──ウィプロは企業の「クラウドトランスフォーメーション」を支援するとうたっています。そもそも、クラウドトランスフォーメーションとは何を指すのでしょうか。
新内│現在、企業のデータが様々なレベルでクラウドに保存できるようになっています。最も下層にあるのは、センサーやカメラなどのマシンが蓄積するデータで、近年のIoTの浸透によって、爆発的な勢いで増えています。
一方で、SaaSに代表されるビジネスアプリケーションのレベルでも、ご存じのように営業やマーケティングのようなフロント業務から経理や人事のようなバックオフィス業務まで、企業は様々な業務でクラウドを活用しています。ここから生み出されるデータもクラウド上に蓄積されています。しかし、その両方に挟まれる形で、依然としてオンプレミスにデータが置かれているのが企業の基幹システムです。
企業経営者は今、データを駆使して迅速に意思決定し、変化に対し柔軟に対応することが求められています。そのためには、基幹システムをクラウド上に移行し、クラウドのメリットを享受しなければいけません。それを当社ではクラウドトランスフォーメーションと呼んでいます。
──基幹システムをクラウドに移行することで、どんなメリットが得られるのでしょうか。
新内│従来のオンプレミス環境では、データウェアハウス(DWH)というものを作ってデータを蓄積してきました。基幹システムがオンプレミスのままであれば、DWHへクラウドからのデータを持ってこなければ、データドリブンな経営はできません。
グローバルに活動する企業は世界各地の拠点にサーバーを置いて、そこで売り上げや在庫の管理をしています。月次の決算など、各国の現状を本社が知りたい場合は、各国の拠点からデータを送ってもらって、それを集計しますが、数週間かかることもあります。これでは、データドリブンな経営とは言えません。最初から各拠点のデータがクラウド上にあれば、集める指示を出す必要もなく、いつでも各地の状況を本社は確認することができます。
昨今明らかになったように、地政学的な問題によって、グローバル企業は特定の拠点のビジネスから撤退する判断をすぐに下さなければいけない場合もあります。
こうした事態に対応するため、数多くのグローバル企業が、データセンターからクラウドへ基幹システムを移行しています。裏を返せば、厳しい国際競争に勝ち残り、柔軟でスピーディーな経営を実行するには、基幹システムのクラウド化は待ったなしの課題なのです。