日本のホンダが提携&出資。資金調達総額は1億200万米ドル
AI(人工知能)開発で用いられる機械学習の手法には「教師あり学習」や「教師なし学習」がある。前者はAIに学ばせる画像データに、人間があらかじめ「自動車」や「人」など判断基準となるラベリングをしておく。これに対し、後者はラベルを付けていない画像データをそのまま学ばせる。AIが共通点などを見つけて仕分けた画像データ群にあとからラベリングするため、人間が膨大なデータを逐一ラベリングする作業が省け、コストや時間を大幅に削減することが可能だ。
Helm.aiは、この教師なし学習に関する独自のAI技術で自動運転分野における領域認識にイノベーションを起こそうと2016年に設立した米スタートアップだ。カリフォルニア州レッドウッドシティに本社を構えており、自動運転向けソフトウエア開発を手掛けている。2020年から資金調達をスタートし、2023年末までの調達総額は1億200万米ドルに達した。市場から高い評価を受けている理由の一つは、教師なし学習ソフトウエアの精度の高さだ。
-

- Helm.ai
CEO(最高経営責任者)兼 共同創業者 - Vladislav Voroninski
- (ブラディスラブ・ボロニンスキ)氏
-
このHelm.aiの独自技術にいち早く注目したのが日本のホンダだ。2019年に「Honda Xcelerator Ventures」を通じてHelm.aiとパートナーシップを開始し、2021年からは資本参加している。Helm.ai CEO 兼 共同創業者のVladislav Voroninski氏は、「特に日本は非常に重要な市場の一つと考えています」と話す。
「当社は2016年から教師なし学習のAIモデルのトレーニング手法に『Deep Teaching』を導入。2018年には、運転シーン内の物体をセマンティックセグメンテーション(ピクセル単位ごとに物体をラベル付けするディープラーニングアルゴリズム)で正確に分類する世界初の『基盤(ファウンデーション)モデル』を開発しました」(Voroninski氏)
Deep Teachingとは、大規模なデータセットを使用し、応用数学とディープラーニングの要素を統合した非常に効率的な教師なし学習モデルである。Voroninski氏は「当社のこの技術は現在、自動車メーカーが先進運転支援システム(ADAS)や自動運転システムを開発する際に使用するソフトウエアの基盤となっています。長期的な目標は、特定の条件下で人が運転に関わらないレベル4の自動運転車両の開発を促進することですが、その達成への最良の方法はADASなどの支援運転から始めることであると考えています。そのため、メーカーとのソフトウエアライセンスビジネスモデルを採用しています」と明かす。
生成AIを用いた新たなツールで現実とのギャップを埋める
自動運転開発をより効率的に前進させるため、同社は2024年にDeep Teaching技術と独自の生成AIモデルのイノベーションを組み合わせ、リアルな運転シーンの動画を生成するモデルを実現させた。直近では、大規模な自動運転ソフトウエアのトレーニングと検証をコスト対比で効果的に実現するための生成AI技術を基にした開発ツールを数多く発表している。
生成AI技術をもとにした開発ツールの例
GenSim-1
実際の走行データを再構築してシミュレートされた運転環境を自由に変更・編集するリシミュレーションツール
VidGen-1
画像や一瞬の動画からリアルな運転シーンの動画を作成するAIビデオモデル
WorldGen-1
複数のセンサーと視点で高度にリアルなアセット生成を行うワールドシミュレーター
| Helm.aiのAIを 基にした開発ツール |
概要 | ユースケース |
|---|---|---|
| GenSim-1 | 現実世界のシナリオを再構築するAIモデルで、開発チーム が現実の走行データからバーチャルの運転シーンを作成・ 修正できるようにする |
|
| VidGen-1 | ある画像からリアルな動画シナリオを生成する生成AIビデオ モデル。人間の想像に頼ることなく、画像や一瞬の動画から無限の運転シナリオを作成できる |
|
| WorldGen-1 | 複数のセンサーモダリティと視点から、高度にリアルな動画とLidarポイントクラウド を生成し、自動運転車および周囲の交通参加者の経路を 予測するAIモデル |
|
こうした自動運転技術の開発と検証を大幅に効率化させるツールは、日本でも本格的な普及期を迎えつつある自動運転の認識システムのスケーラブルなトレーニングおよび検証を可能とし、安全性と効率性の向上に寄与するだろう。
同社は、自動運転や高機能なADASの開発を促進するために、シミュレーションと現実世界のギャップを埋めるAI技術をメーカーに提供することを目指している。
「当社のAI技術は汎用性があり、自動車メーカーのみならず、自動車業界のサプライヤー企業、ロボティクス企業などとも提携が進んでいます。また、建築、鉱業、コンシューマー向けのロボットなど、さまざまな業界での自動化にも応用できます。AIを基にするシミュレーターは、自動運転やロボティクスを超えた幅広い分野で応用され、巨大な市場を生み出すと確信しています」(Voroninski氏)



