世界を夢中にする100年企業を目指して クラシエが挑戦する「CRAZY」な未来

2017年に新ビジョン「CRAZY KRACIE(クレイジークラシエ)」を発表し、話題を呼んだクラシエ。その後も斬新な発想とさまざまな取り組みにより、新しい価値を発信し続けている。CRAZYな試みの1つとして、24年11月には女性向けファッション・ライフスタイル誌『VERY』とタッグを組んだ「Kracie BOOK」も刊行。同社がビジョンやブックに込めた思い、目指す未来について、クラシエ代表取締役 社長執行役員の岩倉昌弘氏と、取締役 専務執行役員の草柳徹哉氏、「Kracie BOOK」を監修した光文社執行役員の今尾朝子氏に聞いた。

「CRAZY KRACIE」のビジョン策定から7年
これまでの取り組みと成果を振り返って

── カネボウからクラシエに社名変更されて10年目の17年、新たなビジョンとして「CRAZY KRACIE」を掲げられました。その意図と背景を教えてください。

岩倉 「CRAZY KRACIE」は、クラシエのビジョンとしては三代目になります。一代目のときは「復活」に向けたビジョンを掲げていましたが、二代目を経て10年経ってそれは成し得たので、もう変えるべきだろうと。そこで、次なる未来に挑戦する意志を込めて、「CRAZY KRACIE」を策定しました。

岩倉 昌弘 氏
クラシエ 代表取締役 社長執行役員

今尾 CRAZYは、今の時代にとても刺さる言葉。それを7年前に採用されたことに、先進性を感じます。

今尾 朝子 氏
光文社 執行役員第一編集局長

岩倉 CRAZYと聞くと、狂気を連想する方もおられますが、想像を絶するような光景を目の当たりにしたときも使われる言葉ですし、「夢中になる」という意味もあります。クラシエのモノづくりやサービスで、世の中を驚かせ、もっとみんなを夢中にしていきたいという思いが、「CRAZY KRACIE」には内包されているんです。

── 発表された当初、社内ではどんな反応がありましたか。

草柳 当時、私が勤めていた薬品事業部門では、製薬会社として求められる「安心・安全」とは対極の感がある「CRAZY」というワードに、私を含めて戸惑いを覚えた社員が多かったのも事実です。でも、きちんとひも解いていけば、このビジョンの真意が伝わるはず。そう考えて、まずはクラシエグループの経営陣から、一人ひとりのCRAZYを明文化し、全社員に共有する取り組みを始めました。

草柳 徹哉 氏
クラシエ 取締役 専務執行役員 薬品カンパニープレジデント

岩倉 安心とは真逆のCRAZYを選んだのは、復活を遂げて「普通の会社」になったクラシエの現状に安住してほしくなかったからです。ただ、それをトップが言うだけでは全社に浸透しないので、社長直轄組織として「CRAZY創造部」を設置し、情報発信やコミュニティづくりに努めています。

── 具体的な取り組み内容について教えてください。

岩倉 毎年の事業方針説明会では、3カ月かけて全事業場を回るのですが、その際に会社の方針や私自身の考えを伝えるとともに、「CRAZY創造部」の報告も行っています。また、新入社員が入社するタイミングでは、「CRAZY KRACIE」を掲げた理由や前年の振り返りを記した「手紙」も全社員に配付しています。これはビジョン策定の初年度から続けているので、もう7通書いたことになりますね。

草柳 メーカーである当社には、営業だけでなく、生産技術や研究・開発などさまざまな部門があります。その職種によってCRAZYの意味合いも異なりますし、それを自分ゴト化するまでのハードルもそれぞれに違います。だから、ロールモデルとなる人や取り組みをいろんな場面で見せていくことが大事だと思っています。

岩倉 これを具現化する取り組みとして、まだ成果にはいたっていないが挑戦している人もしっかり応援したいということで「NICE! CRAZY賞」を設けました。CRAZYなことに挑戦している人を各部署の上長から推薦してもらい事業部門の代表を決め、最後、社員の投票で大賞を決めるというものです。ここでいうCRAZYは、突拍子もないことばかりではありません。工場で匠の技を磨くこともCRAZYですし、研究に没頭することも、モノづくりにこだわることもまたCRAZY。どんな仕事にもCRAZYの種はあります。

── ビジョン策定から7年経って、成果の手応えは感じていますか。

岩倉 現在、率先してアクションを起こすCRAZY社員は2割程度。まだまだ先は長いですが、成果は着実に現れています。お取引先の方々からも、「クラシエの社員さんは、CRAZYという言葉をよく口にする」と聞かされ、驚くと同時にとてもうれしく感じています。

草柳 私は昨年から全国を回り、約300名の薬品部門の社員と1対1で対話する機会を設けているのですが、そこで聞く個人の掲げる目標も、過去にないチャレンジで前向きなものが多いと感じていてビジョンが少しずつ浸透してきたことを実感しています。今後もさまざまな取り組みを通じて、「CRAZY KRACIE」を社員一人ひとりのものにしていきたいと思います。

VERY監修の「Kracie BOOK」を制作
編集部が見たクラシエの素顔とは?

