PBR向上に挑む

経営資源を最適配分、
「ケミトロニクス」事業の拡大で
収益力、PBRの向上を目指す

DIC株式会社
社長執行役員
池田 尚志

基幹事業の印刷インキや有機顔料で安定した基盤を築きつつ、
次世代・成長事業の創出によって収益力の向上を図るDIC(ディーアイシー)。
収益力の改善などでキャッシュを創出して財務体質の健全化や株主還元の拡充を図る方針を定め、「価値共創委員会」の設立などガバナンス強化も推進する。
PBR向上をいかに達成するか、社長執行役員の池田尚志氏が語る。

高い収益性が期待できるケミトロニクス事業を強化

メリハリのある経営資源の配分や
買収事業の改革によって業績が改善

 2024年2月、DICは22年に発表した長期経営計画「DIC Vision 2030」の見直しを行いました。まずは体制の再構築に集中することを決め、Phase1の最終年度である25年度の営業利益計画値を、当初の800億円から400億円に見直しました。そして早期に成果を得られる施策に絞り、メリハリのある経営資源の配分や買収事業の改革などに取り組みました。その結果、24年度は基幹事業である印刷インキや有機顔料の収益力が回復しつつあり、1年前倒しで25年度計画値を達成できる見込みです。

 生活に密着し、社会で広く使われる印刷インキや有機顔料は確実な需要があり、現在、会社全体の売上高の約7割を占めます。今後も効率を追求したグローバル運営で収益性を高めながら安定した基盤を築いていく方針です。一方、残り約3割の中で、大きな成長が期待でき付加価値も高い樹脂製品群とその周辺材料を拡大し、インキ製品に依存しすぎない事業ポートフォリオへと変革していきます。

成長期待と付加価値が高い
「ケミトロニクス」事業に注力

池田 尚志 氏

 その中心に据えるのが「スマートリビング領域」です。中でも、エレクトロニクス仕様の化学・素材を軸にした事業を「ケミトロニクス」と定義し、経営資源を集中的に投下していきます。24年1月には、ファンクショナルプロダクツ事業部門内に製造・販売・技術を統合した「ケミトロニクス事業本部」を新設しました。半導体、通信、デバイス、バッテリーなど成長が見込まれる分野を中心に、新たなソリューション提供による価値創造を図っています。

 その際、競争優位性の源泉となるのが当社独自の技術力です。DICは40年近く半導体の製造工程で使用されるエポキシ樹脂を手掛けてきました。技術革新が進む中で、耐熱性や誘電特性、接着性など、求められる性能はめまぐるしく変化してきましたが、それに応え常に新たな製品へと進化させてきました。

 エポキシ樹脂を中核に、フォトレジスト用ポリマー、界面活性剤、光学用材料、工業用粘着テープ・両面テープなどの周辺材料も多岐にわたり供給しています。これらの材料や加工技術を組み合わせ複合化する技術も保有しています。

 昨今、半導体は性能向上のため多層化が進み、製造プロセスも複雑化しています。個々の素材、材料だけでなく、接合方法や界面の制御などが品質に影響するため、エレクトロニクスとケミカルの両面からのアプローチが重要です。まさに双方の技術と知見を持つDICが強みを発揮でき、競合他社が容易に参入できない分野です。

収益性を重視し投資を厳選
ROIC4.0~5.0%を目指す

 「DIC Vision 2030」の見直しに伴い、26年度までの3年間の「キャッシュ・アロケーション方針」も定めました。事業ポートフォリオの変革や買収事業の構造改革によって営業キャッシュフローの拡大を目指します。さらに、政策保有株の見直しや運転資本の圧縮によってもキャッシュを創出。

 こうして創出したキャッシュは、営業キャッシュフローの過半を生み出す基幹事業に対して、更新投資を中心に投資を厳選し、通常投資として配分します。また、ケミトロニクスのほか、次世代の成長に向けて収益確保の可能性を見極めたうえで、厳選した分野に投資を振り向ける考えです。

 さらに、24年度から年間配当額の下限を100円に設定し、安定的な配当を維持します。各施策の成果で予想を上回るキャッシュを創出した場合には追加の戦略投資や株主還元に充てます。

 自己資本利益率(ROE)は、26年度に株主資本コストを上回る7~8%の達成を目指します。1.21倍に悪化していたネットD/Eレシオは1.00~1.10倍を目標とします。収益性を重視し投資を厳選することで、投下資本利益率(ROIC)も23年度の1.5%から4.0~5.0%へと改善を図ります。

外部の知見を経営に生かす
「価値共創委員会」が発足

 ガバナンスの強化にも取り組んでいます。24年4月には、外部の高次かつ広範な知見を経営に生かすため、「価値共創委員会」が設立されました。取締役会では、事業ポートフォリオマネジメントや資本コストを上回るROEの実現に向けた施策などを活発に議論しています。「市場や投資家の方々の視点に立った時に、我々がやっていることは適切なのか」をシビアに議論し、建設的な意見を出し合っています。

 進行中の事業ポートフォリオの変革や買収事業の構造改革をやり遂げることで、強固な収益基盤を早期に構築できる。そして着実にキャッシュを生み出し、キャッシュ・アロケーション方針に基づき循環させれば、おのずとROEは向上し、株価純資産倍率(PBR)にも反映されると確信しています。まずはこの1年で成果を出し、25年度の計画値を達成する確度を上げ、さらに26年度の計画を前倒しで達成できるよう、全力で取り組みます。

※肩書と内容は、公開当時(2024年11月22日)のものです

企業価値向上を目的に掲げるDICの「価値共創委員会」

長期的な企業価値向上を実現する狙いで2024年4月に設置。社内の議論に引きずられないよう、独立社外取締役4人で構成する。審議テーマに応じて適宜、外部有識者も招聘(しょうへい)している。主なテーマはROICの改善、保有資産の有効活用、美術館運営など。単純に資本効率だけで判断するのは難しい事柄を、客観的に高次かつ広範な見地から「DICにとって何が良いのか」を議論し、最高意思決定機関である取締役会に助言しており、ガバナンスの強化につながっている。

池田 尚志 氏
池田 尚志(いけだ・たかし)●DIC社長執行役員
1990年慶応義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了、大日本インキ化学工業(現DIC)入社。2001年米ノースウエスタン大学でMBA(経営学修士)取得。コンポジットマテリアル製品本部長、ファンクショナルプロダクツ事業部門長などを経て2022年常務執行役員に就任。2024年1月より現職。
DIC株式会社

〒103-8233 東京都中央区日本橋3-7-20 ディーアイシービル
https://www.dic-global.com/ja/

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