社会が急速に変化する中、ビジネスモデルを根底から変革する
「ビジネストランスフォーメーション(BX)」が多くの企業に求められている。
しかし、新たなビジネスモデルを描き、それを実行することは容易ではない。
そのような中で、電通グループは顧客企業のBX支援に力を入れ、
1200人以上のビジネスコンサルタントが多数のプロジェクトを推進している。
電通グループが提供するビジネス変革支援のユニークネスとは?
この分野を統括するdentsu JapanのBXプレジデント豊田祐一氏に訊いた。
聞き手 日経ビジネス発行人 松井健
「顧客企業の成長を追求する中で、ごく自然と、BX支援が生まれました」と、豊田氏は話す。

(株)電通グループ グローバル・プラクティス・プレジデント ‐ ビジネス・トランスフォーメーション
dentsu Japan BXプレジデント
(株)電通 執行役員(BX・グローバル)
豊田 祐一 氏
電通グループには、最初は当然、商品の広告キャンペーンの依頼が多い。しかし、顧客企業の成長を本気で考えて真剣に向き合うほど、広告の域を超えた根源的な課題にたどり着く場合がある。「研究開発(R&D)にこういった視点があると面白いのではないか」「こんな営業チャネルがあると新しいのでは」「こういった企業カルチャーが醸成されるとさらに強くなるのでは」などだ。
顧客企業とそういった話をする中で、BXの仕事は自然に増えてきた。
背景には、企業が抱える事業課題が複雑化しているという状況がある。「1つの技術やアイデアだけでは勝てない、複数の要素の緻密な掛け算が必要な時代になりました」(豊田氏)。顧客企業の課題解決や価値創造が目的であり、そのためにあらゆる打ち手を模索し、複合的にアプローチする。広告やマーケティングはあくまで手段のひとつと豊田氏は語る。
電通グループに期待される役割が確実に変化している。
電通グループのBX支援の最大の特徴は、2つのアプローチ手法にある。
1つ目は「マーケティング視点によるアプローチ」だ。電通グループは生活者や社会の背後にあるインサイトを捉え、人の心を動かすことを専門としてきた。BX支援においても、成長のゴールをマーケティング視点で分析し、そこから逆算して、変革の方向性や戦略をデザインしていく。「成長には、マーケティングと経営のシームレスな連携が、ますます重要になっています」(豊田氏)。マーケティングを出自とする電通グループが、企業のBXを支援することの意義は高まっている。
2つ目は「完全なるオーダーメード」だ。コンサルティング会社では、定型化されたフレームワークやメソッドが多く使われる。しかし、電通グループのアプローチは全く違う。「課題は100社100様です。顧客企業との深い対話を通して、一緒に真の課題を発見する。そして、最適解を見つけ、共に解き切るのが電通グループのBXです」(豊田氏)。汎用性の高いメソッドやフレームワークは存在しないという考えだ。

専門領域で強みを持つグループ内の各社が緊密に連携して、
オーダーメードのBX支援を提供する
2つの特徴的なアプローチ手法以外に、顧客企業から評価される電通ならではの強みもある。
第1の強みは、「クリエイティビティ」だ。課題を多角的に観察して、表面的な課題の奥に潜む真の課題を見つけ出す。顧客企業と対話しながら解決策を導き出す。リフレーミングを通して独自性の高い戦略を生み出す際も、それを組織内で展開していく際も、クリエイティビティは大きな武器になる。「広告事業で培ったクリエイティビティは、BX事業においても強みになっています」(豊田氏)。BXコンサルタントとクリエイターがセットで顧客企業に伴走するモデルも好評だ。
第2の強みは、「人を動かす力」だ。DXを掲げてシステムや仕組みを変えても、従業員が動かなければ変革は起きない。人を本気にさせ、行動を変えるには、人の心と行動を動かすコミュニケーションが必要だ。それこそ電通グループの得意技であり、能力と経験が活かせる。
第3の強みは「実行力」だ。戦略を立てるだけでなく、組織に浸透させ具現化し、結果を見届けるまで伴走する。いわば、やり切る力だ。
「お客様の悩みを聞いていてよく感じるのは、手段が目的化してしまっていることです」(豊田氏)
成長のために始めた変革が、いつのまにか「変革のための変革」になってしまっている。プロセスの罠だ。従業員の心を動かし、行動を変える仕掛けがうまく働いておらず、立派な戦略を立てたが、実行でつまずいているケースも多い。それらの課題に対して、電通グループのアプローチ手法や強みは有効だ。「体験されたお客様は、『電通ならではだ』と喜んでくださいます」と、豊田氏は語る。
今年からBXのグローバル展開を本格的に開始した。「約10年にわたって国内企業の変革を支援してきた結果、海外で事業を展開する日系企業や海外企業からのお問い合わせが増えてきたためです」(豊田氏)。
常日頃から、豊田氏はBX支援のメンバーに「外にいる当事者になろう」と言っている。「強い当事者意識を持った、第三者」になろうという意味だ。
顧客企業のビジネスについては、顧客企業の方々が一番よくわかっている。だから、丁寧な対話を重ねる中で答えを見つけることにこだわる。ただし、自分が顧客企業の一員になったつもりで、バリューチェーン全体に目を配り、ともに考える。
一方、少し離れた場所にいる人間にしか見えないこともある。顧客企業のビジネスから距離を置く第三者として、新たな視点を提供していく。「従来のコンサルティング会社でも広告会社でもない、AでもBでもない、まだないCというモデルで新しい価値を生み出していきたい。それによって、顧客企業のグロースにつながる変革を支援していきたいと思います」と豊田氏は語った。
豊田氏は国内でメディア担当を7年、営業を10年経験した後、インド、タイ、中国などにあるグループ会社の経営トップを歴任した。タイでは大手自動車メーカーとテレマティクス(車両向け情報通信)の新事業を立ち上げ、市場に定着させた。豊富な国際経験とBX経験の両方を持つ。BXは戦略の立案もさることながら、それを組織に浸透させ、進めていくことが難しい。実体験に基づく、地に足の着いたBX支援を提供してくれるだろう。
日経ビジネス発行人松井 健