2024年9月19日
新潮流

日本企業の命運握る生成AI、様々な業界で活用が広がる
世界がルール整備に奔走、安全な活用を模索へ

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吉田洋平=フリーライター

今、最も注目されているデジタル技術といえば、文句なしでAI(人工知能)だろう。DX(デジタルトランスフォーメーション)においてもAIは不可欠だ。そのAI技術の中でも主役といえるのが生成AIである。米オープンAIが2022年11月に生成AI「ChatGPT」を発表して以降、企業の間で生成AI活用が急速に広まった。2024年に入ってからは、顧客向けの業務における本格的な活用が増えている。さらなるAI活用拡大を見据え、規制の強化も各地域で始まった。AI活用の最新動向を追った。

米マイクロソフトは2024年5月、「Copilot+ PC」というWindowsパソコンの新カテゴリーを発表した。Copilot+ PCは、AI処理専用のチップ「NPU」(ニューラル・プロセッシング・ユニット)を組み込んだSoC(システム・オン・チップ)を搭載している。

同社は2023年から、「副操縦士」を意味する「Copilot」という名称の生成AIを提供してきた。Copilotを使うことで、Word文書を自動で要約したり、文書から自動でPowerPointのプレゼンテーションを作成したりすることができる。

Copilot+ PCは、Copilotを使うことによって増大するAI処理をNPUに任せ、CPU(中央演算処理装置)や画像処理半導体(GPU)の負荷を減らす。処理を効率化することで、消費電力の抑制も期待できるという。

生成AIによる処理拡大に対応するため、データセンター事業者がコンピューターリソースを増強する動きも増えている。さくらインターネットは2024年8月、米エヌビディアのGPU2000個超を北海道石狩市のデータセンターに導入したと発表した。生成AIの開発を手がける企業などに提供することが目的だ。当初は2025年3月までに導入する計画だったが、引き合いの多さから前倒ししたという。

米マイクロソフトは同社のデータセンターを使った生成AIの利用を日本政府に促すため、情報処理を国内のセンターで完結できるようにした。同社は2024〜2025年にかけて約4400億円を日本のデータセンターに投じると表明している。

顧客対応の支援に
生成AIを導入

紹介したように、生成AIを利用するための環境は急速に整っている。同時に、企業における生成AI活用も本格化してきた。

金融業界においては、2024年8月にみずほ銀行がコンタクトセンターシステムを刷新し、生成AIの全面的な活用を開始した。電話やチャットなどを介したリモートの顧客対応時に、やり取りを生成AIが分析する。分析結果を基に、オペレーターに対して回答案などを提示して支援する。

三井住友トラスト・ホールディングスは2025年までにコンタクトセンター全拠点で生成AIの実装を目指している。みずほ銀行と同様の形でオペレーターを支援し、受電後のオペレーターの入力業務なども生成AIを使って効率化する考えだ。

大手金融機関の多くは2023年に、社内向けの問い合わせ対応や情報検索支援などを目的として、生成AIを試験導入した。そこで培った経験を生かし、2024年から対外的な業務への本格活用を始めた形だ。

自動車分野で生成AIを活用する動きもある。完全自動運転車の実用化を目指すスタートアップのTuring(チューリング)は、生成AIを活用した自動運転AIを開発中だ。2025年中に東京都内の一般道において、人間の介入なしで自動運転することを目指している。同社の自動運転AIにおいて生成AIは、カメラに映った標識や道路の状況、天候などを認識するために利用する。

この「撮影した映像の状況を認識できる」という生成AIの特徴を生かし、工場などで人が担ってきた作業をロボットが代替する取り組みも増えている。米テスラは2025年中に自社開発したヒューマノイド(ヒト型ロボット)を自社工場に導入する予定だ。2026年からの外販も計画している。

活用ルール作りに向け
日本も積極的に動く

企業による活用が拡大している生成AIだが、課題もある。その1つが、生成AIを使って作成した偽画像や偽映像が流布したり、生成物が著作権を侵害したりする可能性があることだ。

この課題を解消するために、各地域でルール作りを進める動きが目立つ。欧州連合(EU)は2024年5月、世界初のAI規制法案を承認した。2026年の本格運用開始を見込む。

AI法案においては、生成AIで作成したコンテンツにそれを明示する義務を課す。違反した企業には巨額の制裁金を払わせる一方で、個人の私的な生成AI利用は規制の対象外とする見通しだ。

日本もAIのルール作りにおいて主導的な役割を果たしたい考えだ。2023年5月の主要7カ国首脳会議(G7サミット)において、生成AIの国際ルールをつくる「広島AIプロセス」を提唱した。2024年5月には広島AIプロセスに基づく国際的な枠組みを呼びかけ、現在は経済協力開発機構(OECD)加盟国など50以上の国と地域が「広島AIプロセス・フレンズグループ」に参加している。

日本が主導する枠組みは、中国など非民主主義陣営に対して民主主義陣営の結束を促すのが狙いだ。厳しい規制を望むEUと、柔軟な規制を望む米国などの間を取り持つ考えもあるという。

政府は国内の法規制についても議論を進めている。2024年8月、AIの法規制を議論する「AI制度研究会」の初会合を開催した。「リスク対応とイノベーション促進の両立」、「柔軟な制度設計」、「国際的な相互運用性」などを基本原則として議論を重ねていくという。

「規制」というと、テクノロジーの進歩にブレーキをかけるものと捉えがちだ。しかし生成AIについては、ルールなしに企業が利用した場合に多くの問題を引き起こす可能性が高い。そうした事態を避け、企業が安心して生成AIを活用できるようにするためには、法律をつくってルールを整備することが欠かせない。

法規制以外にも課題はある。日本において特に問題となっているのはデジタル人材の不足だ。帝国データバンクが2024年8月に発表した調査によると、有効回答を得た約4700社のうち生成AI活用の懸念や課題として「AI運用の人材・ノウハウ不足」を挙げた企業が54.1%に上った。生成AIの利便性を理解したとしても、それを担う人材がいないケースが多くあるのだ。

課題解消のためには社内人材のリスキリングや、海外デジタル人材の活用といった取り組みが必須の状況だ。

人手不足の日本企業に
AIは不可欠

生成AIは、社内での情報の検索や要約といった用途だけでなく、顧客対応業務の支援、さらには顧客対応業務の代替として使われはじめている。様々な効果が期待できるが、大きく見ればいずれも「業務の効率化」につながる。

今後さらなる人口減少、働き手不足が予想される日本において、企業が生き残るためには生成AIの活用が重要になるはずだ。現在、デジタル人材の確保に悩んでいる企業は多いが、この問題を早い段階で乗り越えておくことが、将来の人手不足を解消する鍵になる。

生成AIと並び、今後の成長が期待されているAI分野の技術が、半導体と組み合わせて使うAIだ。従来の半導体との最大の違いは、ハードウエア製品の中にある半導体が「成長し続ける」こと。例えば、複合機に使われている半導体が、ユーザーの使用データを学習し、半導体の動作をより最適化させる、といったことが可能になる。

これまで一度クラウドにデータをアップロードして実施していたAI処理を、ハードウエア端末側で完結することも可能になる。クラウドを介するよりもリアルタイムで処理が進み、通信状況にも左右されないため、自動運転への応用などが期待される。

半導体とAIの組み合わせは、いくつか例に挙げたようにものづくり分野で力を発揮する可能性が高い。ものづくりが得意な日本企業が飛躍するきっかけとなり得るテクノロジーだ。

生成AIと、半導体×AIの両テクノロジー活用の成否が、日本の将来を左右すると言っても過言ではない。

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