マーケティング最前線対談 Braze×楽天グループ 楽天IDとエコシステムを活用しビジネス価値を最大化

成長領域へ、事業の多角化を進める企業は多い。各事業の強化とともに、全体の価値最大化をいかに図るか。楽天グループは70以上の事業でエコシステムを形成し、「楽天ID」を用いて顧客データの一元管理を実現。また「楽天ポイント」を軸としてグループ内の回遊率を高めている。楽天グループがスマホ時代の顧客エンゲージメント向上に利用しているのが、グローバルで急成長する「Braze」だ。楽天グループ副社長執行役員CMO(最高マーケティング責任者)の河野奈保氏と、Braze日本法人代表取締役社長の水谷篤尚氏が、日本企業躍進の鍵となる「グループ事業のエコシステム」について語り合った。

楽天グループのマーケティング戦略の要点とは何ですか。

河野 奈保 氏

楽天グループ
副社長執行役員CMO
河野 奈保

河野 購入時に付与されるポイントをためることは、日常生活に定着しています。マーケティング戦略で重要な観点は、ポイントの貯蓄が顧客データ収集の起点となる「ID登録」の動機付けになることです。

河野 奈保 氏

楽天グループ
副社長執行役員CMO
河野 奈保

「楽天ID」の数は国内だけで1億以上、「楽天ポイント」の累計発行ポイントは4.2兆を超えます。eコマース、デジタルコンテンツ、フィンテック、モバイルなど、楽天グループで展開する70以上の全事業をお客様は基本的に1つのIDで利用できます。この共通IDにより収集した顧客データは、独自の「楽天エコシステム(経済圏)」で一元管理されます。

このデータを毎日リアルタイムに分析し、カスタマージャーニーの各接点で顧客満足度の向上や販売機会拡大のために施策を打っています。楽天グループの2つ以上のサービスを利用されるお客様は全体の7割以上。例えば「楽天市場」での購入で進呈したポイントを「楽天モバイル」の支払いに使用するといった、エコシステム内でのポイント利用を促進するグローバルでもユニークなマーケティング世界をつくり上げました。

「楽天エコシステム(経済圏)」の概要図

「楽天エコシステム(経済圏)」の概要図。共通の「楽天ID」でエコシステム内の複数のサービスが利用可能。
効果的な顧客獲得やマーケティング施策の実行につなげる

リアルタイム性と媒体統合で
スマホ時代の顧客関係を強化

「Braze」がマーケティングにおいて寄与していることは何でしょうか。

水谷 篤尚 氏

Braze
代表取締役社長
水谷 篤尚

水谷 デジタルマーケティングでは4つのRight(4R)が重要といわれます。すなわち「適切(Right)な相手に」「適切なタイミングで」「適切なコンテンツを」「適切なチャネルで」提供すること。消費者のライフサイクルが多様化し、4Rの確立は難しくなっています。

水谷 篤尚 氏

Braze
代表取締役社長
水谷 篤尚

これを実現できるプラットフォームが「Braze」です。2011年のリリース以来、グローバルで2000社が導入し、60億人のユーザーの顧客体験を支援しています。「Braze」が実現する4Rは、IDやエコシステムにより構成される、まさに楽天グループが描かれるマーケティング世界においても効果最大化に貢献できるのではないかと考えています。流通・小売業の他、製造業や金融業など日本でも既に幅広い分野で導入が拡大しています。

エコシステムの効果最大化を図る上で、マーケティング課題はありますか。

河野 楽天グループにおける顧客接点の多くがアプリにあります。「楽天市場」ではユーザーの9割以上がスマホからアクセスしています。

そこで新たな課題が浮上しました。アプリからはお客様の状況と関係なく、プッシュ通知で新着情報などが届けられますが、このプッシュ通知をノイズと感じたお客様とは、コミュニケーションの距離が離れてしまうのです。スマホは常にそばにある存在です。顧客エンゲージメントを築く上で、お客様への情報発信は時間、タイミング、媒体などをコーディネートすることがより重要となります。