── 取り組みの1つとして、24年11月には「Kracie BOOK」を発行されています。

岩倉 これも、「CRAZY創造部」の提案からスタートした企画です。単なる企業パンフレットではなく、社員目線からクラシエの本質に迫るブランドブックを作ろうと考えました。当社には、外部の方や企業と共創し、改革に挑戦する「Kracie MiX」というカルチャーがあり、それをみなさんと共有するためのオウンドメディア「mix juice」を発信しています。「Kracie BOOK」の制作にあたっては、本メディアで一度対談させていただいた、「VERY」統括編集長(現在は光文社執行役員第一編集局長)の今尾さんに協力を仰ぎました。

今尾 お話をいただいたときは、びっくりしました。「本当に私たちでいいんですか?」と。でも、岩倉社長と対談させていただいた際に、クラシエさんが徹底して生活者視点を大事にされているところと、我々がママの日常に寄り添いたいと日々編集作業をする視点に共通する部分を感じて、喜んで制作に参加させていただきました。VERY編集部にとっても新しい挑戦となりましたね。

── 制作にあたっては、何を重視されましたか。

今尾  「CRAZY KRACIE」を掲げるみなさんが、変化を恐れず挑戦し続けている姿と、生活者としての一面もご紹介したいと考えました。取材では、仕事の面だけではなくプライベートで大切にしていることまで、読者調査のようにインタビューさせていただき、個人としての秘めた熱い思いをうかがうことができました。そんなCRAZYでカッコイイみなさんの素顔を、VERYらしく表現したつもりです。

草柳 まず表紙のインパクトには驚かされましたね。VERYらしさとクラシエらしさがMiXしている第一印象を受けました。

草柳氏が表紙のインパクトに驚かされたと話す「Kracie BOOK」

── クラシエの社員や現場を取材して、感じたことをお聞かせください。

今尾 お一人おひとりがそれぞれの持ち場でモノづくりに打ち込む姿勢に、プロフェッショナルの凄みを感じました。それは直接製造にかかわる方々だけでなく、サポート部門も含めたすべてのみなさんから感じたことです。例えば、お客様相談センターでは、チャットが全盛の今でも電話対応で日々お客様と向き合い、悩みを丁寧に汲み取ってモノづくりに生かそうとされている。クラシエさんがお客様を、そして人を大切にする企業であることが伝わってきました。

草柳 クラシエというメーカーが作る「モノ」ではなく、それを生み出す「人」に着目してもらえたのは、ありがたかったですね。企業の本質は人の営みの中にこそあると、私たちも考えていましたから。

岩倉 クラシエの強みは、なんといっても「人」です。私や経営層だけでなく、社員に聞いてもみんなそう答えます。じゃあ、クラシエの人の強みはどこにあるのか。「Kracie BOOK」で、ようやくその答えが解明できたのではないかと考えています。

── 「Kracie BOOK」で伝えたいこと、その先に実現したいことを教えてください。

今尾 「Kracie BOOK」では、環境に対するクラシエさんの取り組みもご紹介しています。なかには業界に先駆けたアクションも数多くあり、その1つひとつに「自分たちから世の中を変えていこう」という思いが詰まっています。私たちも、いち生活者として、クラシエさんと一緒によりよい未来を描いていきたい。読んだ方がそんな気持ちになってくれたらうれしいですね。

岩倉 「Kracie BOOK」は、私たちの素顔をありのままに出した「ザ・クラシエ」ともいえる一冊に仕上がりました。これを読んで、ぜひ当社のことをもっと知っていただきたいと思います。そして、もし共感を持っていただけたら、私たちとMiXして共にCRAZYな挑戦をしていきましょう。

今尾 私たちがクラシエさんのことを知れば知るほど大好きになっていったように、「Kracie BOOK」を通じて、もっと多くのファンが増えることを願っています。

改革を続けながらも志は変わらない
100年先も人を想い、世界を夢中にしていく

── 23年10月には、ホームプロダクツ・製薬・フーズの3事業会社を経営統合されるなど、ここでも革新的な挑戦をされています。

岩倉 それまでは3つの事業会社がそれぞれに特徴あるビジネスで成長し、バランスよく経営をしていたものの、各社のシナジー効果が十分に得られていないことが課題でした。そこで、3事業の相乗効果で本来の価値を発揮し、お客様の期待に応える多彩な商品やサービスを創出し続けていくために統合を決断。社名もクラシエホールディングスから、クラシエに変更しました。会社が1つになったことで、事業の壁を越えた社内MiXが進み、チャレンジしやすい企業に生まれ変わったと考えています。

── クラシエでは、「夢中になれる明日」をスローガンに掲げ、「世界を夢中にする100年企業を目指す」ことを宣言しています。

岩倉 「世界を夢中にする100年企業」というのは、私が社長になった当時から言い続けていることです。経営破綻したカネボウの教訓から、もっと世界を見よう、1年先ではなく100年先を見据えて行動しようと考え、これを宣言しました。ここから生まれた「夢中になれる明日」というスローガンは、世の中にたくさんの夢中を増やしていきたいという「CRAZY KRACIE」のビジョンにも通じています。

草柳 夢中になるというのは、ウェルビーイングな経営や生き方にもつながること。私たちの商品やサービスを通じてお客様の心身の健康を応援するだけでなく、みなさんが夢中になれる「場づくり」にもこれからもどんどん応援していけると夢が広がるように思います。昨年、女子プロサッカーリーグの「WEリーグ」とパートナー契約したのも、「夢中になれる明日」の実現に向けたチャレンジの一例です。

── 今後の展望について教えてください。

草柳 挑戦し、変化し続けることは、企業にとって永遠のテーマです。私たちが目指すのは、それがクラシエの当たり前になっていくこと。時間はかかると思いますが、「CRAZY KRACIE」のビジョンのもと、諦めることなく愚直に取り組んでいきたいと思います。

岩倉 私たちには、「人を想いつづける」というクラシエ創立以来の基本理念があります。これは100年経っても理念の根源としての考え方は変わらないものだと信じています。逆にビジョンは変わってもいい。ビジョンは、ありたい姿を表すものだからです。私たちが新たなビジョンを掲げるとき、それは「CRAZY KRACIE」を達成できたという証。その未来に向けて、クラシエは挑戦を続けてまいります。

(※2024年9月末に取材実施)