2026年4月22日
ソリューション

「ローコード×AIで日本企業の課題を解決する」
ベトナムFPTとOutSystemsが進める新たなDX推進の形とは

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ベトナムのICTリーディングカンパニーであるFPTコーポレーションと、ローコードツール「OutSystems」を開発・提供するOutSystemsは、2019年のパートナーシップ締結以来、長年にわたり日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に貢献してきた。現在、東証株価指数(TOPIX)100の構成企業の多くがOutSystemsを使ってシステムを構築しており、その案件の多くをFPTの日本法人であるFPTジャパンホールディングスが手掛けているという。OutSystemsの魅力や、両者のパートナーシップの強みは何なのか。FPTジャパンホールディングスのド・ヴァン・カック代表取締役社長とOutSystemsジャパンの三重野智博代表取締役社長に聞いた。

——日本企業のDXにおける課題を教えてください。

カック:当社はこれまで20年以上日本でビジネスを展開してきました。近年、日本社会全体で人材が不足しているといわれていますが、ビジネスをしていて、IT業界は特に人材が不足していると感じます。地政学リスクの高まりにより、世界中でIT人材の獲得競争が起きており、IT人材の不足を海外のリソースで補うことも簡単ではなくなっています。そのため「内製力を高めたい」と考える日本企業も増えています。システムの老朽化も大きな課題です。COBOLやJavaを使って構築されたレガシーシステムが、まだ多く運用されています。

レガシーシステムを使っていると維持のためのコストがかさみますし、保守をする際にも多くの時間がかかります。「ビジネスが素早く変化しているにもかかわらず、システムがそれについていけない」といった状態になってしまいます。社内のデータが1カ所にまとまっておらず、散逸していることも問題の1つです。ExcelやAccess、Googleスプレッドシートなどが広く利用されていることでデータが断片化し、データ活用がしにくいと同時にセキュリティーリスクも高いです。

OutSystemsジャパン株式会社 代表取締役社長 三重野 智博 氏
OutSystemsジャパン株式会社
代表取締役社長

三重野 智博

三重野:私もカック社長と同じ認識です。そのような課題が生じている本質的な原因の1つに、CIO(最高情報責任者)の方のDXに対する理解不足があると考えています。長くITベンダーに勤めてきた中で私がお会いしたCIOや情報システム担当役員の方は、経理部門の出身であるケースが多くありました。そこには、「情報システム部門はコストセンターだから、経理部門出身者が長を務め、コストを少しでも下げるべきだ」といった考えがあるのでしょう。

しかし、情報システム部門の役割はDXを進めることであり、本来のDXは「デジタルを使って、これまでにないような新しい業態に挑戦する」ということを意味しています。それを実現するには専門の知識を十分に持った人が情報システム部門を率いなくてはなりません。老朽化したシステムの刷新や、既存業務を効率化したらDXが終わり、ではないのです。「DXとはそもそも何のためのものなのか」ということに立ち返り、経営層が主体的に取り組む必要があると考えています。

技術、人材、組織、文化に
ついての課題を解決する

——両社のパートナーシップの内容と、それが日本企業のDXの課題解決にどう貢献するかを教えてください。

三重野:先ほど話題に上がった課題を改めて整理すると、技術、人材、組織、文化と、大きく4つの分野で課題があると言えます。当社とFPTがタッグを組むことで、こうした課題の解決のお役に立てるのではないかと考え、パートナーシップについては当社からFPTにお声がけする形で実現しました。具体的には、当社のAI(人工知能)搭載のローコードツールと、高度なスキルや様々な業界についての専門知識を持ったFPTの若い人材の組み合わせに、大きな可能性があると考えました。

カック:当社は2019年のパートナーシップ構築以来、OutSystemsのローコードツールを使い、製造業、保険業、物流業、自動車産業など、幅広い業界で日本企業のDXを支援してきました。OutSystemsのローコードツールを使うことで、従来の開発手法と比較して開発時間を50〜60%短縮できるという成果が出ています。