日本発のビジネスモデルを
世界に広げる楽天グループ

水谷 かつてマーケティングソリューションの利用には、顧客データを保有する必要があり、セキュリティー保持の観点から社内の閉じた環境での利用が中心でした。

「Braze」は企業が自社で収集し保有するファーストパーティデータを活用します。わずか数秒で、企業内にある「加工した情報」にアクセスし、アクションできる新しいアーキテクチャーです。メールの開封率、アプリの利用回数、情報を見る時間など、必要なデータをAIが支援しながら、ユーザーが心地よいパーソナライズしたものを配信する。セキュリティーとリアルタイム性の両立は、「Braze」の大きなアドバンテージです。

日本企業がエコシステムを活用するポイントをお聞かせください。

河野 エコシステムを上手に活用するには、縦と横のバランスが大事です。楽天グループでは、 eコマース、フィンテック、通信事業などすべての事業をNo.1にしようと思っています。一方で楽天ブランドという傘のもと、一人のユーザーに対し横串でサポートすることで、グループ全体のクオリティを上げていく。ユーザーはどこから入ってきてもいいのです。例えば、最近では決済アプリの「楽天ペイ」がエコシステムの入り口となっているケースも増えてきました。このユニークなビジネスモデルを、日本発で世界に広げていくのが今後の重要なテーマです。

日本の強みであるホスピタリティの独特な心地良さは、世界中のユーザーにとっても価値あるものだと感じています。グローバルのお客様に対して顧客エンゲージメントを高めていく時に、ビジネスパートナーとしてBrazeの力もお借りしながら共に成長を遂げていきたいと思います。

日本企業、成長の鍵は
横串による価値最大化

水谷 楽天グループと一緒に、最高のカスタマーエンゲージメント世界を作っていくというのが、Brazeの思いです。事業の多角化において、横串による価値の最大化が、日本企業にとっての成長の鍵になると強く思っています。

「Braze」は様々な機能を利用することで、エンジニアの手を借りることなくユーザーとの関係性を強化できるのが特長です。事業の初期段階でリソースが限定的な場合でも、マーケティング部門が独力で施策実行できます。河野さんが述べた「お客様の気持ちになること」を、テクノロジーで支援します。

河野 奈保 氏と水谷 篤尚 氏

“最高のカスタマーエンゲージメント世界を共に”

コラム 楽天グループにおける「Braze」の具体的活用と効果

人手には限界、そこで「Braze」が施策効果拡大に寄与
開封率は約2倍、セグメント作業は1/6に短縮

楽天グループは2016年に「Braze」の利用を開始して以来、事業部の特性に合わせてその機能を使い分けてきた。最近利用しているのが、ユーザーの開封率が高いタイミングでプッシュ通知を送る機能「インテリジェントタイミング」だ。開封率が約2倍になるなど明確に効果が表れた。また、Brazeの異なる機能を用いてプッシュ通知の際、ユーザーのセグメントごとに、シナリオをセットで運用したことにより初回ログイン率が約4割拡大、初回購買が1割強向上といった効果が顕著に表れている。

マーケターの業務効率向上にも「Braze」は貢献している。このユーザーに、どのコンテンツをいつ送るか。セグメントを行う際、「Braze」の管理画面はマーケターに使いやすいUI(ユーザーインターフェース)のため、30分かかった作業が5分まで短縮できた事例もあった。「Braze」を利用することで、より幅広くカバーできるとともに、新たなユーザーのセグメントも容易に設定できる。情報発信がパーソナライズされることで、顧客満足度が改善され、ロイヤリティーの向上につながる。

楽天グループではAI活用に注力しており、マーケティング・オペレーション・クライアント効率を20%アップさせる「トリプル20」を掲げている。Brazeのテクノロジーは効率化を向上するサービスの1つとして貢献している。

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