2024年12月25日
独自調査

[独自調査]オフショア開発でコストは何割減らせるか、
判明した「目安」とは

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  • 2025年の崖
大和田尚孝=日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ

海外のIT企業にシステム開発や保守などを委託する「オフショア開発」を利用すると、果たして関連コストはどのくらい減らせるのだろうか——。こんな疑問を解き明かす目的で日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボが「オフショア開発に関する調査」を実施した。調査結果を紹介する記事の最終回となる今回は、コスト面の成果やオフショア開発へのニーズを探る。

 調査は2024年10月、20〜69歳のビジネスパーソンを対象に実施した(詳細は文末の概要参照)。オフショア開発を過去に利用した人や、今後利用を計画している人は、どのような成果を期待しているか知りたいと考え、それを確認するための質問を設けた。

 まずオフショア開発を利用した経験のある人(現在利用している人を含む)に、発注前に期待していた成果について複数回答可の形で聞いた。その結果、首位は「コスト削減」だった。59.8%と半数を超える回答を集めており、オフショア開発の主目的がコスト削減であると改めて分かった。2位は「ソフトウエア開発品質の向上・維持」(47.3%)、3位は「業務・技術面でのノウハウ蓄積・維持(担当者の固定など)」(36.8%)だった。

これまでのオフショア開発プロジェクトで期待していた(している)成果
これまでのオフショア開発プロジェクトで期待していた(している)成果
(出所:日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ)

 上記は発注前の「期待」である。では、実施後に期待通りの「成果」は得られたのか。その実態についても質問してみた。すると首位は「コストが下がった」(51.5%)、2位は「ソフトウエアが期待通りの品質に仕上がった」(32.2%)、3位は「業務・技術面でのノウハウを蓄積・維持できた(担当者の固定など)」(31.4%)だった。成果としてもコスト削減が最もポイントが高く、2位に20ポイント近い差を付けた。

これまでのオフショア開発プロジェクトで得られた成果
これまでのオフショア開発プロジェクトで得られた成果
(出所:日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ)

 コストはどの程度下がったのだろうか。オフショア開発でコストを下げることに成功した人を対象に、削減幅を尋ねた。首位は「1割以上〜3割未満」で61.0%の人が選んだ。この回答に6割超の人が集中したことから、これがオフショア開発でコスト削減を期待する場合の1つの目安といえるだろう。2位は「1割未満」(20.3%)、3位は「3割以上〜5割未満」(16.3%)だった。「5割以上」と回答した人も2.4%いた。

コストが下がった割合
コストが下がった割合
(出所:日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ)

 この結果から、「オフショア開発でコストを下げることに成功した」と回答した人の約8割が、1割以上のコスト削減に成功していることが分かる。「オフショア開発でコストを下げることに成功した」と回答した人が、オフショア開発経験者全体の51.5%を占めたことと併せて考えると、オフショア開発を利用した経験のある人のうち、およそ4割がコストを1割以上減らせたことになる。

課題は、やはり
日本語での意思疎通

 ここまで、オフショア開発に対する「期待」と「成果」について取り上げた。ここからは、オフショア開発を進めるうえで直面する「課題」についての調査結果を紹介する。

 オフショア開発を利用した経験のある人(現在利用している人を含む)に、これまでのオフショア開発プロジェクトで直面したことのある課題について複数回答可の形で聞いた。首位は「委託先の日本語能力が十分でない」(35.1%)、2位は「ソフトウエア開発品質が高まらない」(33.9%)、3位は「ノウハウが蓄積・維持できない」(33.1%)だった。

 やはり、最も難しいのは日本語での意思疎通であると分かった。オフショア開発を手掛ける海外のITベンダーの多くが日本語教育に力を入れているものの、日本企業が求める水準に達していないケースが一定数あるようだ。

これまでのオフショア開発プロジェクトで直面したことのある課題
これまでのオフショア開発プロジェクトで直面したことのある課題
(出所:日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ)

過去も将来も
「永遠の課題」の解消を期待

 今後期待することも調べた。具体的には、オフショア開発の利用を検討している人(新規、継続利用ともに含む)に、これからのオフショア開発に期待することを複数回答可の形で質問した。首位は「コスト削減」(52.7%)、2位は「ソフトウエア開発品質の向上・維持」(50.2%)、3位は「業務・技術面でのノウハウ蓄積・維持(担当者の固定など)」(42.5%)だった。

これからのオフショア開発プロジェクトに期待する成果
これからのオフショア開発プロジェクトに期待する成果
(出所:日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ)

 過去の案件における発注前の期待と順位は変わらなかったものの、コスト削減を選んだ人の割合が7.1ポイント減った。一方でソフト開発品質の向上・維持は2.9ポイント増え、ノウハウ蓄積・維持も5.7ポイント増えた。ここで注目したいのは2位のソフト品質と3位のノウハウだ。

 ソフト品質の向上・維持とノウハウの蓄積・維持は、IT人材の不足と関連する課題だ。IT人材の不足は、目前に迫った「2025年の崖」においても根本の原因とされる。2025年の崖とは、日本企業において2025年ごろに老朽化した企業システムが増え、運用や更新を担うエンジニアの不足感が強まることによって起こる各種の問題を指す。

 ソフト品質とノウハウは、過去にも繰り返し課題として指摘されてきた。例えば、基幹系システムの保守・運用を担当する団塊世代が一斉に退職することによるIT人材不足は、「2007年問題」として大きな話題になった。

 こうした歴史を振り返ると、ソフト品質の向上・維持とノウハウの蓄積・維持は、企業にとって永遠の課題であると分かる。日本企業は以前から、ソフト品質とノウハウに関する問題の解消をオフショア開発に期待してきたのだ。

 目前に迫った2025年の崖の影響で、ソフト品質とノウハウについての課題解決を期待する声は高まっている。この盛り上がりは、時間がたてば落ち着くかもしれない。だが、ソフト品質とノウハウという普遍的な問題の解決を期待してオフショア開発を利用する企業は、今後も一定程度の水準で推移し続けるだろう。

 一方で、今回の調査によってオフショア開発の変化も見て取れた。例えば地政学リスクによって委託先の国・地域の選択に影響が出始めていることだ。委託先の国・地域によって、利用者が期待することが異なっていることも、注目すべき傾向といえる。今後は目的や用途に応じて国・地域を使い分ける動きがこれまで以上に強まるかもしれない。

 まずは発注に挑み、品質向上など普遍的な問題の解決を目指す。その過程で実績を積み上げ、コスト削減などの成果を得る。さらに時代の変化を踏まえ、委託先や対象システムなどを定期的に見直す——。このような取り組みを積み重ねることが、オフショア開発を有効活用するためのポイントだ。

「オフショア開発に関する調査」概要

日経BPのICT(情報通信技術)領域のシンクタンクである総合研究所 イノベーションICTラボは、日本国内におけるオフショア開発の利用実態と今後の計画などを明らかにするために、「オフショア開発に関する調査」を実施した。インターネット調査会社マクロミルのモニター会員のうち、20〜69歳のビジネスパーソンを対象とし、Web調査の方法で回答を得た。調査期間は2024年10月8〜11日、有効回答数は291件。

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