生成AIの本質は
「読み解く力」と「掛け合わせる力」

生成AIの本質を理解することで
創出されるユースケースとは

次世代型のリスキリング戦略

新規事業では「モノゴトの構造」に着目したが、これを人のスキル、経験に置き換えるとリスキリングにも応用可能であると山本氏は語る。

一般に、人事部門が人材をリスキリングする際には、これまでのキャリアや職能、得意分野などを踏まえつつ、本人に「どんな仕事をしたいのか」、あるいは「どんな仕事に向いていると思うか」、といったことをインタビューした上で、カリキュラムを選択することが多いようだ。しかし「本人が語る自身の適性は、必ずしも正確にすべてを網羅しているとは限りません。自分では気付いていないような経験値や能力を備え、それが意外な職位に結び付く可能性もあるわけです」と山本氏は語る。

そこで新規事業開発と同じように、“潜在的な強み”を抽出し、世の中の動きとマッチングさせることで、職種と、それに当てはまる潜在的なスキルを備えた人材をマッチングすることができるという。「構造分解と新結合は、モノづくりの世界に閉じた話ではなく、人のキャリアも構造分解して捉えることが可能です。経験により得られたスキル、専門性も構造を持っています」と山本氏は続ける。

「私の場合、AIコンサルタントとしてディープラーニングAIの研究開発を含んだ経験を多く有しています。そのため現在では、そのディープラーニングの知識を生かしたコンサルティング活動を展開しております。そんな私のCV(履歴書)を独自のAIで分析すると面白い結果を得ることができました」(山本氏)

例えば、山本氏が現在取り組んでいる「マルチモーダルAI」という分野は、これを応用すると「自動運転」の世界との親和性が生まれ、また深層学習の手法である「グラフニューラルネットワーク(GNN)」の知見は「次世代電池の基礎技術開発」の世界に通ずることがわかったという。自動運転も電池も、世の中のトレンドと合わせれば、多くの社会的意義につながっていることも把握できる。山本氏自身では考えたことのないマッチングだったという。

多様化する世の中に対応するため、企業にとっても個人にとってもリスキリングは喫緊の問題と言えるだろう。しかし、世の中の流れ、企業の事業戦略の流れ、自身のキャリア、その行き着く交点となるスキルを見い出すことは難易度が高い。AIにより人を読み解き、世の中を読み解き、企業を読み解く。そこからの構造分解と新結合に次世代のリスキリング戦略の答えがあるのではないだろうか。

モノづくりとキャリアの観点で話を展開してきたが、改めて、世の中のすべてのモノゴトは構造を持っている。サービス業でも、人の健康でも同様だ。構成要素を分解し、構成要素ごとに、全く異なる業界とつなぎ合わせ、世の中のトレンドとつなぎ合わせることで、思いもよらぬ“新結合”を発見すること。それこそがイノベーション創出の種になるのである。

製造・建設現場の生産性や安全性を向上

最後のユースケースとして山本氏が挙げるのが、製造・建設などの現場における生産性や安全性の向上だ。

近年の生成AIはマルチモーダル化が進んでいる。従来のシングルモーダルAIでは、文章、画像、音声などの中から、単一の情報を取り込むことでデータを処理してきた。一方、マルチモーダルAIは、これら複数種類の情報を同時に取り込むことができるため、人間の認知モデルに模した扱いが可能になるという。

シングルモーダル/マルチモーダル

「人間と同じように、“五感”を発揮して全体の状況を把握できるようになってきているのです。しかも、人間の目や耳が捉えられる状況は限られていますが、AIは常に全方位を見渡し、すべての状況を把握するので、現場の生産性や安全性を高めるための用途がいろいろと考えられます。日本の製造業の底力が高まり、ゲームチェンジが実現するかもしれません」と山本氏は語る。

企業価値そのものを変える
生成AIの活用を

このように生成AIは、企業の方向性そのものを大きく変え、競争力を飛躍的に高める力を持っている。

山本氏は、「経営者の皆様には、ぜひその力を十分に理解し、業務効率化の枠を超えて活用することを検討していただきたいと思います。EY Japanは、そのための支援体制を整えていますので、何でもお気軽にご相談ください」と語った。

生成AIの機能に着目することなかれ新価値創出には本質の理解が不可欠

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