それでは、どうすれば効果的な活用ができるようになるのか。生成AIを使える環境だけ用意して、活用は社員の自由な意思に任せた場合、残念ながら導入後の利用率はどんどん低下し、やがてほとんど使われなくなるという。「社内に定着させるには、個々の社員に『活用方法が分かる』『擬似的な成功体験を得る』『業務でトライアル&エラーする』『習慣化する』という行動変容のステップを踏ませることが不可欠です」と安部氏はアドバイスする。
ある企業では、生成AIを導入したにも関わらず、利用を習慣化させた社員がわずか1割にとどまっていた。そこでB&DXの支援を受けて生成AIの活用ノウハウを学習するeラーニングを全社員で受講。その結果、業務に日常的に使う社員が4割に増加した。さらに、会議を開く前に生成AIを使ってアジェンダ案を作成することをルール化したり、成果とは関係なく積極的に活用したことを評価したりすることで行動変容を促したところ、「毎週1回は生成AIを使う」という社員が7割5分にまで増えたという(図2)。
「特に重要なのは実務でのトライアル&エラーです。議事録の作成や単純な翻訳などをさせるだけでは、生成AIを使うスキルが伸びることはありません。“エラー”といっても問いかけに対しておかしな答えが返ってくる程度のことで、業務に重大な支障をきたす恐れもありません。失敗と成功を重ねるうちに社員が業務に即した有用な使い方を自ら見いだし、やがて生成AIを活用することが文化として会社に根づくでしょう。そうなればその企業の価値もおのずと向上するはずです」(安部氏)
DXの必要性が叫ばれて久しいが、大切なのは現状業務をそのままデジタル化することではなく、社員がデジタルを使いこなす能力を高め、業務を変革して新しい価値を生み出すことである。生成AIの活用に組織を挙げて取り組むことは真のDXを遂行することにつながり、結果として人手不足への最良の対応策ともなりそうだ。