
人口減少、少子高齢化による労働力不足が問題となっている。IT業界は「2025年の崖」といわれる、基幹システムの老朽化などの課題に直面しており、さらに深刻な状況だ。問題解決の手段として、海外のIT企業にシステム開発や保守・運用を委託する「オフショア開発」に注目が集まっている。そこで日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボはオフショア開発の利用実態と今後の計画を浮き彫りにする目的で、「オフショア開発に関する調査」を実施した。
調査は2024年10月、20〜69歳のビジネスパーソンを対象に実施した(詳細は文末の概要参照)。現在オフショア開発を利用している人に、委託中の国・地域について複数回答可の形で聞いたところ、首位は「中国」(36.3%)、2位は「ベトナム」(25.9%)、3位は「インド」(20.7%)だった。

中国のIT企業は日本との地理的な近さや漢字への理解などを強みに、1990年代から日本企業向けのオフショア開発を受託してきた。それ以来、日本企業にとって最も有力な委託先とされてきた。最近は人件費の高騰によるコストメリットの減少や、西側諸国との関係悪化による地政学リスクなどがたびたび指摘されていた。そうした状況の中でも、依然として中国が日本企業の最も有力な委託先であると分かった。
ここまでのデータは順当と言えるだろう。これに対して、将来計画について尋ねた結果には「異変」があった。
今後、オフショア開発の発注を検討している委託国・地域についても複数回答可の形で尋ねた。すると「インド」と回答した人が最も多く37.2%、次いで「ベトナム」が36.2%だった。「中国」は3位(34.8%)だった。
現在委託中の国・地域についての結果と比べると、インドは16.5ポイント伸ばし、ベトナムは10.3ポイント増やした。中国は1.5ポイントの微減にとどまった。計画に過ぎないため確定とは言えないが、オフショア開発の受け皿として、インドやベトナムが中国を上回る可能性が出てきた。

先の質問により、現在から将来にわたって日本企業がオフショア開発を委託する国・地域がどのように変わっていくかの大まかな傾向をつかめた。さらに深堀りする形で、現在委託している国・地域別に、今後の発注量の「変化」を聞いた。変化については「増やす」「減らす」「取りやめる」「発注量は変えない」「決まっていない/わからない」の5つの選択肢を設けた。
まずは、現在のオフショア開発の委託先として最多の回答を集めた中国について見ていく。今後の委託量を「増やす」と答えた人の割合は25.0%。「減らす」が40.0%、「取りやめる」が5.0%だった。
中国のIT企業への発注量を「増やす」「減らす」「取りやめる」と答えた人に、その理由について複数回答可の形で聞いた。「減らす」「取りやめる」と答えた18人のうち、「委託先の地政学リスクが高まっているから」を選んだ人が7人で、最も多かった。地政学リスクの高まりが、オフショア開発にも影響を与え始めている様子が浮かび上がった。
次は、現在のオフショア開発の委託先として3番目に回答が多かったインドについてだ。発注量を「増やす」と答えた人の割合が42.3%、「減らす」が0%、「取りやめる」が3.8%だった。発注量を「増やす」と答えた11人のうち10人が、理由として「ソフトウエア開発品質をより高めたいから」を選んだ。インドのソフト開発品質を高く評価する人が多いようだ。
最後に、現在のオフショア開発の委託先として2番目に回答が多かったベトナムについての結果を示す。発注量を「増やす」が53.8%、「減らす」が11.5%、「取りやめる」が0%だった。上位3カ国の中で「増やす」と答えた人の割合が最も高かった。
ベトナムへの発注量を「増やす」と答えた14人のうち、理由として「海外拠点向けなど、グローバルへの対応力をより高めたいから」を選んだ人が8人で、最多だった。
ベトナムは多くのIT企業が、日本からのオフショア開発の受注に注力している。若手IT人材を豊富にそろえ、日本語教育や日本のレガシーシステムを扱うスキルを高めるなどして、日本企業からの受注を拡大している。英語力が高い人材が多いため、日本企業の海外進出をサポートする企業もある。

改めて全体の傾向を見てみる。中国は、今後の委託検討先として順位を落としており、今後は首位が交代する可能性がありそうだ。中国に委託を継続するケースにおいても、今後は発注量の減少が見込まれることが分かった。
インドはソフト開発品質を武器に、今後さらに多くの発注を集める見込みだ。ベトナムは、現在委託している企業の5割以上が今後委託を拡大する意向であり、インドと同様にさらなる成長が期待される。
国・地域別での発注量の増減に加えて、今回の調査は委託する情報システムの分野や技術の傾向に関連する設問を設けた。その結果については次回の記事で紹介する。
日経BPのICT(情報通信技術)領域のシンクタンクである総合研究所 イノベーションICTラボは、日本国内におけるオフショア開発の利用実態と今後の計画などを明らかにするために、「オフショア開発に関する調査」を実施した。インターネット調査会社マクロミルのモニター会員のうち、20〜69歳のビジネスパーソンを対象とし、Web調査の方法で回答を得た。調査期間は2024年10月8〜11日、有効回答数は291件。