ウィプロ・ジャパンは、67の国・地域で22万人を超す従業員を抱えるインドのITサービス大手「Wipro Limited」の日本法人だ。1998年の設立以来、グローバルな知見と実績を生かし、日本企業の厳しい品質基準に応える多様なITサービスを提供してきた。
「日本企業がグローバルの競争力を高めるには、DXを通じ、ビジネス価値を創造することが求められています。そのためには、『ビジネス変革』『プロセス変革』『テクノロジー変革』という3つの変革に取り組む必要があります」と語るのは、同社の新内 義和氏である。
1つ目の「ビジネス変革」とは、新しいビジネスモデルの構築と顧客体験の変革、2つ目の「プロセス変革」は、ビジネスプロセスと連携するエンタープライズアプリケーションの変革を指す。そして、3つ目の「テクノロジー変革」は、エンジニアリングの変革と新しい働き方の構築・導入を意味する。
これらの変革を三位一体でバランスよく進めることで、価値創造を実現する組織へと発展していくことが可能となるという。
しかし、日本市場においてはこうした取り組みを阻む大きな壁が存在する。基幹系システムのモダナイゼーションだ。日本ではERPの導入から20年以上が経過したほか、メインフレームの利用比率も諸外国と比べて高いからだ。
「クラウド化、およびモダナイゼーションは喫緊の課題です。我々は、SAP、Oracle、Microsoft、AWS、Google、IBMといった主要ベンダーや、先端技術を持つテクノロジー企業とパートナーシップを結び、クラウドネイティブな基幹系システム開発とIT変革の支援に力を入れています」と新内氏は話す。
Wiproは、CoEと呼ばれる業界やファンクションごとの専門性を蓄積した人材育成/ 供給センターを保有。CoEをフル活用しながら、難易度の高いグローバルプロジェクトで成功を収めている
それを支えるのが、社員数22万人、顧客数1200社以上を数えるシステム構築および運用保守の実績を持つWiproの組織力だ。日本企業に対しても、長年の実績とノウハウを生かしたクオリティ、スピード感、経験値で十分な支援体制があるという。
例えば、日本では、IT人材不足が深刻な問題となっている。経済産業省の調査(2019年3月)によると、従来型IT人材と先端IT人材を合わせ、2030年には最大で約79万人の不足になるという試算が出ている。
「こうしたギャップを埋め、日本の成長率を高めていくには、豊富な人材を持つ米国・インド・中国などのリソースをいかに活用していくかが重要なポイントです。Wiproでは、基幹系システムの開発・運用に携わる従来型のIT人材に加え、SaaSやデータ活用に長けた先端IT人材、そして全方位型の人材が、グループ横断の人材タンクであるCoE(Center of Excellence)を組成することで、グローバルにお客様を支援しています」と新内氏は説明する。
具体的には、SAP、Oracle、Microsoftといった製品開発元と連携したグローバルでのプロジェクト経験をアセット化して蓄積。さらに先端技術を持つ製品ベンダーとも連携し、各製品のグローバル展開を支援する。
「Celonis、Snowflake、Riversandといった、これから日本でも活用が進む先端的なソリューションには戦略的に人材を配置するなど、CoEでは時代に応じて柔軟にリソース配分を変えています」と、新内氏は付け加える。
人材の豊富さは規模の面でも目立つ。例えば、SAPコンサルタントはグローバルで1万4000人以上に上り、担当したSAP S/4HANAおよびHANAプロジェクト数は150件以上だという。
また、SAPを巡っては、各国にイノベーションスタジオとセンターを配置。SAP本社のあるドイツのヴァルドルフには、同社との共同イノベーションラボを置き、常に最新技術や機能に対する深い知識や提供ノウハウを磨いている。
「そうしたグローバルのリソースを日本も含めた世界各地のリージョンに素早く展開し、お客様のモダナイゼーションやDXの推進を支援することができます」と新内氏は述べる。
Wiproは、グローバルで1000社以上の顧客を、1万4000人を超えるSAPコンサルタントが支援する。各国にあるイノベーションセンター/スタジオを通じ、SAP S/4HANA 移行を含む包括的なサービスとノウハウ共有も提供している
では、こうしたリソースを生かして具体的にどのようなサービス、ソリューションを提供しているのか。
その1つが、様々なシステム/アプリケーションのプロセスを可視化することで、現状を把握し業務改善につなげる「プロセスマイニング」だ。Wiproでは、システム運用保守のアウトソースや、アプリケーション入れ替え時のプロセス改革でプロセスマイニングを活用。顧客業務の効率化や戦略策定に貢献しているという。
またCoEの活動の一環として、「デジタルSAPソリューションのアセット化」も進めている。過去のSAPプロジェクトの成果物をアセット化し、新規顧客のビジネスの文脈に沿った最適なソリューションをスピーディーに適用可能とする取り組みだ。
さらに、「データ/アナリティクスサービス」では、基幹系システムやアプリケーションのクラウド化に際し、企業がデータに基づく意思決定を最適化する仕組みを提供。新しいビジネスモデルの獲得やイノベーションの創発に加え、データのセキュリティ・品質の向上や法令遵守も推進できるという。
「こうしたグローバルのリソースを日本のお客様に提供することで、日本のIT業界を支えていくのが当社のミッションです」と新内氏。IT人材不足に直面する日本企業に対し、ウィプロ・ジャパンは協創パートナーとして、グローバルでの知見と経験をベースに世界で勝ち抜く道筋をつくっていく考えだ。