新型コロナウイルス感染拡大のパンデミックによって、人々の働き方やビジネスのあり方は大きく変化した。この経験から、企業は自社を取り巻くビジネス環境が、常に不確実性をはらんでいることをあらためて痛感した。状況に即したビジネス意思決定と、それに基づく施策の展開をいかにスピーディに実践するか――。この要求を満たすには、先進のデジタル技術を効果的に活用することが、これまで以上に重要になっている。
ただ一方で、現在の企業システムは、このような求めに即応できる状態とは言い難い。例えば、長年にわたり社内業務の効率化を担ってきたERPは、地域ごとのインスタンス構築、個別ニーズを吸収するため様々な周辺システムがアドオンされたことでより複雑化。業務プロセスの分断やデータの「サイロ化」が進んでしまっている(図1)。
事業活動を支える基幹系システムが、長年の運用を経て複雑化。財務/人材データの分散をはじめとするサイロ化や、マスタの不在といった問題が生じている
「経営意思決定に必要なデータの集計を行いたくても、IT部門や業務部門が相応の工数をかけて抽出作業を行い、場合によっては二次加工を実施しなくてはいけません。こうしたシステムを単純にクラウドに移行しても、仕組みを刷新しない限り課題は残るでしょう。レガシーシステムのままでは、環境変化への俊敏な対応は困難です」とワークデイの大八木 邦治氏は指摘する。
同社によれば、今企業に求められるのは、激しい時流の変化に素早く適応し、かつ変化の中でも成長し続けられる組織の「レジリエンシー」を獲得することだという。それには、個別最適でサイロ化された現状のシステムを脱却し、新たな経営基盤を整備することが不可欠になる。
そこでワークデイは、これからの企業システムが備えるべき特性として次の4つを提唱している。
1つ目は「スムーズなシステム基盤」であることだ。「具体的には、AIや機械学習などを駆使することで、定型的な業務プロセスの実行やデータ分析が状況に合わせて自動実行される状態を構築します。これにより、社員を定型業務から解放し、より創造的な業務に注力できるようにするのです」と大八木氏は説明する。
2つ目は、「企業の全体像を把握できる」こと。財務、人事などの情報が統合的に可視化でき、それらのデータをセキュアかつ容易に取り出して分析・利活用できることが肝心だ。
3つ目は「ビジネス優先のアプローチ」である。これは、ビジネス部門のユーザーが、必要に応じて業務フローの変更などを速やかに行える環境を指す。同時に、ユーザーによる変更は常に記録しておき、管理者であるIT部門がガバナンスを利かせられることも不可欠だ。
そして最後の4つ目は「継続的な戦略の再調整」を支援できることだ。ビジネス戦略における「計画」「実行」「分析」のサイクルを、トータルに回せる環境が必要になる。「計画は将来にわたり不変のものと考えるべきではありません。実践の途中でも、環境の変化に合わせて随時見直しをかけながら、調整・最適化していくことが重要です。これを柔軟に行えることも、これからのシステムが備えるべき重要な特性といえます」と大八木氏は述べる。
これらを満たすソリューションとして同社が提供するのが、「Workday エンタープライズマネジメントクラウド」(以下、Workday)だ(図2)。財務、人事、およびプランニングにかかわる機能をSaaS型で提供する。現在までに、グローバルで9500以上の企業・組織で利用されている。
統合化されたデータコアを核に、柔軟なビジネスプロセスフレームワークとセキュリティを組み込んだ基盤を整備。その上に財務、人事、計画にかかわるソリューションをSaaS型で提供している
「Workdayの特徴は、変化を前提につくられているということです。アドオンやカスタマイズという概念はなく、コンフィグレーション、つまり設定によって、それぞれ異なるお客様のビジネスプロセスに対応する柔軟なアーキテクチャを採用しています」と大八木氏は説明する。
具体的には、全機能に共通する統合データコアを中心に、柔軟性のあるビジネスプロセスフレームワークと単一のセキュリティモデル、ガバナンスを組み込んだ基盤が整備されている。その上に、ファイナンシャル マネジメント(財務管理)やヒューマン キャピタル マネジメント(人財管理)といったアプリケーションを実装。さらに、日々の業務の遂行に必要なプランニングや各種分析、レポーティング機能も備えている。
また、Workdayの最大のメリットが、情報のサイロ化を解消できることである。ヒト・カネの情報を統合し、それを横断的に分析・活用することで経営状況を俯瞰的に可視化できる。これにより、予算や人的資源の適正配分、ビジネス計画の最適化などが図れるようになるという。「例えば、あるプロジェクトに10人の人材が必要になった場合、以前であればマネジメントが知る範囲の情報や人間関係に基づいて、頭割りでアサインしていたでしょう。これに対しWorkdayでは、各人のスキルセットや職務経験など、明確かつ公正な情報を基にして人材を選出できます。そこに給与などの指標も加えて分析すれば、より最適な人員配置を実行できるでしょう」(大八木氏)。
また近年は、ISO 30414に基づく人的資本の情報開示についての関心が国内においても急速に高まっている。統合データコアで求められる情報を保持しているWorkdayであれば、そうした要請にもスムーズに応えていけるはずだ。
先行き不透明な“VUCA”の時代、ビジネスの計画から実行、分析に基づく見直し、そして再び実行というサイクルを回すことこそが、企業において不可欠になっている。それには、サイロ化した現状のシステムを脱却することが必要だ。変化を前提に、組織にアジリティをもたらすWorkdayが今、多くの企業の注目を集めている。