「ITで経営を楽しくしたい」。
企業価値向上を目指す経営者に伴走します
株式会社アバントグループ
代表取締役社長 グループCEO
森川 徹治 氏
PROFILE
大学卒業後、外資系コンサルティングファームで経営情報システムの開発などに関わる。1997年にディーバ(現 アバントグループ)を設立し、代表取締役に就任。連結会計システムをはじめ企業の持続的成長を支援するシステムの創造と普及に取り組む。現在はアバントグループ代表として、顧客企業や投資家など様々なステークホルダーと積極的に対話し、企業価値を生むグループ経営を実践。
( 聞き手:日経ビジネス発行人 北方 雅人 )
学生時代の2つの原体験から情報技術の可能性に気付く
ー アバントグループの事業概要と、目指す提供価値を教えてください。
1997年の創立時から20数年間、一貫して取り組んでいるのが、「企業価値向上」です。最近は、日経平均株価が最高値を更新するなど、企業価値に対する経営者の意識が急激に変わってきていますが、そのずっと前から我々はこれを事業活動の中核に据えてきました。
企業価値を考える上で不可欠なのが、企業経営にかかわるデータを統合的に得られる仕組みです。そこでアバントグループは、「経営情報の大衆化」をミッションに掲げ、持続的な企業価値向上を支える経営情報システムや関連サービスを提供しています。具体的には、連結会計システムやBPOサービスを提供するディーバ、適時開示情報の検索サービスを提供するインターネットディスクロージャー、データ基盤の構築やAI活用などを支援するジール、および経営管理ソフトウエアコンサルティングサービスを展開するアバントの4社を通じてそれらを展開しています(図)。

図 アバントグループの概要
4つの事業会社を通じて持続的な企業価値向上を支援するためのソリューション、サービスを提供する。連結会計システムを中心に周辺領域の拡充を進め、決算業務のアウトソーシング、データドリブン経営を推進するSI事業、経営管理領域においてソフトウエアとコンサルティングを掛け合わせた実装型コンサル事業も手がける
ー グループの経営においては、どのようなことを大切にしているのですか。
すべての事業活動は、私が常々感じてきた「ITで経営を楽しくしたい」という思いに強く結びついています。私の父親は企業経営者でしたが、いつも辛そうな顔をしていました。学生だった私は毎晩、愚痴を聞かされていたのですが、その中で「企業経営はなぜこんなに苦しいのだろう」と考えるようになりました。
他方、私自身はコンピューターが好きでパソコンに熱中していました。パソコン通信の黎明期、大手企業の偉い人と直にやり取りしたり、オフ会に行けば会えたりする体験を通じて誰とでもフラットな関係でつながれることのすごさを目の当たりにしました。
この2つの原体験から「情報技術を活用すれば経営を変えられるはずだ」と感じ、それが「ITで経営を楽しくしたい」につながっていきました。

米国企業との会話で、企業価値の重要性に気付かされた
ー 「ITで経営を楽しく」、いいですね。そこから、先に紹介のあった企業価値向上に至るまでには、どのような経緯があったのでしょうか。
会計ビッグバンなどの環境変化を踏まえ、創業当初は連結決算を担うパッケージ製品の提供からスタートしました。しかし、正直なところ、それだけで「ITで経営を楽しくする」ことは難しいと考えていました。そこで、お客様のオーダーに合わせてシステムを構築するサービスを開始。同様の考え方で、連結決算業務を支援するBPOサービスも立ち上げました。
ただ、製品ビジネスはサービスビジネスよりも立ち上がりに時間を要するため、放っておくと事業ポートフォリオがサービスビジネスに偏っていきます。このままでは製品ビジネスが縮小していき、「ITで経営を楽しく」という初心から離れてしまうと感じた時期がありました。サービスに舵を切るか、パッケージ製品との両立を図るか――。取締役会でも相当議論を重ねましたが、初心から外れるとビジネスから魂が抜けてしまいます。最終的には、サービスと製品のシナジー創出を図る方向で、体制見直しを含めて仕切り直すことにしました。
この方向性のもと、製品ビジネスではグローバル展開を視野に入れ、海外企業との提携を模索し始めました。そんな中、米国のある企業の経営者に、「あなたの会社の株価はなぜそんなに安いんだ」と言われたのです。売り上げや利益ではなく、株価が安いので提携できないという意味でしたが、これが企業価値を高めることの重要性に気付かされたきっかけでした。

