海帆 代表取締役社長 吉川 元宏氏
PROFILE
吉川 元宏 [よしかわ・もとひろ]
2000年4月富士オイル入社、2009年ペガソス・エレクトラ代表取締役に就任。2022年3月海帆社外取締役、同年8月から現職。
上場廃止の危機から立て直し
待遇改善と広告施策を融合
“海帆”が描く壮大な未来
上場廃止の危機の中
将来像を見出し、立て直しへ尽力
2022年8月に海帆(かいはん)の代表取締役社長に就任した吉川元宏氏は、プランナー型の起業家である。自らアイデアを出し、それを実践するために動く姿勢は、金融面だけの支援をする投資家とは一線を画す。
海帆は飲食業のフランチャイジーとして、様々なブランドの居酒屋を展開している。居酒屋の多くがそうであるように、コロナ禍で売り上げは激減。吉川氏が立て直しを相談された2021年の夏には、上場廃止の危機にあった。そのような状況の中、吉川氏は同社の立て直しに協力することに決めた理由を次のように語る。「基本の飲食業がしっかりとした柱となっていますが、事業の柱が飲食業のみでは、次にコロナ禍のような危機が起きると対応が難しくなります。飲食業は農業生産と組み合わせる営農型太陽光発電や、廃棄食品をバイオエネルギーに活用できるといった具合に再生可能エネルギー事業と親和性が高いです。飲食業から事業の柱を増やし、リスクヘッジにもなります。私自身、再生可能エネルギー事業が得意分野であり、そういう将来像を描くことができたので引き受けました」。
海帆は様々なブランドの居酒屋をフランチャイジーとして展開する
企業を再建するには、財務改善と経営改善の2つが必要だ。そこでまず上場廃止を回避するため、資本を投下。財務改善については一旦落ち着いた。
次々と噴出する課題
“健康診断”で1つずつ解決
2022年4月から同社の経営に関わるようになり、問題点を探るため既存店の健康診断を実施。問題は赤字店をどうするかであった。吉川氏いわく、居酒屋経営のほとんどは立地によって左右されるという。同社の店舗はロードサイドの郊外店が多く、それらの店舗の経営状況が軒並み悪かった。そこで吉川氏は閉店を提案したが、なかなか進まない。「今は企業として大きな方針転換のかじ取りが必要な時期。自分が代表権を持って経営革新をしっかりと進めるべきと考え代表取締役社長となることを決めました」(吉川氏)。
その次に取り組んだのが繁忙期の売り上げのシミュレーションである。そのため、同社が運営する近所の店舗に12月の2週間毎日通った。その結果は好ましいものではなかったと吉川氏は語る。「毎日通っても店員が顔を覚えてくれませんでした。子どもを連れていても、寒空で待たされたこともあり、サービスの質としてはあまり高いものではなかったです」(吉川氏)。これらの問題はしっかりとした教育の仕組みがないことだった。教育コンテンツを作っても形だけとなってしまっており、指導が徹底できなかった。
そこで、教育の仕組みを構築するとともに、最高のサービスが提供可能な理想となるモデル店を作り、そのやり方を展開しようと考えた。その途上、新たに従業員が集まらないという問題にぶつかった。居酒屋店員の時給は最低賃金に近く、決して高いとはいえない。店員が集まらないのは飲食店共通の課題だ。そこで吉川氏が考えたのは、「飲食店のアルバイト店員でも月に50万円稼げる仕組み作り」という、常識外れのアイデアだった。
飲食店員の待遇改善を目標
SNSや独自メニュー作りを奨励
その仕組みはこうだ。同社が運営するSNSで流すプロモーション動画の制作、出演につき、社員・アルバイト問わず出演料を支払うという仕組みだ。勤務中にSNS動画に出演することにより、時給とは別に出演料がもらえ、同じ労働時間でも効率的に稼ぐことが可能。この背景は、SNSを活用することで従業員に広報の役割を担ってもらい、企業側は広告費を社員に還元しようというもの。従業員のモチベーションアップがサービスの質の向上に直結すると考えた。基本的にコンテンツ制作は従業員に任せるが、本部の管理体制のもと公開していく仕組みを構築した。
またフランチャイズ店は本部により基本メニューが決められているが、いくつかの独自メニューを許可する契約になっている。そこで従業員がメニュー提案をして採用されれば、売り上げに対して報酬を支払うことも考えている。SNSでのプロモーションがうまく回り始めれば、意欲とアイデアのある従業員は長時間の労働時間に拘束されることなく多くの報酬を手にでき、会社としてもメディアを使った多額の広告費を使うことなく効果的なプロモーションが可能になる。メニューに関しても、従業員も会社も、さらに言えばよりおいしい料理が食べられる顧客も、三方よしの施策だ。現在はその仕組みを回すための仕掛けを仕込んでいる。「コロナの影響や雇用の問題など、現代は変化が大きい時代。それに対応していくために、まず私自身が新しいことに積極的に挑戦していき、そして従業員がアイデアを出し続けられる企業でありたいと考えています」(吉川氏)。
飲食事業の立て直しと並行して、当初吉川氏が描いた再生可能エネルギー事業の立ち上げにも着手。既に大手エネルギー企業との提携が決まっており、順調に進んでいる。さらに、他にも新たな柱となる事業も計画しており、その改革の取り組みはとどまるところを知らない。吉川氏は、「これからも継続して新しいチャレンジを続けていきます」と語った。
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