広告企画 水ビジネス特集

ビジネスの制約因子になる、あなたの知らない世界

目覚めるか!?水先進国ニッポン 水の叡智と限界技術で臨む、Next戦略

水道を捻れば綺麗な水が、
常時出る日本。

水資源、水技術、水経済への関心が低いのも無理からぬことかもしれない。
しかし、世界動向や時代要請を鑑みると、そこには日本企業が貢献できること、
早急に議論を始めるべきことがたくさんある。
企業社会をリードする弊誌読者だからこそ知ってほしい
「水の叡智」と「限界技術」について、その最前線を取材した。

総論

知っておきたい水の「叡智」と「技術」の今
地域性を見極める知恵を働かせ
顧客の要求に応えられる技術を

2030年には110兆円を超えるとみられる巨大な市場が広がる水ビジネス。その市場攻略に向け、「叡智」や「技術」をどう生かすか。経済産業省の「⽔ビジネスの海外展開に関する有識者研究会」で座長を務めた東京大学大学院工学系研究科教授の滝沢智氏に聞いた。

人間が水なしに生活できないように、企業も水なしに生産活動を展開できない。海外への拠点展開で水の確保は見過ごせない要素だ。

「水の視点を持つことは、ビジネス上も重要なことです」。そう指摘するのは、東京大学大学院工学系研究科教授の滝沢智氏だ。

都市近郊への工場展開では
水のリサイクル技術向上を

水の問題は、第一に都市の問題でもある。都市の時代を迎え、とりわけ新興国の都市で居住人口が急増すると予測される中、それらの都市では水不足が懸念される。

「市場である都市の近郊に工場を置こうにも、都市の渇水が制約を課す恐れがあります」と滝沢氏。水は各国固有の資源であり、海外企業の水利用を快しとしない恐れもあるという。

求められるのは、工場外からの水供給を最小限に抑える叡智と技術だ。「『ウオーターフットプリント』を減らす考え方に立ち、工場内で必要な水をリサイクルする技術の向上を図るべきです」(滝沢氏)。

「ウオーターフットプリント」とは、ライフサイクル全体で消費する水の量を指す。海外に限らず、安定的にビジネスを展開していくうえで、今後、不可欠の視点だ。

東京大学大学院工学系研究科 水環境工学研究センター長 都市工学専攻教授 滝沢 智氏

東京大学大学院工学系研究科
水環境工学研究センター長
都市工学専攻教授
滝沢 智氏

水の叡智や技術は、需要側だけでなく供給側にも求められる。その一つが、ここでも例示した産業用水の供給、もう一つは生活用水の供給だ。ともに水ビジネスとして市場の拡大が期待される事業領域である。

ここで市場の全容を、あらためて概観しておこう。経済産業省が2021年3月にまとめた「⽔ビジネス海外展開施策の10年の振り返りと今後の展開の⽅向性に関する調査」では、水ビジネスの市場規模や分野別推移を示している。

まず市場規模。図1は、世界31カ国を対象に水ビジネスの市場環境や経済状況などから有望地域を示したもの。需要喚起要因には「人口問題」「経済成長」などが挙げられる。

有望地域には先進国も含まれる。それは、欧米で水インフラの「老朽化」に起因する更新需要が見込まれるから。それがまた、水ビジネスの大きな市場を生み出している。

地域別にみた水ビジネス市場規模と主要な需要喚起要因

2030年には2020年比280%
成長見込める海水の淡水化

次に分野別推移である。図2を基に、「上水」「下水」「産業用水」「海水淡水化」というくくりで見ると、市場の伸びという観点から目に付くのは、「海水淡水化」である。規模は小さいながら、2030年には2020年比で280%の伸びが見込まれる。

滝沢氏は「新興国を中心に人口100万人を超える都市が沿岸域に増えていく見通しです。既存の水源に余裕がない中、海水淡水化に期待が寄せられています」と解説する。

成長が見込まれる一方で、課題と指摘されるのは、電力の安定供給だ。中東では海水淡水化による造水事業と発電事業を組み合わせた大規模施設が整備されているが、それはスケールメリットが働くからこそ。海水淡水化の広がりに合わせて電力網から電力供給を受ける小規模施設向けの展開も考えざるを得ないという。

また「産業用水」は「下水」ほどではないものの「上水」を超える伸びが見込まれる。その一つが、不純物を取り除き、純度を極度に高めた超純水だ。主に半導体の製造で微細な回路の洗浄工程に用いられる。

滝沢氏は超純水製造装置を開発・提供する日本企業の競争力の高さを評価する一方で、半導体製造の主力が海外メーカーに取って代わられた中で、それをどう維持していくかが課題と指摘する。

「半導体メーカーが今後、超純水に何を求めていくのか。それが、その製造装置を開発・提供する日本企業の技術レベルを決める因子になっていくとみています」

世界の水ビジネスの分野別推移(2010年~2030年)

日本の叡智と技術の評価へ
将来の中核人材を受け入れ

一方、生活用水である「上水」や「下水」の成長性は言うまでもない。ただ産業用水と異なり、地域特性を踏まえることが欠かせない。滝沢氏は課題をこう指摘する。

「水質一つ取っても、世界中が同じ基準を求めてはいません。水は地域性が非常に強い商材なのです。それだけに、その供給事業に求められる技術水準も地域で異なります」

市場開拓にあたっては、日本企業の水に関する叡智や技術を押し付けても、うまくはいかない。課題を乗り越えるには、ビジネス展開を考える地域の特性を踏まえ、技術水準に関する認識の差を埋めながら、顧客の要求に的確に応えられる技術を提供することが欠かせない。

さらに受注に向け競争入札という手続きがあることを考えると、それだけでは不十分だ。発注者側に日本企業の叡智や技術を適切に評価する目がないと、結果は得られない。

そうした意識から滝沢氏が大学人として携わるのは、人材育成である。東京大学大学院工学系研究科では2018年9月、国際協力機構(JICA)とともに留学生受入プログラム「水道分野中核人材育成コース」を開始。海外の上下水道事業に携わる人材を毎年5人程度受け入れている。

「卒業生はいずれ、自国で中核人材として活躍していきます。日本企業の良さを評価してくれるようになると期待しています」と滝沢氏。育成を続ければ、中核人材のネットワークづくりにもつながるという。

人材の育成に水の「叡智」や「技術」を生かす――。これも水ビジネスの海外展開に向けた戦略の一つ。布石の役割に期待が高まる。

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