日本ゼオン 代表取締役社長 豊嶋 哲也氏
PROFILE
豊嶋 哲也 [とよしま・てつや]
大阪府出身。1989年4月日本ゼオン入社。2015年 執行役員 高機能樹脂・部材事業部長。2022年 取締役常務執行役員 研究開発本部長、総合開発センター長に就任。2023年6月から現職。
カーボンニュートラルにも
柔軟に対応
独創的技術で躍進する
化学メーカー
圧倒的な競合優位性を支える
研究開発の探究心
1950年に設立した当社は、今年で創立73年を迎えた化学メーカーです。1959年に日本で初めて合成ゴムの生産を開始して以降、独創的な技術による製品群を提供してきました。
現在は原油由来のナフサに含まれるC4、C5留分*から抽出した成分を最大限に活用し、合成ゴムや合成ラテックスなどのエラストマー素材事業、化学品や情報材料などの高機能材料事業の2つを柱にグローバルでビジネスを展開しています。
代表的製品の一つが、当社が独自開発した高機能樹脂のシクロオレフィンポリマー(COP)です。カメラのレンズ、ディスプレイ用フィルム、アンテナ基板、医療・バイオ用途などに幅広く利用され、将来的にも需要の拡大が見込まれる材料へと発展しました。
こうした競合優位性は、常にユニークな製品を探求する姿勢が根づいているからこそ確立されたものです。チャレンジを恐れない研究開発の歴史により、革新的な材料を次々と生み出すことができました。その材料がお客さまのニーズに合致すれば、他社材料の参入障壁の高さにつながります。この強みを生かし、これからも新たな製品開発に励んでいきます。
*留分:混合液体を形成する各成分のこと。
まねのできない
ニッチトップが強み
新規事業の開拓にも注力
2023年度から始まった中期経営計画STAGE30の第2フェーズでは、4つの全社戦略を打ち立てました。
1つ目はカーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーへの対応です。ご存じのように化学産業はものづくりの一大転換期を迎えており、世の中が石油に依存しなくなる中で当社も次世代に向けた転換を迫られています。持続的な成長を実現する解決策はC4、C5で培ってきたニッチトップの製品群を核としたエコシステムの確立です。あたかも強みを着替えるような形で成長するビジネスモデルを目指します。
具体的にはC4、C5を石油由来から非石油由来の原料に転換する準備を整え、COPをはじめとする主力製品のリサイクルを推進します。2024年にはCOPのリサイクルプラントが稼働予定ですが、特殊なリサイクル方法を独自に開発し、新品と同等の品質レベルに再生できるようにしました。
2つ目は既存事業の磨き上げと新規事業の探索です。既存事業ではCOPや電池材料などの差異化製品を軸にポートフォリオを組み替え、生産拠点の拡充や販売拡大を図ります。
一方の新規事業ではコーポレートベンチャーキャピタルによる投資やM&A、オープンイノベーションによる社外連携を加速していきます。今のところは既存事業とリンクする領域の協業を進めていますが、イノベーションの端緒はセレンディピティー(偶然の出合い)にあることから、一見関係のない“飛び地”の技術に関しても注視しています。そこで新たな種を発見できれば、一気に開花する可能性が出てきます。2015年に量産化が始まった単層カーボンナノチューブはまさにその典型です。
3つ目には「舞台を全員で創る」人材戦略を掲げました。なぜなら、企業が前進するためには人材の活躍が不可欠だからです。当社では社員一人ひとりが主人公。自分の成長が実感できるような企業風土を醸成します。
4つ目はガバナンス強化を中心とした経営基盤の磨き上げです。ダイバーシティーの感覚がない経営陣では意見が偏ってしまい、自分たちの常識が社会の常識とかけ離れていても気づかなくなります。そうならないためにも多様性に関するKPIを社外に公開し、経営陣の決意表明としました。
日本ゼオンが掲げる2030年のビジョン。SDGsへの取り組みを通して達成を目指す
変化の激しい時代だからこそ
トップの強いメッセージが必要
新型コロナウイルスや気候変動、地政学リスクなどにより、かじを取るには非常に難しい時代です。しかし変化の激しい時代のトップだからこそ、マクロな市場の流れを見極めながら全社に対する強いメッセージを発信していく必要があります。社長就任の内示を最初に聞いたときは、重責を前に「本当に自分でよいのだろうか」と若干の戸惑いもありましたが、今では衆知を集めて自分なりの経営スタイルで日本ゼオンを良い方向に導きたいと考えるようになりました。それを踏まえ、社員との双方向の情報共有を密にしていくつもりです。
2020年を境に潮目が変わり、ステークホルダーの方々からも変化に対する積極的な姿勢が評価されるようになってきました。この波に乗り、日本ゼオンも大胆に変わっていきます。そしてたくさんのオプションから正しい選択をし、成長の方向性を示したい。それにより協業先も増えて企業価値が向上すると信じています。ぜひ我々の今後にご期待ください。
記事中の肩書きやデータは公開時点の情報です




