2026年2月16日
経営とDX

「最新の技術にも過去の経験が生きる」
AI関連サービスの日本展開を進めるベトナムFPTが
自信を持つ理由とは

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ベトナムのICTリーディングカンパニーであるFPTコーポレーションは2025年、日本国内にAI(人工知能)の計算処理に使うGPUリソースを設置し、クラウド経由で提供するサービスを開始した。ベトナムでは2024年に同様のサービスを始めており、今回日本にも展開した形だ。GPUクラウド以外にも、FPTはAI分野においてベトナムで多くの成功事例を手掛けており、現在はその日本展開を進めている。同社の鳥居隆史氏に、FPTのAI事業の全体概要や強み、今後の展望などについて聞いた。(聞き手はフリーライター 吉田洋平)

——FPTグループのAI分野における取り組みについて教えてください。

2017年頃から、ベトナムでAIの研究や関連技術者の育成がスタートしました。2019年にベトナムに「AIセンター」という名称の専門施設も作りまして、研究や人材育成の拠点としてきました。2020年頃からはベトナムの様々なクライアントにAI関連のソリューションを本格的に提供し始めました。特に、製造業や金融業などのご利用が多いですね。そういった案件を通して、機械学習や音声認識、画像認識などへの理解を深め、経験を積んできました。具体的な事例としては、製造業の工場におけるAI活用があります。工場のカメラ映像をAIで分析し、製品の不具合を見つけたり、盗難や不審人物を発見するためのセキュリティに使ったりしています。日本でも生成AIが登場した2022年頃から、我々のAI関連ソリューションをご採用いただくことが徐々に増えてきました。

2024年に米NVIDIAと強力なパートナーシップを結んだことも大きな転機でした。ベトナムにあるFPTのデータセンターの中にNVIDIAのGPUを設置して、GPUリソースをクラウドから提供し始めたのです。ベトナムでは既に、いろいろなAIモデルの開発などに利用されています。

2025年には日本のデータセンターにもNVIDIAのGPUを設置し、クラウドでのリソース提供を始めました。「ハイパースケーラー」と呼ばれる大手プラットフォーマーのGPUリソースが足りないと言われていた中でのサービススタートであり、多くの方に関心を持っていただくことができました。

我々のGPUクラウドは、ハイパースケーラーのサービスよりも安価です。加えて、FPTが持つアプリケーションやAIテクノロジーと組み合わせることで、単なるインフラ提供にとどまらない、アプリケーションを含めたエンドツーエンドのサービスをご提供できます。価格だけで言うと、我々以外にもクラウドで安価にGPUリソースを提供するベンダーが出てきています。ただ価格競争があるのはお客様にとってはよいことです。お客様も、いろいろなサービスを比較して導入先を決めていると思いますので、価格面以外の我々の強みについてもしっかりお伝えする必要があると感じています。

——価格が近い他ベンダーと比較した場合の強みとしては、お話されていたエンドツーエンドのサービス提供になるのでしょうか。

それがまず1つです。もう1つあるのが、我々のGPUクラウドの設計が、NVIDIAの推奨に完全に準拠していることです。NVIDIAは同社のGPUを設置する際の構成について、ネットワークやストレージ、装置接続について推奨構成を提示しています。

FPTはNVIDIAに全面的に協力していただき、完全に推奨通りの構成を採っています。NVIDIAのGPUの性能を引き出すためには、これが必要だと考えたためです。装置だけでなくサーバーラックの構成、配線や冷却の設計もNVIDIAのエンジニアと協力して行いました。

——GPUのチップを買い、サーバーの他のパーツやファシリティは自由に選んでシステムを構成しているのだと思っていました。

そういった形を採っているベンダーももちろんいるでしょう。その方がサービス環境を整えること自体は安価にできると思います。結果として、我々よりGPU単体の性能当たりの価格を安く設定しているベンダーはあります。

違いが出るのは、複数のサーバーをまたがる大規模な計算をする場合です。例えばAIモデルのトレーニングや科学技術計算などです。NVIDIAの推奨構成を採っている場合、使用するGPUやサーバーを増やしてもリニアに近い形で性能が出ますが、そうでない構成の場合は複数のサーバーを使っても性能が上がらないというケースがありえます。我々としては、業務で使う実際のワークロードで使っていただければ、他社よりもコストメリットがあるということを訴求していきたいと考えています。

——現状では、GPU単体の性能で価格を比較する企業が多いのですか。

FPTジャパンホールディングス FPTデータ&AIインテグレーション シニアマネージャー 鳥居 隆史 氏
FPTジャパンホールディングス
FPTデータ&AIインテグレーション
シニアマネージャー
鳥居 隆史

そうですね。国内では情報システム部門の中で、インフラ担当とアプリケーション担当が分かれていることが多いので、導入を決めるインフラ担当の方がアプリケーションのワークロードまで考慮する、という流れにはなかなかなりません。

一方でベトナムなど海外では、インフラ担当とアプリケーション担当の垣根が低く、当社の訴求がうまく機能しているようです。

AIを使ったアプリケーションを構築する場合、インフラ側の性能をどう引き出すかという視点が欠かせません。今後は日本においても、アプリケーションとインフラの両方を考慮した案件が増えていくのではないかと期待しています。

