライブラリ)を構築するための入れ物=「コンテナ」を作成し、Dockerをはじめとしたコンテナエンジンでアプリケーションを動作させる技術である。クラウド/オンプレミスを含め異なるシステム間でアプリケーションを移動できるため、ビジネスのスピードを高め、様々な変化に対応できる柔軟な経営基盤の構築に貢献する。
「現状業務の維持を目的としていたレガシーシステムは、事前に決めたシナリオ通りに作るウォーターフォール型で外部ベンダーが開発を行うのが一般的でした。しかし各企業が新しい価値を生み出していくことが目的のDXでは、実現するべき結果を考え、素早く機能を開発・改善・リリースしていくための内製化が必要です。その中核技術となるのがコンテナです」と、高橋氏は説明する。
このように企業のインフラは大きな変革を遂げてきた。しかし、この先インフラがどのように変化しても、競争力の源泉となるのは情報、つまりデータだ。
「3年後の2025年になっても、インフラとしての物理環境や仮想環境、クラウドなどはそのまま残っているでしょう。コンテナ環境が加速していくのは間違いありませんが、それでも今ある環境はまだまだ存在しているはずです。つまりDXに向けて企業がデータを効果的に活用していくためには、様々な環境に分散するデータをいかに確実に保護・管理していくかがポイントなのです」(高橋氏)
こうした課題を解決するデータマネジメントソリューションを提供しているのがVeeam Softwareだ。同社のプラットフォーム製品となる「Veeam Availability Suite」は、データ保護ソリューションである「Veeam Backup & Replication」に、オンプレミスとクラウドの監視・レポート機能を一元化した「Veeam ONE」をセットにしたもの(図2)。
Veeam Backup & Replicationは、物理・仮想・クラウド・アプリといった多様なワークロードでの柔軟なバックアップとレプリケーションを行い、確実なデータ保護を実現。保護されたデータにはモビリティー性があり、クラウドへの移行や災害復旧構成も容易に実現できるという。
一方のVeeam ONEは、Veeam Backup & Replicationでデータを保護している状況をリアルタイムでモニタリングし、各環境の包括的な監視と分析を可能にする。
「Veeam Availability Suiteは、大切なデータを確実に保護しながら柔軟な活用を支援します。単なるバックアップ製品ではなく、1つのプラットフォームでレガシーからDXへの移行を支えるデータマネジメントソリューションです」と高橋氏は話す。
もう1つ注目されるのが、複数のコンテナ群を一括管理するKubernetes環境のバックアップ/ DRを実現する「Kasten K10 by Veeam」という製品だ。Veeamは2020年にKastenを買収し、Veeamがこれまで提供してきたデータマネジメントプラットフォームに、新たにコンテナのデータ保護機能を追加・統合した。
「当社のプラットフォームを導入されたお客様は、物理・仮想・クラウド・コンテナといったインフラ環境を意識することなくデータを確実に保護できます。そして膨大なデータを柔軟に活用しながら、2025年の崖を“シームレスに越える”ことが可能です」と高橋氏は説明する。
なぜこうした先進的なソリューションが提供できるのか。それは同社の歴史にひも付いている。Veeam Softwareは2006年、仮想マシンのバックアップ・復元を支援するソフトウエア企業としてスイスで創業。以後、物理システム、仮想システム、SaaSサービス、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウド、マルチクラウドといったデータの保存場所にかかわらず、あらゆるデータの保護・利活用を支援する製品・ソリューションを提供し、現在は世界180カ国以上で40万社以上の顧客を持つグローバル企業へと成長している。
「当社はVMwareやHyper-Vといった仮想環境のバックアップから始まり、次いでデータセンターなどの物理環境、そしてクラウド、コンテナへと製品ラインアップを拡充してきました。企業のITインフラの進化と共に我々も同じ歴史を重ねてきたのです」と高橋氏は説明する。だからこそ同社は、DXに向けたデータ保護と利活用のニーズを先取りした多様かつトータルなソリューションを提供できるわけだ。
「2025年の崖まであと3年あります。その間に物理・仮想環境を徐々に減らし、クラウドもしくはコンテナに移行する環境を考えていく。一気にやるのではなく着実かつシームレスにというのが大きなポイントです」とアドバイスする高橋氏。現在そして未来のワークロードも保護しつつDXに向けたデータ活用を考えている企業は、今すぐにデータマネジメントプラットフォームの導入を検討すべきだろう。