具体例として、保険業界のある事例では、通常18カ月かかるシステムの刷新を、半分以下の期間で終えることができました。新システム稼働後は、大きな問題が起きることなく安定稼働しています。ある製造業の企業では、Lotus Notes上に構築されていたレガシーアプリケーションを、3人の開発者が3カ月という短期間で、新たなプラットフォームに移行することに成功しました。全社員が容易に情報にアクセスできるようになり、保守性も向上しました。自動車業界の企業では、複数に分かれていたシステムを、9カ月で新たな管理プラットフォーム上に統合し、市場への対応力を大幅に向上させました。

——技術、人材、組織、文化に課題があるというお話でしたが、2社の協業によってどの課題が解決しますか。

三重野:まず人材の不足には確実に大きな効果が見込めます。それに加えて、技術、組織、文化も変わります。OutSystemsを使うとアジャイル型で開発する形になるので、新しい技術を使った組織横断のプロジェクトに取り組むことになります。結果として新しい技術を使い、組織体制も変わり、新しい文化も生まれるのです。

左より三重野 智博 氏、ド・ヴァン・カック 氏

FPTにはOutSystemsの
認定エンジニアが
最も多く在籍している

——FPTとOutSystemsのこれまでの関係と、パートナー関係を構築することになった経緯を教えてください。

FPTジャパン 代表取締役社長 兼 FPTソフトウェア シニアエグゼクティブバイスプレジデント ド・ヴァン・カック 氏
FPTジャパン
代表取締役社長 兼
FPTソフトウェア シニアエグゼクティブバイスプレジデント

ド・ヴァン・カック

カック:これまでFPTは、米Microsoftや米Amazon Web Services、米NVIDIAなどたくさんのパートナーと連携してきました。OutSystemsとは2018年にパートナーシップを締結し、2024年にプレミアパートナーとなりました。FPTは2028年までにOutSystemsのデリバリーパートナーとして世界でナンバーワンになることを目指しています。OutSystemsとパートナーシップを築きたいと考えたのは、OutSystemsが世界一のローコードプラットフォームだからです。日本では、TOPIX100の構成企業の多くがOutSystemsを使っています。

OutSystemsはクラウドネイティブのアーキテクチャーを備えており、アプリケーションのクラウド移行にかかる時間とコストを最小限に抑えます。ローコードをAIと組み合わせていることも、開発速度の向上に寄与しています。高度な専門知識を持っていない人であっても、効率的でスケーラブルなアプリケーションを迅速に構築できます。

OutSystemsを使った開発を続けると、「誰が、どういう意図で、何を作ったか」といった履歴が残るようになります。これによってシステムのブラックボックス化を防ぐことができます。システムの中身が分かれば、保守と運用も容易になっていきます。我々は3〜5年後には、OutSystemsで開発したシステムの保守・運用を、FPTのサポートを受けずに自ら担うお客様が増えるのではないかと考えています。

三重野:私は2018年にOutSystemsに入社し、ちょうどその年に顧客企業の方から「FPTと一緒に当社のプロジェクトを担当してくれないか」というご依頼がありました。そこで、ベトナム中部の都市ダナンにあるFPTの拠点に視察に行ったのです。現地では、FPTのすごさに大変驚きました。優秀なエンジニアが数多く在籍しているだけでなく、自ら大学を運営して人材を育て、技術と日本語を教えています。様々な業界の日本企業ともコネクションをお持ちでした。

そんなFPTから我々の製品に対して、「強いコミットメントで取り組む」ということを言っていただきました。我々としてはメリットしかないということで、パートナーシップがスタートしました。元々FPTも独自のローコードツールを開発していたので、その時点で技術力も十分でした。パートナーシップが始まってからも、何かに取り組む際のFPTの動きの速さには毎度驚かされています。恐らくOutSystemsの認定エンジニア数が最も多いのがFPTです。

信頼・実績とAIを使った
先進性を両立させる

——OutSystemsが他社サービスと違うポイントは何でしょうか。

三重野:現在我々のプラットフォームは大きく2つあります。1つはオンプレミス・クラウド環境で使える「OutSystems 11 Enterprise(O11)」という名称で、長く提供してきました。もう一つは「OutSystems Developer Cloud(ODC)」という名称で、2023年4月に国内リリースしたクラウドネイティブなプラットフォームです。OutSystemsは日本で300社超の企業にご利用いただいており、O11は基幹システムでも多くの活用実績があるなど、信頼性の高いものです。ODCは、クラウド環境で利用でき、AI機能が充実していることが特徴で、「欲しいシステムを、素早く簡単に構築したい」といった用途に向きます。元々はODCの信頼性を高め、O11をODCに統合していくという方針だったのですが、2025年に方針を改めました。2つのプラットフォームをサポートし続け、O11でもODCのAI機能の活用を可能にするなど、利便性を高めていきます。「Interoperability(相互運用性)」と呼ぶ形で、1つのプラットフォーム上でO11とODCを並行してご利用いただくこともできるようにしました。

