生成AI活用で目指した
自社管理業務の負荷軽減
いまや、人材不足は社会全体の課題だ。そこで、多くの企業が業務効率化への取り組みを加速している。とりわけ、人事や総務といった管理部門はマンパワーの逼迫感が強い。
FXなどの金融サービスを主軸とするトレイダーズグループにおいて、金融システムの開発・運用などを担うFleGrowthも、管理部門の負荷軽減を切実に感じていた企業の1社だ。同社の赤石 梢氏はこう説明する。

株式会社FleGrowth
管理部
赤石 梢氏
「例えば、社員が結婚したときには社会保険関係など様々な手続きが発生します。慶弔関係に限らず、どの文書を、どのように書いて提出すればいいのか、社員からは多種多様な問い合わせがあります。そのたびに、私たちは詳しい担当者に聞いたり、マニュアルを調べたりして、内容を確認した上で回答しています。マニュアルがどこにあるのか分からず、時間をかけて探すこともあります」
こうした負担の重さを知って、動いたのがエンジニアたちだ。同社の上野俊訓氏が振り返る。

株式会社FleGrowth
テクノロジーデザイン部
部長
上野 俊訓氏
「もともと金融サービスでの生成AIの活用を検討していたのですが、管理部の課題を聞き、ここにも生成AIが使えるのではないかと考えました。開発着手は2023年8月で、12月には管理部での試験運用がスタートしました」
こうして生まれたのが「AIサポートデスク」である(図1)。人事や総務だけでなく、幅広い業務の効率化を生成AIでサポートするソリューションだ。試験運用の成果を見て、グループ会社のトレイダーズホールディングスも採用。実業務の中でブラッシュアップされたAIサポートデスクは、2024年4月から提供が始まった。

図1 「AIサポートデスク」利用の流れ
まず、マニュアルや社内規程など任意の文書を、閉じた環境に構築されたサーバーにアップロードする。これをもとに生成AI が学習データを生成するので、社内1 次情報に関する正確性が担保される
3つの課題を克服して
生成AIの業務利用を促進
生成AIの高い能力については広く認識されているものの、業務での活用には二の足を踏む企業が多い。ビジネスユースの拡大には、3つの課題があると同社の宮澤 元章氏は指摘する。
「課題は安全性、正確性、知見です。まず、生成AIに質問した内容、質問に含まれる機微情報が生成AI側に渡ってしまうことへの懸念があります。十分なセキュリティーを担保できなければ業務では使いにくいでしょう。次に、生成AIはうそをつきます。回答が本当に正しいかどうかを改めて人手で検証するなら、効率向上の効果は限定的です。ユーザー側で生成AIの知見を高めるためのトレーニングが必要なら、面倒だと感じる企業もあると思います」

株式会社FleGrowth
テクノロジーデザイン部
課長 データサイエンティスト
宮澤 元章氏
AIサポートデスクは、こうした課題の克服を目指して開発された。
安全性については、ユーザー企業専用の環境を構築することで、入力データが生成AIの学習データとして利用されない、外部に漏えいしない仕組みを用意した。同社がセキュリティー要件の厳しい金融システムの開発でノウハウを蓄積してきたことも、利用者の安心につながるはずだ。
正確性については、管理者がマニュアルや社内規程、稟議書などをアップロードし、それをもとにAIエンジンが学習データを生成する形にすることで向上を図っている。ユーザーの知見の課題については、AIサポートデスクの利用に専門的な知識は不要で、導入後すぐに使い始められる。生成AIのメンテナンス、機能実装などはFleGrowth側で行うので、管理側の負荷も最小化できる。
「AIサポートデスクは、社内のニーズを受けて開発したシステムです。社内で『こんな機能が欲しい』『こうしたほうが使いやすい』といった意見交換を何度も行い、改善を繰り返しました。こうして、ユーザーの実務に沿ったシステムができ上がりました」と上野氏は語る。
バックオフィスだけでなく、
幅広い業務に活用できる
実際に、AIサポートデスクを日々の業務で活用している赤石氏は次のような感想を語る。
「管理部の業務では『この人に聞かないと分からない』ということが多く、属人化の課題を感じていました。AIサポートデスクを使えば、欲しい回答がすぐに返ってきます。社内規程などを探す手間もなくなります。社員にも利用してもらっているので、管理部への問い合わせが減りました」

トレイダーズホールディングス株式会社
総務部 部長
IR広報部 部長
作左部 光威氏
前述したように、トレイダーズホールディングスもいち早くAIサポートデスクを活用している。同社の作左部 光威氏も、効果を実感しているという。
「当社では総務、人事といった管理部門を中心に数十人がAIサポートデスクを使っています。一番のメリットは、時間当たりの生産性向上です。例えば、今年4月に障がい者差別解消法が改正されましたが、それに対応するために社内規程をどのように見直すべきか。従来は相当の時間をかけて調査していましたが、AIサポートデスクは修正が必要な箇所を回答してくれるだけでなく、就業規則の改訂案も提案してくれるので、これまでに比べ大幅に対応コストの削減ができています」
バックオフィス業務の効率化という観点では、AIサポートデスクは企業の管理部門や士業向けにも有効だ。メンテナンスの手間がかかる社内向けFAQの代わりにもなるだろう(図2)。管理業務以外でも、その活用領域は広い。

図2 社内の問い合わせに対する「AIサポートデスク」を活用した回答例
AIが登録文書を参照して回答を生成する「AI文書検索」機能により、複雑な社内文書が数多く登録されていても、対話をするかのように気軽に質問することで、社内固有情報に基づいた正確な回答を導き出すことができる
法人営業を担当する部門なら、顧客の公開情報を生成AIに読み込ませた上で「どのような提案をすべきか」を質問してもいいだろう。自社の様々な経営情報をもとに、「どんなPRをすべきか」と尋ねてもいい。入力情報は外部に漏れないので、業務に関連する深い質問ができる。AIサポートデスクは、企業が生成AIを本格活用する上での「心理的な壁」も取り払うことになりそうだ。
株式会社FleGrowth
〒150-6028 東京都渋谷区恵比寿4-20-3
恵比寿ガーデンプレイスタワー28階
URL:https://flegrowth.co.jp
AIサポートデスク URL:https://aisupportdesk.jp