ー もう少し詳しく教えてください。
例えば、日本企業の多くは商品の値決めを行う際にまず原価を考えます。その上で、原価に利益を上乗せしたのが適正価格だと考えるのですが、私が会った米国の経営者の多くは、マーケットのニーズをもとに値決めをする。会社も同じです。自社の市場価値を常に把握し、その価値を高め、値段を上げようとする。だから株価を重視する。株価は企業価値を分かりやすく表したものであり、「株価を上げることが経営者の役目だ」という視点を持っていました。
経営者は「自社を値決めする」力を持つべき
ー 最近はPBR(株価純資産倍率)に注目が集まっていますが、市場価値を高めるという意識は日本の経営者にはまだ希薄かもしれません。
私自身、最初は受け入れられませんでした。ただ、視点を変えれば、価値の大きい存在になることが、社会への貢献度を高めることにつながります。
「いくらなら買いたいと思ってもらえるか」をまず考え、その価格を実現するための戦略を練る。例えば、新規事業を立ち上げる際、黒字化をゴールに設定してしまうとなかなか成功例はつくれません。そうではなく、「他社が買いたいと思う事業をつくる」ことを目標にすれば、たとえ赤字でも興味を持ってくれた企業に売却できる可能性があります。実際、この視点を持ってビジネスを展開するグローバルのSaaS企業などには、驚くような株価が付いています。
これを実現するためには、自社に関する情報を網羅的に収集し、それぞれの事業や製品にどのくらいの価値があるかを見渡せるようにすることが不可欠です。同時に、ベンチマーク対象になる他社の情報を可視化し、意思決定に役立てることも肝心です。そこで役立つのがテクノロジーであり、アバントグループではそのための多様な製品やサービスを提供しています。
ITで経営情報を誰でも活用できるようにすることで、埋もれている企業の価値をアンロックするためのお役に立ちたいと考えています。

ー 経営者のパッションと、会社を値決めするという視点は共存できますか。
まさに、そこは気を付けるべきポイントです。企業価値を重視する中で危険なのは、そのほかをすべて「道具」だと勘違いしてしまうことだと私は考えています。従業員エンゲージメントが低下している企業は、持続的成長を実現できないでしょう。企業価値の増大と、経営者の思いの浸透は、あくまで両輪で取り組んでいくことが大切です。
社会に一層貢献するために、自社の企業価値も高めていく
ー 現時点で、「ITで経営を楽しくする」はどの程度実現できていますか。
昨日より今日、今日より明日のほうがお客様への貢献度を高められているという感触はありますが、まだまだこれからです。お客様の課題感も、まずは足元の経営情報の可視化が中心なので、そこから1つずつご支援していければと思います。トップが経営の楽しさを実感できるようになれば、企業価値が高まり、従業員の意識も変わっていくでしょう。ソリューションの提案やお客様との対話を通じて、きっかけを提供し続けたいと思います。
ー アバントグループ自体の企業価値もさらに高めていく必要がありますね。
おっしゃる通りです。グローバルに事業展開するソフトウエア企業として、1つの目標は企業価値10億ドル(約1500億円)を超えることです。もちろん根拠なく上げるのではなく、ファンダメンタルがそれを支えるものであることが前提で、そのための道筋は見えています。株価を向上させて、インパクトのある企業価値をつくることができれば、公器として社会に貢献できたと思えるのではないかと考えています。
聞き手:日経ビジネス発行人
北方雅人
1991年一橋大学卒業後、日経BP入社。2017年に日経トップリーダー編集長。22年より日経ビジネスの発行人。企業トップへの取材件数は3000社。
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