AIエージェント構築には
蓄積したノウハウを生かせる

——日本企業はどのようなことにAIを活用したいと考えていますか。

AIはホットなので、いろいろな活用を考えていますが、 社内情報を検索するためのチャットボットに使いたい、というケースが最も多いです。例えばメーカーであれば、過去の設計情報を自然言語で検索できるようにしたい、といった具合です。AIがエージェント的に動作するので、AIエージェントとも言える仕組みですね。

これは試験的なシステムやPoC(Proof of Concept) であれば、パブリックの生成AIを使ってもすぐに実現できます。しかし、業務で使えるレベルで、利用者の思いを汲み取って望まれる答えを返すようにするには、高いハードルがあります。特に日本企業の場合、人でも読み取るのが難しいような製造系の設計画像を、自然言語で容易に検索できるようにしたい、といった要望が多くあります。それを実現するためには専用のAIエージェントが必要になります。

このようなAIエージェントを、社内だけでなく外出先でスマートフォンからも使いたい、電波が悪くても使いたい、といったケースもあります。 その場合は、エッジの端末でも動作するAIモデルを作る必要があります。FPTは、こうした分野でのシステム開発の経験が豊富にあります。お客様の様々なご要望にお応えできるスキルがあると自負しています。

——AIエージェントという言葉が生まれてからあまり時間が経っていませんが、経験が豊富、というのはどういうことでしょうか。

FPTは2020年頃から、「IvyChat」という名称のAIチャットアプリを提供してきました。まだ生成AIが出てきていなかった時期ですが、現在のAIエージェントと同じように、チャット形式で自然言語で質問や依頼をすると、必要な処理が自動で実行される、というものです。

例えば、「ある店舗の先月の売り上げデータが見たい」といった入力をすると、システムが文章を解釈し、データ取得に必要なSQL文を自動で生成して、表を作って出力する、といった具合です。「チャットボットに自然言語で問いかけ、望む処理を実行する」という点は、AIエージェントと全く同じです。利用者の使い勝手もほぼ変わりません。

AIエージェントを使って処理を行うシステムを構築する場合でも、これまでIvyChatで培ってきた経験やノウハウが生きます。IvyChatも現在はAIエージェントに使われるテクノロジーも取り込んで進化させているところです。当社はマルチベンダー対応なので、大手ハイパースケーラーのクラウドやAIエージェントを使いたい、というご要望にもお応えできます。NVIDIA AI EnterpriseやLangChainといったプラットフォームにも対応しています。

「FPT AI Agent」という名称のSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型のAIエージェントを日本で提供を始めます。既にベトナムでは金融機関など多くの利用実績があり、これを日本語化します。個別にインテグレーションするIvyChatと異なり、FPT AI AgentはSaaS型で共通利用していただくサービスです。多くの企業で使っていただける、汎用的な機能に絞ったSaaS型のサービスにしたことで、より安価にお使いいただけます。

開発にもAIを取り入れている

——GPUクラウドやAIエージェント以外にも、AI分野の取り組みはありますか。

いくつかあります。1つは、顧客企業の社員の方向けに提供しているAI教育プログラムです。元々FPTグループの社員教育のために作ったプログラムであり、これをカスタマイズしてお客様に提供しています。

特徴は、実践的な内容に重きを置いており、現場で役立つ能力を実習によって身に付けられるようにしていることです。FPTはトレーニングを専門とする企業ではないので、我々のプログラムを受けてもAI資格などを取得できる訳ではありません。ですが、現場で役立つ知識やスキルが身に付けられる、という点では優れたプログラムになっていると自信を持っています。

2〜3カ月といった長い期間にわたって、ワークショップなどの形式で学んでいただきます。AIを使って何ができるか、それを自社のビジネスにどう役立てるか、といったことについて理解を深めていただいています。先ほどお話した、AIについてアプリケーションとインフラの両面でご理解いただけるようなプログラムもご用意しています。

プログラムを利用される方は、AIを使うシステムを内製したい、ベンダーに依頼するにしてもAIについての理解は深めておきたい、AIを使うと世の中のトレンドがどう変わっていくかを理解したい、など様々な考えをお持ちです。プログラムをご利用いただいた企業様から、AIを利用するシステムを発注いただく、というケースも増えています。

もう1つ力を入れていることとして、AI駆動開発があります。2023年から、FPTはベトナムにおいて、開発にAIを取り入れる取り組みを始めています。現在、部門によってはかなりの比率で開発にAIを使っています。設計書からのコード作成だけでなく、要件定義から基本設計や詳細設計を作る際や、テスト用のプログラムを作る際など、いろいろなところにAIを取り入れています。日本の案件でも、開発にAIを活用するケースが増えています。お客様の同意を得られた場合のみAIを使っています。

——今後の展望も教えてください。

今後AIによっていろいろな変化が起こるのは確実です。FPTとしては、その動きを先取りしていくことが必要だと考えています。FPTにはAIに関して高いスキルを身に付けた若いエンジニアが多く在籍しています。その能力を日本のお客様にもご活用いただけるように、しっかりとご案内していきたいと考えています。お話したGPUクラウドやAIエージェントだけでなく、オンプレも含めた様々な対応が可能です。

今はAIをPoC段階でご活用いただいているケースが多いですが、今後本番環境での活用が増えていくはずです。海外の先行事例を見ると、本番環境での運用が長くなると、データやアクセスが増えて問題がいろいろと起きることが分かっています。そういった場合の課題解決をご支援するノウハウも我々は持っています。FPTはAIに関する様々な案件に対応できる経験やスキルを持っていますので、是非ご相談いただけたらと思います。

 

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