企業変革の羅針盤 デジタル変革のエキスパート達
日本ビジネスシステムズ株式会社
代表取締役社長
牧田 幸弘

隠れデジタル人材を目覚めさせよ!
経営層が自らプロデュースする
DXの舞台

企業がDXを推進する上で、大きな障壁となっているのが深刻なデジタル人材不足だ。変革の担い手が十分に確保できず、悩んでいる企業も少なくない。日本ビジネスシステムズ(JBS)では、「社内デジタル人材の活用」と「社外リソースの活用」の両面にわたる支援を提供。DXを加速させるには、事業をよく知る社内人材がデジタルを直接活用することが肝要。一方でインフラ/セキュリティーなど専門性の高い分野はJBSが引き受けることでその実現を強力に後押しする。
インタビュアー:
日経BP 総合研究所 フェロー 桔梗原 富夫

DXを阻む様々な課題を
いかにして解消するか

桔梗原 JBSは4月に、本社を虎ノ門ヒルズ ステーションタワーへ移転しました。まずはその狙いについて伺えますか。

牧田 イノベーションを進めていく上では、やはりお客様や社員がリアルに集い、つながる「場」が必要です。そこで最新のクラウドソリューションを体験いただき、活発なコミュニケーションが交わされるようになれば、新たな価値も生まれやすくなります。そう考えて新本社への移転を決めました。当社では、社員食堂の概念を超えたダイニングレストランを運営してきましたが、これも同時に移転して「Lucy’s Tokyo」としてさらに拡張します。社員同士やお客様とのコミュニケーション活性化に期待しています。

桔梗原 対話やつながりの場ということでは、昨年10月に、先進企業各社のCxOの方々を招いて「Executive Forum」を開催されたと聞いています。そこではどのような議論がありましたか。

牧田 今回は各社のDXに携わるエグゼクティブ30名ほどの方々に集まっていただきました。共通する課題としては、まず「データ駆動型経営」の実現が挙げられました。DXの取り組みにおいては、社内データの利活用が重要なポイントとなります。しかし現実には、事業部門ごとにデータがサイロ化してしまっていて相互にアクセスできないケースは多いようです。そのほかに、デジタル活用に対する社員の意識の底上げや、クラウド時代にマッチしたインフラ戦略への転換なども、重要な課題と捉えられていました。

育成/教育と環境整備で
社内デジタル人材は活躍できる

桔梗原 自社の業務革新や新たな顧客サービスの創出を目指す上では、そうした課題を早急に解決していく必要がありそうです。とはいえ、日本においてはデジタル人材が不足しており、DXの大きな障壁になっています。

牧田 多くのお客様が、変革の主導権をしっかりと自社で握った上でDXを進めたいと考えられています。しかし、その一方で、取り組みを推進する人材が足りなくて困っているのもまた事実です。このような状況を変えていくには、「社内デジタル人材の活用」と「社外リソースの活用」の2つの観点で考える必要があります。

桔梗原 「社内デジタル人材の活用」については、牧田社長がその重要性を指摘されている内製化の話にもつながります。実際にどう進めればよいのでしょうか。

牧田 これは機会があるごとに話しているのですが、そもそもデジタル人材は既に社内に存在している、というのが私の持論です。例えば、プログラミング技術を学んだことのない人でも、最新のテクノロジーを使えば、簡単に必要なシステムが作れます。

 もはや「デジタル活用に豊富な経験や知識が必要」という時代ではありません。自社の事業を最もよく知る現場の人たちが、テクノロジーを駆使できるようになれば、いつでもデジタル人材として活躍できるようになるのです。しかし、多くの企業では、そういった人たちを目覚めさせ、育成することができていません。また、会社の環境自体も、それができるようなプラットフォームが整備されていない。このことが最大の問題と言えます。

桔梗原 DXに成功している企業は、そこに気付いて取り組んでいるのですね。

牧田 その通りです。例えば先のExecutive ForumにCIOが登壇された横河電機様では、社内の各事業部門のデータを横断的に活用できる統合データ基盤を構築し、データの民主化を図ると同時に、データシステムのエキスパートではない現場の社員自身が、市民データアナリストとして自由に活用できるようにしました。その結果、社内のデータ利活用が大きく進みました。

 また、セガサミーホールディングス様では、ゲーム/コンテンツ制作に携わるクリエイターが、外部流出を心配することなく安心して使える生成AIサービスを導入しました。もちろん、生成AIが作った制作物をそのまま使えるわけではありませんが、様々なアイデアやヒントが得られるため、クリエイティブ作業の効率が各段に上がったそうです。

桔梗原 自社でも同様の取り組みを行いたいと考える企業も多いと思います。そうした企業に対し、JBSではどのような支援を提供されているのですか。

牧田 お客様のデジタル活用を徹底的に後押しすることが当社のミッションですから、いろいろな支援サービスを用意しています。例えば、「Microsoft Azure OpenAI Service」を用いたアプリケーション「アイプリシティ チャット」などもその1つです。これにより、セキュアな環境下での企業内情報をベースとしたChat GPT活用が実現できます。また、生成AIサービス「Microsoft Copilot」についても、環境整備から使い方に関するコンサルティング、教育、サポートまで含めたトータルな支援を提供しています。特にCopilotについては、当社自身でも全社導入を済ませていますので、その知見に基づいたサービスを提供できます。

