
海外のIT企業にシステム開発や保守・運用を委託する「オフショア開発」の利用が広がる中で、発注者はどのような成果を期待し、実際にどんなメリットを得ているのか。日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボはオフショア開発の利用実態と今後の計画を浮き彫りにする目的で、昨年に続き2回目となる「オフショア開発に関する調査」を実施した。前回記事はどのようなシステムや技術分野がオフショア開発の対象となっているかを取り上げた。今回はオフショア開発に期待するものや、実際に得ている成果について探る。
調査は2025年10月、20〜69歳のビジネスパーソンを対象に実施した(詳細は文末の概要参照)。オフショア開発を過去に利用した人や、今後利用を計画している人は、どのような成果を期待しているか知りたいと考え、それを確認するための質問を設けた。
まずオフショア開発を利用した経験のある人(現在利用している人を含む)に、発注前に期待していた成果について複数回答可の形で聞いた。首位は「コスト削減」(54.7%)、2位は「業務・技術面でのノウハウ蓄積・維持(担当者の固定など)」(41.8%)、3位は「ソフトウエア開発品質の向上・維持」(39.2%)だった。
「コスト削減」は2位を10ポイント以上離し、首位を堅持したものの、昨年調査からは5.1ポイント落とした。2位の「業務・技術面でのノウハウ蓄積・維持(担当者の固定など)」は、昨年3位から順位を1つ上げ、ポイントも5ポイント増やした。3位の「ソフトウエア開発品質の向上・維持」は昨年2位から順位を落とし、ポイントも8.1落とした。

上記は発注前の「期待」についての設問である。実際に期待通りの「成果」を得られたのかについても聞いた。首位は「コストが下がった」(43.5%)、2位は「人材の確保ができた」(34.5%)、3位は「グローバル対応が容易になった」(30.2%)だった。
「コストが下がった」は前回に続いて首位だったが、8.0ポイント落とした。2位の「人材の確保ができた」は、オフショア開発の現状を踏まえ、今回新たに追加した回答だ。

従来、オフショア開発といえば「安価なコストで下流工程を委託するもの」というイメージがあった。しかし現在、日本国内のIT技術者が不足しているといわれるなかで、オフショア開発の目的がコスト削減よりも人材確保に移りつつあり、上流工程の委託も増えていると指摘される。
「コスト削減」への期待や、実際の成果についてのポイントが下がっていることと、成果の2位が「人材の確保ができた」だったことは、こうした傾向を反映している可能性が高い。
発注前の期待について、「ソフトウエア開発品質の向上・維持」がポイントを落とし、「業務・技術面でのノウハウ蓄積・維持(担当者の固定など)」がポイントを伸ばしていることは、上流工程の委託が増えていることと関連していると見られる。単一案件のソフト開発を依頼するよりも、より本業に近い分野や将来の技術承継などを共に考えるパートナーとしての依頼が増えていると捉えることができるためだ。
紹介した通り、「コスト削減」への期待や、「コストが下がった」という成果のポイントは減少しているが、それでもまだ2位とは大きく差がある状況だ。実際、オフショア開発によってコストはどの程度下がったのだろうか。オフショア開発でコストを下げることに成功した人を対象に、削減幅を尋ねた。
最も多かった回答は「1割以上〜3割未満」で73.3%の人が選んだ。昨年よりも12.3ポイント増加した。一方で、「3割以上〜5割未満」「5割以上」「1割未満」はいずれもポイントを落とした。
「1割以上〜3割未満」が増え、「1割未満」が減っていることから、オフショア開発の発注者側が、以前よりも的確な発注ができており、確実に成果を得ていることが分かる。一方で、「3割以上〜5割未満」と「5割以上」が減っていることから、以前のように「オフショア開発で大幅にコストを削減する」のが難しくなっているようだ。

ここまでオフショア開発に対する「期待」と「成果」について取り上げた。ここからは、オフショア開発を進めるうえで直面する「課題」についての調査結果を紹介する。
オフショア開発を利用した経験のある人(現在利用している人を含む)に、これまでのオフショア開発プロジェクトで直面したことのある課題について複数回答可の形で聞いた。首位は「委託先の日本語能力が十分でない」(34.9%)、2位は同率で「委託先の国・地域の地政学リスクが高まり、オフショア開発に不安を感じる」(32.3%)と「業務・技術面でのノウハウを蓄積・維持できない(担当者が固定されないなど)」(32.3%)だった。
「委託先の日本語能力が十分でない」と「業務・技術面でのノウハウを蓄積・維持できない(担当者が固定されないなど)」がいずれも1ポイント以内の変化にとどまったのに対し、「委託先の国・地域の地政学リスクが高まり、オフショア開発に不安を感じる」は昨年5位から順位を3つ上げ、4.7ポイント伸ばした。やはり現在の不安定な世界情勢は、オフショア開発の発注者にとって課題になっているようだ。

今後期待することも調べた。具体的には、オフショア開発の利用を検討している人(新規、継続利用ともに含む)に、これからのオフショア開発に期待することを複数回答可の形で質問した。首位は「コスト削減」(51.7%)、2位は「人材確保」(44.9%)、3位は「業務・技術面でのノウハウ蓄積・維持(担当者の固定など)」(43.5%)だった。
「コスト削減」は昨年から変わらず首位で1ポイント減、「業務・技術面でのノウハウ蓄積・維持(担当者の固定など)」も昨年と同じ3位で1ポイント増と大きな変化はなかった。2位に入った「人材確保」は、今回新たに加えた回答だ。やはり、今後のオフショア開発の主目的は、コスト削減から人材確保に移っていくと言えそうだ。

日経BPのICT(情報通信技術)領域のシンクタンクである総合研究所 イノベーションICTラボは、日本国内におけるオフショア開発の利用実態と今後の計画などを明らかにするために、2回目となる「オフショア開発に関する調査」を実施した。インターネット調査会社マクロミルのモニター会員のうち、20〜69歳のビジネスパーソンを対象とし、Web調査の方法で回答を得た。調査期間は2025年10月10〜15日、有効回答数は284件。