
ベトナムICTのリーディングカンパニーであるFPTコーポレーションは、2023年にグローバルでのIT事業の売り上げが初めて10億ドルを突破した。DX(デジタルトランスフォーメーション)支援、AI(人工知能)ツール開発、半導体分野への進出など次々に新たな手を打ち出し、ここ数年は年率で約20%の成長を続けている。同社の売り上げの柱である日本向け事業は、2025年に20周年を迎える。創業者チュオン・ザー・ビン会長は、これを契機に日本市場でさらなる成長をうかがう。(聞き手は日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ 大和田尚孝)
——2024年のビジネスの状況を教えてください。
2024年には、グローバルITサービスで総収益30兆9530億ベトナムドン(VND)を達成し、2023年より27.4%増加しました。(注:日本国内の売り上げが全体の40%を占め、貢献度は最大だ。また、日本国内の売り上げは前年比で32%以上増加した。)
2024年には、ベトナムでのオフショアサービスを拡大し、地政学的リスクに対応し、日本企業のレガシーシステムもモダナイゼーションをしました。お客様と一緒に、ビジネスの継続方法や人材維持の方法を考え、解決策を実行しました。業種としては、小売り、航空、自動車、製造、ITサービスなどが順調に売り上げを伸ばしました。
——2025年の目標はどのように設定していますか。
当社はグローバルの売り上げを前年比25~30%増加させることを目指しています。
——2025年はFPTの日本でのビジネス開始から20周年を迎えますね。
これまでの20年間で、日本の皆様に支えていただき成長することができました。心からお礼申し上げます。今後も、お互いが継続的に発展できる未来を作っていけたらと思っています。
2025年にはいろいろなことをしたいと考えています。最大のイベントが、日本にAIファクトリーをオープンすることです。そこにAIを専門とした部隊を置き、日本企業のAIトランスフォーメーションを推進していきます。
日本のITベンダーとも協力して、AIに関連するジョイントベンチャーやジョイントラボも複数立ち上げたいと思っています。
AIについては、インフラストラクチャだけでなく、プラットフォーム(FPT AI Studio、FPT AI Inference、FPT AI Agents)も提供します。それらを活用することで、データ処理やモデルトレーニング、分析、エージェント作成など、AIを活用した変革の第一歩を提供していきたいと考えています。日本企業がより良い成果を出せるよう、すでに効果が実証されているソリューションを提供していきます。
——AI関連以外ではどのようなことを考えていますか。
人員も増やす計画です。現在、FPTは日本に4000人の従業員がいます。2025年末までに5000人に増やす考えです。併せて日本人の割合も、現在の33%から、2025年の末に45%まで引き上げたいと思っています。

2025年のうちに、SCSKと協力して「COBOL PARK(コボル・パーク)」という名称の新会社を作る計画もあります。COBOLアプリケーションをクラウドに移行し、それを運用するマネージドサービスを提供します。
ある日本の大手メディア放送会社の案件で、COBOL PARKで提供しようと考えている手法を用いました。その結果、業務工数や所要時間が削減できたり、メインフレームの維持管理に必要だった要員を減らせたりといった成果を出すことができました。
日本で活動する、他のベトナムIT企業への支援もしていきます。これらの企業がFPTと共同で2025年までに1500億円(10億ドル)の収益を生み出すことを期待しています。
——どのような支援をするのでしょうか。
2024年7月に在日ベトナムDX協会(Vietnamese Association of Digital Transformation in Japan、略称VADX Japan)を設立しました。約50社が参加しています。VADX Japanでの活動を通じて、FPTの日本での経験を会員企業に共有していけたらと思っています。
——2025年以降も含め、考えている今後の展開を教えてください。
