
経済活動がより広範にグローバル化する中、重要度が高まっている国際航空貨物輸送。世界の顧客のニーズに応えるため、大型・重量貨物や越境ECで取引される商品の輸送ソリューションを提供し、同時に環境配慮、サステナビリティといった企業の責任も果たしているのが、国際航空貨物輸送会社のフェデックス(FedEx)だ。同社の最新の取り組みについて、日本における代表者でマネージングディレクターの久保田圭氏に聞いた。
国土交通省の「令和4年度 国際航空貨物動態調査報告書」(※)によると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で2020年に一時はリーマンショック翌年(09年)を下回った日本の航空貨物量は、21年以降回復傾向にある。また、国際航空運送協会(IATA)の調査によると、国際航空貨物市場は24年7月時点で8カ月連続の2桁増を維持しているという。※ 出典:国土交通省航空局「令和4年度 国際航空貨物動態調査報告書」
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001617807.pdf
「現在はとくに法人のお客様からの大型・重量貨物輸送、また中小規模事業者が越境ECで販売する商品の輸送ニーズが高まっています」と語るのが、フェデックスの日本における代表者でありマネージングディレクターの久保田圭氏だ。
久保田 圭氏KEI ALAN KUBOTA
フェデックス
マネージングディレクター
世界の航空貨物輸送量のわずか2割ほどが、輸送貨物の総重量の8割を占めているというデータもあり、大型・重量貨物輸送のニーズの高さをうかがわせる。荷主は製造業が中心で、生産拠点や研究開発施設など世界中に拠点を持つ企業も多い。
「フェデックスでは、グローバルにビジネスを行うお客様にはその産業専門の営業チームを設け、業界やビジネスをよく理解した担当者がお客様それぞれにカスタマイズした輸送ソリューションを提供しています。対応している業界は製造業や化学、近年需要が伸びているヘルスケアも含みます。世界のどの地域での輸送案件も日本の営業担当が対応することで、お客様への利便性と安心感につながります」(久保田氏)
大型・重量貨物向けの輸送ソリューションは、定型の輸送サービスと上記のカスタマイズソリューションに加え、とくに配達時間の指定や温度管理、輸送中のモニタリングが必要となる大型貨物の輸送に有効なフェデックス・カスタム・フレイト、また、顧客自身で見積もりと出荷予約ができる「重量貨物に対する特別割引運送料金オファー」も提供している。これはフェデックスのウェブサイト上で利用できるセルフサービスであるため、見積もり取得から出荷までの期間を短縮できる。21kg以上の重量貨物輸送で、フェデックスの貨物機などの搭載スペースに余裕があり特別割引料金の条件を満たす場合は、最大80%引きの料金になることもある輸送サービスだ。
「現在のビジネス環境は変化が激しく、お客様企業も急なニーズの高まりによる商品追加や製造プランの見直しによる部品の追加、関連する緊急輸送が必要になることもあります。同サービスはそのような案件への解決策にもなり、通常の契約によるサービス利用と使い分けて、ビジネスの機会を逃さないよう対策をするお客様もいらっしゃいます。重量がある貨物は我々のような航空輸送サービスでは割高になるという印象を持つお客様にも、価値を提供できるサービスです」(久保田氏)
一方で中小規模の事業者の重量貨物輸送ニーズも高まっており、とくに輸入でフェデックスの活用ができそうだ。
「最近の燃料や資材の高騰で輸送コストに注目するお客様が増えていますが、輸送は出荷から配送までの全体を考える必要があります。フェデックスはドア・ツー・ドアの輸送を自社のネットワークで提供するため、お客様には輸送サービスの価値、輸送スピード、信頼性と利便性、そのプロセス全体と価格とのバランスを見て納得していただくケースが増えていることは確かです」(久保田氏)
拡大が続く越境ECでは、荷物の受取人が個人であることが多く、法人顧客間の輸送とは異なるニーズがある。個人宅向けの輸送では業務も複雑さを増すというが、フェデックスはどのように対応しているのだろうか。
フェデックスは24年7月に「フェデックス・インターナショナル・コネクト・プラス(FICP)」のサービス対象地域を、これまでのアジア太平洋地域から米国と欧州に拡大した。FICPは越境ECで取引される商品のように比較的小さな10kg未満の貨物の輸送に最適で、所定の期日内に配達する。週末と、主に米国では18時以降の配達にも対応することで個人宅への配送の利便性を高めている。通関手続きや輸送中のトラッキングで信頼性を保ちつつ、輸送スピードと価格のバランスが取れた商品だ。
サービス利用者に提供するデジタルツールとの組み合わせによって、FICPの利便性はさらに高まる。荷物を受け取る購入者が、受け取り日時や場所を変更することができる「FedEx Delivery Manager」は、EC全体での効率向上に有効なツール。また、荷物の受け取り方の選択肢を広げるため、置き配の際の配達完了を画像で確認できる「写真付き配達証明」の提供を開始した。
