いま活況を迎える
データセンタービジネス

経営課題として捉える
「システム運用」とそのビジネス価値

舩越 真樹

株式会社IDホールディングス
代表取締役社長 兼 グループ最高経営責任者

舩越 真樹

提供:IDホールディングス

クラウドやAIなどの先進技術の活用が盛り上がりを見せる昨今、「データセンター」需要が増大し建設ラッシュも続いている。急加速するDXの取り組みによって日々多くのシステムが生み出され、それを支えるインフラであるデータセンターとともにそのビジネス的価値を増しているのが「システム運用」だ。DXは「開発」の側面ばかりが語られがちだが、安定稼働を支える技術は日進月歩で進化を遂げている。こうしたトレンドはユーザー企業にどのような影響をもたらすのか。IDホールディングスの舩越真樹社長に話を聞いた。(聞き手・日経BP総合研究所 エグゼクティブフェロー 望月洋介)

IT企業だけの関心事ではない
データセンタービジネス

望月 近年はグローバルでデータセンターの多極化が進んでおり、日本でも多くの地方自治体がデータセンターの誘致合戦を繰り広げています。また、不動産会社や商社などさまざまな業界の企業がデータセンタービジネスを投資対象と捉え、業種業界を問わずにデータセンター市場の動向が注目されるようになりました。こうした今のトレンドは、データセンターを利用するユーザー企業にとってどんな意味があるとお考えですか。

舩越 私たちは普段、電力会社の発電所がどこにあるのかを気にすることなく電気を使っています。データセンターも同様に社会インフラを支える存在であり、生活の中で意識することはありません。しかしながら、クラウドやAIといった最新デジタル技術を活用してDXの取り組みを推進する企業には、データセンターがどんな仕組みで運営され、どのような恩恵をもたらしているのかを、もっと認知してほしいと思っています。

データセンターでは24時間365日、システムの安定稼働を維持し続けるために厳格な運用が行われています。これまで、ここに日が当たることはあまりありませんでしたが、あらゆる業種業界の企業がデータセンターに注目する今は違います。ユーザー企業にとっても、データセンターやそこで行われているシステム運用に対しての認識を改められる絶好の機会が到来したと考えています。

システム運用は
もっとクリエイティブで
スマートな仕事になる

舩越氏

経営者が知るべき
DXの「落とし穴」とは?

望月 データセンターを利用するユーザー企業からすると、システムがどう運用管理されているかになかなか目が行き届かないのも実情です。昨今ではDXの取り組みでITのユーザー企業がIT企業へと転換する例もありますが、そこで常に語られるのは開発ばかりです。これはDX推進における「落とし穴」であると見ています。

舩越 おっしゃるとおりですね。企業の経営者に正しく認識してほしいのは「システム運用は、単なるコストセンターではない」ということです。例えば、DXによって新たなビジネスモデルを創出したりするには、作ったシステムを止めることなく安定稼働させる存在が不可欠です。これはコストが必要ですが、経営者がこれを正当なコストと見なさなければ、いくらDXを推進して優れたシステムを開発しても成果は得られません。経営者はそれをきちんと理解すべきです。

同じく、企業のDX推進部門も新しいシステムの開発を進めるにあたり、リリースすることに終始してはなりません。万一、開発中にトラブルに見舞われてプロジェクトが遅延しても追加のコスト負担が生じる程度で済みますが、システムの本番運用後にトラブルが発生してシステムが停止したらビジネスが止まってしまうといった大変な事態を招きかねません。システムの設計段階から運用担当を巻き込み、運用のしやすさを前提に開発を進めることが重要です。

望月 開発と運用の部門や担当者の関係性も重要ですよね。

舩越 はい、実際にデジタル化が進む欧米企業では開発と運用の技術者は対等であり、運用担当もプライドを持って働いています。残念ながら日本はそのようになっておらず、企画・設計・開発・運用が縦に並んでいます。私はこうした日本の技術者の立場を是正する必要があると考えています。

VR、AIなどの新技術で
運用はよりクリエイティブな仕事に

望月 IDグループは、さまざまな企業のシステムの安定運用を支え続けてきた豊富な実績があります。これからのシステム運用のあるべき姿をどのようにお考えですか。

舩越 システム運用のあるべき姿は「コストセンターにしない」ことです。運用は本来、非常にクリエイティブな仕事であり、IDグループではお客様の運用に関するニーズの変化を捉えながら、自動化や仮想化などの最新デジタル技術を活用した運用の高度化・効率化に取り組み始めています。その代表的な例が、現在開発を進めている「ID-VROP(バーチャルリアリティオペレーションセンター)」です。これはインターネット空間のメタバース上に構築した仮想的なシステムオペレーションセンターのことです。物理的に離れた複数の拠点からVROPにアクセスし、リアルとバーチャルの融合した新たなコミュニケーション手法を用いながらシステムの監視や運用業務を行うというサービスです。

望月 システム運用にも最先端の技術が活用されているのですね。いま脚光を浴びるAIも期待される領域ではないでしょうか。

舩越 はい、AIを活用して運用の自動化・省力化を進める最新技術の研究開発も積極的に進めています。さらに、セキュリティサービスの品質向上やサイバー攻撃による被害軽減を目的に、ブロックチェーンを利用した通信情報の取得・保管ソリューションに関する特許を取得するなど、新しいセキュリティシステムの実現に向けた取り組みも進めています。また、社会的責任としてカーボンニュートラルに取り組む企業に対し、環境負荷を低減しエネルギー効率を最適化したグリーンデータセンター関連技術を提供しています。

望月 業界全体としても運用に対する機運が高まっているのでしょうか。

舩越 2023年10月には「次世代システム運用コンソーシアム」を立ち上げました。システムそのものはコア業務を支える重要な役目を担っていますが、システム運用はユーザー企業にとってコア業務というわけではなく、企業の垣根を越えて課題や解決策を共有し合える非競争領域です。このコンソーシアムでは現在はデータセンター事業も展開する大手ITベンダー、運用サービス事業者、金融機関や製造業などのユーザー系システムインテグレーターなど15社が参加し、100名以上の運用エンジニアが活動しています。特にユーザー企業の皆さんには、運用の未来に向けてぜひ会員として参加していただきたいと願っています。

望月 運用のあるべき姿を含め、VROPといった最新技術や新たな取り組みを伺うことができました。読者の皆さんに向け、何かメッセージはありますか。

舩越 私が夢に見ているのは「運用の仕事はカッコいい」と認知してもらうことです。また、IDグループはダイバーシティの取り組みも積極的に推進しており、女性の運用技術者も多数在籍しています。運用の職場というと、残業が多く人力頼みというイメージが強いのですが、実際にはチームで動いているので残業時間は短く、とてもスマートな仕事です。この事実を広めていきたいと思います。

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