Transformation to BEV Vol.3

マティアス・シェーパース氏×
深尾三四郎氏 特別対談

アウディの電動化戦略に見る
日本での電気自動車普及のカギとは

アウディの
電動化戦略に見る
日本での電気自動車
普及のカギとは

自動車業界は“100年に一度の大変革期”を迎え、今自動車は急激に電動化が進んでいる。そうした中、アウディは2026年以降に発売するニューモデルはすべて電気自動車とすることを発表した。そこにはどのような戦略があるのか、自動車業界の未来図はどのように変化していくのか。アウディ ジャパン ブランドディレクター マティアス・シェーパース氏と伊藤忠総研 上席主任研究員の深尾三四郎氏による対談が行われた。

“100年に一度の変革期”は
「脱炭素」「SDGs」がキーワード

シェーパース 自動車業界は今、100年に一度の変革期と言われていますが、それは日本だけでなく、ヨーロッパやアメリカ、中国も含め、世界中で電動化に向けた大きな波が押し寄せています。

深尾 2016年にCASE(Connected、Autonomous、Shared、Electricの略)という言葉が生まれてから、大変革が進んでいることを確かに実感しています。それは自動車産業の変革だけでなく、社会全体の変革でもあります。自動車産業は社会において、脱炭素とSDGsをキーワードに新しい提供価値を求められているのだと思います。

シェーパース 20年の世界市場における電気自動車の販売比率は5%ぐらいでした。それが21年には約10%になった。ノルウェーのような普及率の高い国ではすでに電気自動車が登録車の6〜7割を占めています。そしてイギリスやドイツでも2〜3割までシェアが上がっています。一方で、日本全体では約1%、アウディジャパンでは、昨年が約2%でしたが、カーボンニュートラルに向けた動きの加速に伴い、今後日本でも世界と同様の傾向が表れてくるものと確信しています。

深尾 アウディのドイツ本社は昨年、新たな経営戦略 「Vorsprung 2030」を発表されましたが、日本でもその戦略にのっとって進んでいくのでしょうか。

シェーパース 全世界で掲げているアウディの電気自動車、そして、ゼロエミッションに対する戦略で、もちろん日本でも進めていきます。「Vorsprung」という言葉は、直訳すると「一歩先に出る」という意味で、固定観念にはまらず、常に新しいものにチャレンジしていこうという、1970年代からアウディが使ってきたブランドフレーズの一部です。これはとても勇気がいることですが、アウディブランドとしては、26年以降は新たな内燃エンジン車を導入しない、つまり、26年以降のニューモデルは電気自動車しか発表しない。さらに33年までには、内燃エンジン車の生産を終了する。そうしたマイルストーンを掲げています。日本でも24年までに15車種以上の新型電気自動車を導入して、販売構成比は35%、最低でも1万台のセールスを想定しています。

深尾 それはとても戦略的ですね。世界的にはこの数年、電気自動車が普及するために必要な、例えば再生可能エネルギーの能力増強や、充電インフラの拡充などが進んでいます。そこに注力している国や地域では、電気自動車の比率が大きく伸びている傾向が見られます。ヨーロッパや中国で何が起きているかというと、電気自動車のための社会インフラというものが整ってきた。そうした中で消費者の電気自動車に対する認知度や社会受容性が高まっているといった背景があります。さらに自動車メーカーから新しい電気自動車の選択肢が登場することで、販売台数も伸びてくると思います。

シェーパース まさにその通りだと思います。アウディが20年に日本に初めて導入した電気自動車は「e-tron」というモデルです。当然自信作ですが、1000万円を超える価格帯ということもあって、購入できる方は限られています。そこでさらに電気自動車を普及させる、選択肢を増やすという狙いで、今年は「Audi Q4 e-tron」を日本に導入いたします。スタートプライスは500万円台で、プレミアムブランドとしてのボリュームモデルを担う位置付けになります。