「越境ECでは、購入から商品の到着までが一連のEC利用体験として評価される傾向があります。品質の高い安全な輸送に加えて、商品受け取り時の利便性も重要な評価ポイントです。また、すでに越境ECを活用している中小規模の事業者では、米国と欧州が今後の事業拡大先として上位に入るというデータがあります。FICPのサービス拡大はそれら企業のビジネスの成長の後押しにつながります」(久保田氏)
成長が続く越境ECは、強いインバウンドも後押しの要因になっている。
「観光で来日した際に小規模のメーカーや小売店の商品に触れ、購入した外国の方が帰国後、オンラインでリピート購入するケースも増えていると聞きます。訪日外国人数が過去最多に達した現在、全国のEC事業者にその可能性は広がります。また、EC事業者が差別化を図るためにこれまで越境ECでは販売が少なかった商品を扱うケースも増えているようで、輸送物品と仕向け先は多様化が進んでいます。この点では、世界220以上の国と地域にサービスを提供する我々の強みを発揮できます」(久保田氏)
ここまで大型・重量貨物と越境ECの両面から、市場の活況やフェデックスの取り組みについて見てきたが、この両者が対極的なビジネスモデルであることにお気づきの読者は少なくないはずだ。貨物サイズはもちろん、取引としてもBtoBとBtoCという違いがあり、利用者も大型・重量貨物は比較的規模の大きい企業、越境ECは個人や小売りなどの中小企業が中心となる。
フェデックスがこのような様々な輸送ニーズに柔軟に対応できているのは、米国での会社設立以来培ってきたグローバルな輸送網を最適に保ち、貨物機の運航ルート変更や便数の増減、顧客へと輸送をつなぐ陸送分野でも物流施設のアップデートや配送ルート改善を常に行ってきたためだ。
フェデックスが自社で保有し運航する貨物機は約700機。サービス提供国と地域は220以上にも上る。これだけの輸送力を有する航空会社であることが、貨物搭載スペースの確保、とくに大型・重量貨物輸送のためのスペース確保では強みとなる。
「我々は、すべての貨物を最適なネットワークで輸送できるような変化を続けています。これは我々の業務能率はもとより、お客様へのサービスの品質を高めることに繋がるのです」(久保田氏)
ビジネスにおいて、気候変動や環境に配慮した責任のある方法を用いた発展は重要課題であり、日々航空機や車両を運行する物流業界の取り組みに注目が集まっている。
「当社のお客様からも輸送におけるCO2排出量に関連する問い合わせが多くなりました。フェデックスはグローバルで40年までにカーボンニュートラルな輸送業務を実現するため、Reduce(削減)、Reuse(リユース)、Revolutionize(技術的革新)という3つのアプローチに取り組んでいます」(久保田氏)
具体的には、より燃費の良い貨物機の導入や代替燃料の使用、電気自動車の導入や物流施設でのソーラー発電の活用等が進んでいる。一方で、顧客にも輸送サービス利用時のCO2排出に関するデータを提供している。
貨物輸送時に排出想定量を可視化できるツール「FedEx Sustainability Insights」は、顧客のアカウント別、また輸送ごとに排出したCO2を換算して提供できる。フェデックスはサービス利用者である企業に対し、得られるデータを基にした取り組みを後押しする。
「環境への取り組みは現状の把握と改善策の実施、またその成果を測るプロセスが必要で、データの活用は不可欠です。自社の輸送業務における脱炭素の取り組みに加えて、お客様も含め、業界全体での持続可能性を推し進めていきます」(久保田氏)
このような取り組みでもどうしても削減できないCO2排出に対して、フェデックスは科学的なアプローチを取り、自然による炭素隔離の研究を行う「Yale Center for Natural Carbon Capture(イェール天然炭素回収センター)」の設立を支援している。
サステナビリティという観点では人的資本を重視した施策も注目すべきポイントだ。フェデックスは会社設立以来の理念を実行している。誰でもその能力を発揮できる公平で働きやすい環境をつくり、従業員を第一に考えることがモチベーションを生み、それがより良いサービスの提供につながり、利益をもたらして、さらに従業員に還元できるようになる、というものだ。従業員へのスキルアップサポート、女性従業員のマネジメントへの挑戦を含む環境整備、障がい者の雇用と働き方支援、子育てや介護などそれぞれの状況に応じた働き方を可能にする柔軟な制度など、職場でのDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推し進めているという。
フェデックスは24年8月で日本での法人設立40周年を迎え、刻々と変化、多様化するビジネスと顧客のニーズ、また最も重要な資産である従業員のニーズに合わせて変化を続ける企業であり続ける。ますます重要度を増していく国際航空輸送において、同社は大きな存在感を見せている。