富士フイルムグループのDXを支えるデジタルプラットフォームはデータ・アプリケーション・インフラ・セキュリティーの要素で構成され、データプラットフォームとして経営情報分析システム「One-Data」がある(図2)。
「グローバルで見ると、M&Aなどで多様なグループ会社を受け入れてきたため、グループ全体で90近い業務システムが動いています。ERPにもいくつかの種類があり、ビジネスの現状把握の観点で課題を抱えていました。ERP統合という解決アプローチもありますが、現場オペレーションへの影響が懸念されました。私たちが選択したのはデータの統合です」と杉本氏は振り返る。
グループ各社のマスターデータ統一などを推進し、現在、クラウド環境のデータベースに、ERPをはじめ各種業務システムから送られるデータが日々蓄積されている。ユーザーは、知りたい情報に即座にアクセスすることができる。
「One-Dataにより、数字に関する事実認識を完全一致させることができ、現場間連携や生産性向上に大きなインパクトがありました」と杉本氏。売り上げや生産、入出荷、在庫などの情報をリアルタイムで可視化・共有することで、キャッシュコンバージョンサイクルの改善など、目に見える効果が生まれているという。
ステージⅠ~Ⅲに対応するデジタルプラットフォームは活用段階にあり、同時に機能拡張も進められている。特に、ステージⅢのビジネスモデルを支える基盤強化は今後の焦点となる。
「ステージⅢでは様々なステークホルダーとの協業によって新たなエコシステムを形成します。個人情報を含め多様なデータがプラットフォームを行き交うだけに、信頼性は必須要件。キーワードは『トラストファースト』です。データの真正性を確保し、改ざんなどの悪意ある行為が介在しないよう、ブロックチェーン技術も活用しています。現在はサプライヤーを中心にご利用いただいていますが、将来的には、様々な業界の企業から共創機会をいただくことで、当社だけでは成し得ない価値提供によって社会課題に貢献していきたいと考えています」と杉本氏は言う。
その歩みの先にあるのは、いわばビジネス活動のデジタルツインの構築である。こうした取り組みを通じて、富士フイルムグループは事業構造と産業構造の変革を目指している。