地政学リスクは今後もしばらく、最もホットなテーマであると思います。各国政府から企業への要求も日増しに強くなるはずです。そうした中で、いかに対処し、事業を継続するかが重要になります。サプライチェーンを柔軟に変更維持したり、現地の人と事業を守ったりすることを考える必要があります。
自動車については、AIファーストやSDV(ソフトウエア定義車両:Software Defined Vehicle)の動きがさらに加速するはずです。SDVとは、車両の販売後も車載ソフトを更新し続け、機能を増やしたり、性能を高めたりする自動車を指します。自動車は、お話した地政学リスクに対応しながら生産することが特に重要になるので、主体的に動けるようにすることが欠かせません。
日本においては、自動車業界各社と協力し、競争優位性を維持したり、より向上させたりするお手伝いをしたいと考えています。2024年の1月から9月にかけて、グローバルにおける自動車業界向けビジネスは前年比で4割、日本市場では6割以上成長しており、実績を積むこともできています。
新しいタイプのマネージドサービスも思案中です。現在のマネージドサービスは既存の情報システムを運用・保守するサービスであり、今後も必要です。しかし、DXやGX(グリーントランスフォーメーション)によって情報システムが進化するなかで、マネージドサービスの対象となるシステムだけが進化を止める訳にはいきません。単なる運用・保守ではない、DXやGXにも対応して進化するマネージドサービスが必要だと考えています。
GXについては日本企業と協力して、GXプラットフォームを作れないかと構想しています。プラットフォームによって、例えば空気や水の汚染を検知したり、汚染していた場合の技術的な解決策を提示したりします。このプラットフォームを日本やベトナムに加え、当社が拠点を持つ他の国で展開していけたらと思います。
——半導体分野においては今後どのようなことを考えていますか。
日本企業の半導体生産拡大のお手伝いをしていきたいと考えています。具体的には、半導体関連人材の供給を計画しています。2024年、FPTは大学、短大、国際認定レベルの半導体プログラムに約1500人の学生を登録し、将来に向けた重要な人材パイプラインを構築しました。
現在、20の大学と、半導体の生産人材や技術者を育成する4年のプログラムを組めないか相談しているところです。プログラムは、最初の2年をベトナム国内の大学で勉強し、次の2年を国外の半導体エコシステムに入っている企業で勉強し、インターンシップを行います。勉強しに行く国は日本、台湾、韓国、シンガポール、米国を考えています。
半導体設計にも力を入れています。2023年に設計部分が完成した複数の半導体を、もうすぐ日本にも出荷する計画です。日本向けには合計1000万個のチップを用意しています。半導体チップの流通を手掛けている日本企業と関係を築くことができたので、ベトナムは日本と協力し、日本が半導体産業で再びトップの地位を獲得するのを支援するのに理想的な立場にあると私たちは強く信じています。
2024年はパワーマネジメントチップなど、新たに10種類の半導体を設計しました。2025年はさらにチップのラインアップを拡充する計画です。
当社は、日本の工場である顧客にサービスを提供するために、OSAT、特に高度なパッケージングにおける提供を強化する予定です。
半導体における、日本とベトナムの協力関係をさらに広げていくためのプラットフォームも構築します。政府、大学、企業の3つに分けて、それぞれのレイヤーでプラットフォームを作る考えです。
——2024年11月に、米半導体大手のNVIDIAのテクノロジーを使ったGPUクラウドサービスの発表がありました。両社の関係について教えてください。
当社は以前から、このサービスの提供に向けた準備を進めてきました。NVIDIAのクラウドソリューションプロバイダーおよびグローバルシステムインテグレーターとして、インフラストラクチャ、プラットフォーム、アプリケーション、包括的な統合サービスを含むAI開発のワンストップショップを提供しています。
当社とNVIDIAは良好な関係を築いており、今後はより包括的な関係にしていきたいと考えています。AIの分野だけでなく、通信、教育、ゲームなどでも協力していきます。FPTのほぼすべての部門がNVIDIAと何らかの関係を持つことになります。また、お互いの人材育成も推進します。将来的には、ベトナムと日本でNVIDIAの技術を展開できるようにしたいと考えています。