我々が特に強い部分と考えているのがAIに関する機能です。ここ数年で生成AIが盛り上がりましたが、我々は2015年から積極的な投資を続けており、複数の特許を持っていたり、エンジニアが論文を執筆したりしています。この取り組みをベースに、ODCに「Mentor」という名称の生成AI機能や、「Agent Workbench」という名称のAIエージェントの機能を追加しました。Mentorはプロンプトを書くことでアプリケーションが簡単に生成できる機能です。また、Agent Workbenchを使うことで、AIエージェントをワークフローやプロセスの中に容易に取り込むことができます。

——FPTがOutSystemsを使ったプロジェクトに取り組む際の強みと言えるポイントを教えてください。

カック:FPTジャパンホールディングスは2005年に東京で設立しました。現在は日本に5000人以上の従業員がおり、30カ国以上の出身者が集まっています。これに加えて、1万5000人を超える多国籍のオフショア人材が、ベトナムやフィリピン、インドなど様々な国からサポートする体制をとっており、システム開発や保守、移行コンサルティングまで、幅広いサービスを提供しています。また、長く日本でビジネスを展開してきたことで、従業員は日本の文化を深く理解しています。日本語能力についても、日本語能力試験N2以上の資格を持つITエンジニアが多く在籍しています。

三重野社長にもご紹介いただきましたが、人材育成のための教育機関を持っていることもFPTグループの特徴の1つです。小学校から大学まで毎年15万人ほどの学生に、技術や日本語を教育しています。多くの優れたエンジニアが在籍しているという強みを生かし、日本企業の課題解決や日本の社会課題の解決に貢献できると自負しています。

三重野:FPTは、日本国内に日本語を話せる技術者を増やすことに力を入れていますが、それだけでなく、ベトナムなど国外のオフショア拠点のリソースを生かすためのブリッジとなるエンジニアも充実しています。これにより、世界中でITエンジニアが足りないといわれている中でも、OutSystemsを扱うスキルを持ったエンジニアを十分に供給いただける体制が整っています。

もう1点、これも繰り返しお話ししてきましたが、あらゆる業種のプロジェクトを手掛けてきたことによる豊富な業務知識をお持ちです。我々のプラットフォームは製造業でご利用いただくことが多くあるのですが、システムを構築するパートナーが製造業のことを理解していないと、業務改善につながる優れたシステムは作れません。その点でFPTには、圧倒的な業務知識が備わっており、優れた提案をしていただけていると感じます。

あらゆる業種の日本企業の
課題を解決したい

——今後の展開について教えてください。

カック:私たちの使命は、日本企業のDXを支援する最良のパートナーであり続けることです。その実現のため、日本及びグローバルで、ローコードとAIのスキルを持つ人材を数万人規模で育成していきます。これからも日本企業と日本社会の課題解決に貢献していきたいと思います。

三重野:日本のあらゆる業種の企業がDXによる課題解決に取り組んでいます。そういった中で当社のアプローチは「やりたいことをいち早く実現するツールを提供する」というものです。このアプローチを進める上で、AIの必要性がより高まっていくようであれば、さらにAIの機能を拡張していくということが欠かせないと考えています。近い将来、AIの機能をどう拡張していくかというロードマップも披露したいと思います。

2025年に創業者兼CEO(最高経営責任者)のパウロ・ロサドが取締役会長になり、新たなCEOにウッドソン・マーティンが就きました。このタイミングで新たに、「2029年末までに売り上げを3倍にする」という目標が掲げられました。大変高いハードルではありますが、FPTをはじめとしたパートナーの皆様にご協力いただき、この目標の実現を目指していきたいと思います。

左より三重野 智博 氏、ド・ヴァン・カック 氏
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