2024年4月30日
経営とDX

経営者は今こそ「IX」に目を向けよ
ベトナムIT最大手FPT会長が予見する、DXの進化形と日本の未来

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日本企業は自社製品やサービスの競争力を磨くことで複雑化する社会課題の解決に貢献するために、デジタル技術をどう使いこなすべきか。経営者はどんな心構えでDX(デジタル・トランスフォーメーション)に臨む必要があるのか――。ベトナムのICTリーディングカンパニーであるFPTコーポレーションの創業者チュオン・ザー・ビン会長は、そのヒントとして、DXの先を行くIX(インテリジェント・トランスフォーメーション)という考え方を提唱する。インタビューを通じて、AI(人工知能)や半導体など最先端のテクノロジーにより経営を高度化する勘所を探る。(聞き手は日経BP総合研究所 イノベーションICTラボ 大和田尚孝)

——生成AIをはじめ、AIがいま注目されています。今後、企業や社会のデジタル活用においてどんな変化が起こると考えていますか。

生成AIを含め、AIが社会により深く浸透していくでしょう。AI活用が世界的な潮流となるにつれて、「デジタル」という言葉が持つ意味は「AI」に置き換わっていくと考えています。つまりデジタル活用と言えば、それはAIを活用することを指すのが当たり前になります。

それに伴い、AI半導体チップやAIエレクトロニクス(AIを搭載したスマート家電)、AIエンタープライズ(経営のかじ取りにAIを積極活用する企業)、AIネーションズ(AIで社会課題を解決し発展する国家)といった言葉が一般的になるでしょう。社会を構成する様々な製品や組織、概念などが、AIを前提に再定義されるわけです。

となるとAIの開発や実装、安心安全な運用を担う技術者が一段と重要になります。当社としては、2035年頃に技術者を100万人超に増やしたいと考えています。現在はソフト技術者が主流ですが、その頃にはAI技術者が主流になっていると思います。必要な教育や採用にアクセルを踏み込みます。

AIによる社会変化は、DXとGX(グリーントランスフォーメーション)に続く第3のトランスフォーメーションとして、IXと呼べるのではないでしょうか。

——高度な洞察や知見に基づく、スマートな社会というイメージでしょうか。

FPTコーポレーション 取締役会長 チュオン・ザー・ビン 氏
FPTコーポレーション
取締役会長
チュオン・ザー・ビン

はい。IXが実現した世界においては、データをインプットするとインテリジェンス(洞察、知見)がアウトプットされる仕組みが広がるはずです。そこには当然ながら半導体が重要な役割を担うでしょう。あるいは、半導体チップとは別の新たな仕組みが到来する可能性もあります。

いずれにせよ、全ての企業にとってIXに基づく製品やサービスの再定義が必須になるでしょう。IXを前提に、ビジネスの仕組みをどう創るか、企業や社会の枠組みをどう作り直すか、大きな変化に備えて技術者を数万人規模で育てられるかが重要になります。

IXにつながる
「半導体×AI」

——IXはもう始まっていますか。

そう思います。生成AIの出現です。ほかにもあります。例えば、先ほども少し言及しました、半導体です。

半導体は今後、AIと組み合わさり、自らが新しいことを学習する「スマート」な存在に進化していくでしょう。自動車や家電などに搭載する半導体も、AIと組み合わさることで、もっと賢くなっていくはずです。

従来の製造業は、多くのケースで、市場に流通する汎用的な半導体チップを採用し、自社製品に搭載していました。チップを入手しやすく、様々な用途に使えるなどのメリットがある一方で、自社製品の特性に合わせたチップを採用してより高い性能を引き出すことができません。

AIと半導体チップを組み合わせることにより、様々な企業が、自社の製品やサービスにとって最適な半導体を手に入れられるようになります。言い換えると、「深く、詳細まで考え尽くす」という日本のものづくりの強みを発揮し、とても強力な最終製品が作れるようになるはずです。

国と共に、
半導体に取り組む

——日本企業にとって、IXはチャンスというわけですね。

その通りです。再興の好機です。

——IXによる日本企業の再興に、FPTはどう関与できるのでしょうか。

当社は半導体の設計や製造支援、検証などのビジネスに参入しています。半導体事業を通じて日本企業のIXに貢献します。

例えば、日本の電気・電子業界の企業と連携して各種機器に特化した専用のスマートチップを設計し、半導体メーカーに最適な発注ができるように支援することを考えています。日本と関係が良好な海外の半導体メーカーに人材を供給することで、半導体チップ分野において日本企業を支援したいとも思っています。

FPTコーポレーション 取締役会長 チュオン・ザー・ビン 氏

特に人材面では、我々はベトナム政府とも連携します。ベトナム政府は半導体ビジネスの強化を打ち出しています。政府と共に、これまで培ってきたソフトウエア技術者を生かします。

ベトナムには現在100万人規模のソフト技術者がおり、インドに続くポジションです。ソフト技術と半導体技術は通じるところがあるため、ソフト技術者に教育を施せば1~2年で半導体技術者を育成できます。

IXを意識して
DXに取り組むべき

半導体を例に話してきましたが、IXは全ての企業や組織に関わる潮流です。DXの一環として、早い段階からAIを使ったインテリジェントな仕組みを積極的に取り入れていくことが、将来のIXにつながります。このような長期的な視野に基づいたDXの支援も、我々の得意とするところです。

——DX分野では、FPTは日本企業や社会をどのように支援できますか。

大きく4つあります。1つ目は、日本企業のグローバル化対応です。海外で活躍する日本企業に対して、国内の本社や支社、工場だけでなく、世界各地のシステム全般の開発や運用を請け負えます。

具体的にはアプリケーション管理のAMS(Application Management Services)、ITインフラ管理のIMS(Infrastructure Management Services)、業務代行のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)といったサービスを活用し、サポートします。それぞれのサービスにおいて、AIを使った人的資源の最適化やスピード向上などを進めます。

2つ目は、業種に特化したITソリューションの展開です。例えば自動車業界は、ガソリン車からEV(電動自動車)へのシフトという、史上最も困難な挑戦をしている最中です。自動車にどんな制御ソフトを載せるかが、改めて重要になっています。自動車に搭載したスマートなソフトが、毎日自ら機能をアップデートする形などが考えられます。こうした新しいチャレンジを支援する適切かつ包括的なソフトを提供していきます。

医療・健康や金融分野でもソリューションを提供します。医療・健康分野であれば、AIを活用して一人ひとりの健康状態を把握し、病気の予防や治療に使うようなサービスが考えられます。金融であれば、ローン審査にAIを使うことで、より利便性を高められるでしょう。

3つ目はレガシーシステムのマイグレーションです。日本企業のレガシーマイグレーションをする場合、本社の基幹システムから取り掛かるのは難しいことがあります。技術面はもちろん、心理的な抵抗もあるためです。まず海外拠点から取り組んで小さな成功を積み上げるアプローチも我々は提供できます。

4つ目は日本企業の事業継続を支援することです。社会情勢の影響で、中国を中心としたサプライチェーンを見直す気運が出てきています。しかしサプライチェーンを見直したとしても、約20万人と言われる日本語が堪能な中国のIT人材は、これまで培ってきた貴重な資産として活用し続けるべきです。そこで当社は2024年3月に大連に新拠点を開設しました。当社が日中両国の間に入ることによって、事業継続性だけでなく、日本企業へのサービス品質向上・高度化、人材不足の解決に貢献できるはずと考えたためです。

デジタル技術によるDXと、その先のIXに向けて、日本企業の皆様と一緒に取り組んでいきたいと思っています。

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