 ちなみに、AIを活用するビジネスシーンには、大きく2つがあります。1つは、業種業務横断的に使われるアプリケーションのためのホリゾンタル(水平方向)AI、もう1つは業界特化型のシステムで利用するバーティカル(垂直方向)AIです。ホリゾンタルAIの代表的なものがCopilot for Microsoft 365ですが、実際の業務でAIを活用する際、Microsoftの提供するCopilotだけでは、要件に足りない場合が出てきます。このようにCopilotのカスタマイズを必要とする場合に効果的なのが、ローコード・ノーコードで開発ができる「Copilot Studio」で、業務データや様々なアプリケーションを連携してAIを利用できる環境を整えることが可能です。一方、特定業務に特化した独自の生成AIアプリケーションを開発したいというご要望もあるかと思いますが、それにはAzure AI Studioという機能を利用することが有効です。当社ではこれらを包括的にご支援することが可能ですので、お客様に最適な生成AI利用環境の構築と活用をサポートいたします(図)。

インフラ/セキュリティー分野は
外部リソースの活用が有効

日本ビジネスシステムズ株式会社 代表取締役社長 牧田 幸弘氏
桔梗原 次に「社外リソースの活用」ですが、こちらについてはどのような点がポイントとなりますか。

牧田 まずはインフラ回りの負荷軽減です。デジタル活用を進めていくには、クラウドを含めた最新のテクノロジーが利用できる環境が必要です。自社の事業を支えるものですから、セキュリティーもきちんと担保しなくてはなりません。これをお客様ご自身で構築、維持管理することは大きな負担となっています。最新機能への追随や、24時間365日対応など、社外の専門家に任せ、運用管理負担を軽減することも重要です。

 例えば、業務効率化のためにAIを活用しようと思っても、そのためのインフラが整っていないのではどうにもなりません。ユーザーが利用するPCなども同じで、最新のソフトウエアを高速、かつ安全に動かせる仕様でないと意味がありません。こうした環境整備・維持は地味ですが、大きな負担になっている企業も多いのではないでしょうか。この負担を軽減するお手伝いも当社で行っています。

桔梗原 特にセキュリティーに関しては、ユーザー企業だけで対応するのは厳しそうです。

牧田 クラウドの普及が進んだことで、これまでのような境界型セキュリティー対策では重要な情報資産を守れなくなりました。社内だけでなく、リモートやモバイルからもクラウド上のシステムにアクセスしてくる時代ですから、これに対応できるセキュリティーが求められます。そこで当社でも、クラウド対応のSOC(Security Operation Center)サービスを始めました。お客様自身で脅威の検知や対応を行うのは、技術的な面でも時間的な要件面でもかなりハードルが高い。こうした分野については、やはり外部のサービスをご利用いただくのがベストだと考えます。

桔梗原 グローバル展開を進めている日本企業への支援にも注力されているそうですね。

牧田 製造業をはじめとした日本の大手企業は、海外ビジネスの比率が高くなっています。そこでのデジタル活用を推進するには、国内と同じような支援が欠かせません。これまでも、当社の海外拠点があるところではサポートを行っていましたが、このたびグローバルサービスで定評のあるCrayon社との戦略的業務提携を行いました。同社は、マイクロソフト社のパートナー企業の中でも、世界TOP10に入る企業です。これにより、マイクロソフト製品の調達およびサービスをグローバルで一本化したいといったニーズにも応えられるようになりました。

経営トップの変革マインドが
DXを成功に導く重要な鍵

桔梗原 AIやデジタル技術が当たり前のように活用されるようになると、CIOやIT部門の役割も大きく変わっていきそうです。

牧田 これまでは、CIO傘下のIT部門の人たちがデジタル人材だと思われてきました。しかし先に触れた通り、これからは事業を知る現場の人たちがデジタル活用の最前線に立つ必要があります。もっとも、こうした人たちはあくまでもテクノロジーの使い手であり、そのための環境整備やプラットフォーム作りまでできるわけではありません。この領域を担うことで、全社のDXを加速させるのが、今後のIT部門の役割になるでしょう。

 また、組織横断で変革を進めようというときには、CIOのポジションが極めて重要になります。例えば多くの企業において、レガシーシステムの維持運用にかかる負担が変革の妨げとなっています。これを最適化する決断ができるのは、全社のシステム利用状況が見えているCIOしかありません。CIOの方々は、過去の経緯や既存の価値観にとらわれることなく変革をリードしていってほしいと思います。もちろん、経営トップがこれを後押しすることは大前提です。
デジタル人材は既に社内に存在している
彼らを目覚めさせていないのは経営者の責任
日本ビジネスシステムズ株式会社 代表取締役社長 牧田 幸弘氏
桔梗原 IMD世界競争力センターでは、毎年デジタル競争力の国際ランキングを発表しています。ここで日本は先進諸国の後塵を拝し続けていますが、その大きな理由の1つが、経営者の変革マインドにあるそうです。「失われた30年」から脱却するためにも、経営者が変わらないといけませんね。

牧田 これまで日本はDXで立ち遅れていると言われてきました。しかし、この状況を変える芽は出てきています。例えばMicrosoft Copilotにしても、導入熱が今一番高いのは日本だという話もあります。感覚的にも、変革マインドに富んだ経営トップが増えてきたように思います。既にあなたの会社には多くのデジタル人材が存在していることを経営層は認識するべきです。彼らをビジネスシーンで活躍できるよう、目覚めさせていないのは経営者の責任と言えるかもしれません。

 ぜひ社内のデジタル人材をフル活用して事業や会社を変えていただきたい。当社もそれをしっかりと支援させていただきます。