住友商事の英断

Copilot for Microsoft 365 は
「使わない人にこそ使ってもらう」
グローバル全社導入の真の狙いとは

Copilot for Microsoft 365 は、全従業員が使うことで効果が最大化する。日常業務で利用する Microsoft 365 に組み込まれているという特性があるからだ。しかし、導入範囲の判断や、投資に対する効果の算出が難しい。Office アプリは業務内容によって利用するツールや利用頻度が異なる。グローバル全社導入に向けて、住友商事において決め手となったのは、「全従業員が Copilot for Microsoft 365 を使いこなし、生産性や創造性を高めていく」という経営層の強い思いだ。プロジェクトを牽引するキーパーソンと現場担当者に、トップが求めた「使わない人にこそ使ってもらう」という真意と、1年で定着化を目指す活動について聞く。

一人ひとりの収益力向上を目指し
Copilot for Microsoft 365 に注目

住友商事
理事 DX・ITグループ長補佐 デジタル戦略推進部長
塩谷 渉 氏

「信用・確実」「浮利(目先の利益)を追わず」「公利公益」に重きを置き、「進取の精神」で時代の変化を先取りしていく。「住友の事業精神」は今も変わらない。400年にわたって脈々と受け継がれてきたDNAを持つ住友商事は、時代の転換点でさらなる飛躍を目指す。

住友商事
理事 DX・ITグループ長補佐 デジタル戦略推進部長
塩谷 渉 氏

同社は、前中期経営計画SHIFT 2023のもとで構造改革を断行し、新たな成長ステージへと昇華できる環境を作り上げた。そして、中期経営計画2026で掲げたテーマが、競争優位のある事業が集まる「No.1事業群」の実現だ。

「No.1事業群の実現に向けて2つの観点から生成AIの活用に取り組んでいます。1つ目が『デジタルで磨き、デジタルで稼ぐ』です。住友商事には、事業戦略単位で44のSBU(ストラテジック・ビジネス・ユニット)があります。強みを生かし、さらなる成長を遂げるためには、生成AIを活用して事業を磨き、生産性や収益力の向上を図ること、さらにデジタルを活用した事業変革、事業創造にも取り組んでいきます。2つ目が経営の高度化です。経験や勘に頼るのではなく、生成AIによりデータに基づく意思決定を支援します」と、デジタル戦略推進部長の塩谷氏は話す。

2023年5月に、住友商事グループでの生成AIの実装を支援するCoE(センター・オブ・エクセレンス)として社内に「SC-Ai Hub(スカイハブ)」を設立。IT企画推進部、法務部、グループ会社のDX技術専門家集団「Insight Edge」、システムインテグレーター「SCSK」にまたがる組織だ。特定用途に特化したバーティカル(垂直)と、全社員が日常業務で利用するホリゾンタル(水平)の2つのアプローチで生成AIの活用を進めている。

住友商事における生成AIへの取り組み体制

生成AIの実装を支援するために、充実した体制を整えている

ホリゾンタルの観点で注目したのが Copilot for Microsoft 365 だ。その理由について塩谷氏は説明する。「さらなる高みを目指す原動力となる、従業員一人ひとりのモチベーション向上や能力の最大化をいかに図るか。ルーティンワークや、ビジネスに直結しない内向きの仕事は、従業員のエンゲージメントの低下を招く要因となります。Copilot for Microsoft 365 を活用して単純な作業から従業員を解放し、創造的な仕事と向き合う時間を創出するとともに、従業員の能力を引き出していく。従業員一人ひとりに焦点を当てて生成AIを活用できる点に大きな関心を持ちました」。

Copilot for Microsoft 365 の実態を掴むべく、2023年9月に同社は先行検証プログラムEAP(Early Access Program)に参加。EAPで提供を受けた300ライセンスは、海外ヘッドクォーターに100ライセンス、残りの200ライセンスは経営層、IT投資の意思決定を行うIT戦略委員会、ローコード開発ツール Microsoft Power Platform の社内コミュニティ、IT企画推進部などを対象に配布した。

「使わない人にこそ使ってもらう」ことが重要

住友商事
IT企画推進部 インフラシステム第二チーム ラインリーダー
伊庭 甫 氏

経営層の理解をいかに得るか。経営会議で Copilot for Microsoft 365 の説明を行ったという。検証段階のITツールの紹介は異例だ。会長以下約30人に対し1人ずつ30分間、実際に触ってもらうハンズオンも実施。塩谷氏は、「こういうものを使って私たちの会社をどうしていくか。経営層自身が体験し、自らメリットを感じてもらうことが必要でした」と話す。ハンズオンでは、「出張して長い時間飛行機に乗っている間に溜まったメールの内容を、Copilot for Microsoft 365 が要約してくれる」など、経営層の業務に合わせたシナリオを作成。多忙で、なおかつ多くの情報を扱う経営層にとって要約機能のメリットは実感を伴うものだった。

住友商事
IT企画推進部 インフラシステム第二チーム ラインリーダー
伊庭 甫 氏

EAPでライセンス配布を受けたユーザーに対し、実際に使った感想を調査するアンケートを実施した。その結果、「満足」との回答が7割を占めたことについて、IT企画推進部の伊庭氏は説明する。「分からないことや、資料の格納場所など、従来はメンバーに聞いていたものを、Copilot に指示することで必要な情報を入手しています。また定例の会議は部下に任せ、可能な限り出席せず、Copilot in Teams のRecap機能等でキャッチアップしています。スピード感や、ストレスフリーの利便性、情報の検索性の向上により満足度が高まったと考えています」。

2023年11月、マイクロソフトが主催する開発者やITプロフェッショナル向けの年次イベント「Microsoft Ignite」に参加し、Copilot for Microsoft 365 に対する考え方が変わったと、IT企画推進部の浅田氏は振り返る。

住友商事
IT企画推進部 インフラシステム第二チーム
浅田 和明 氏

「マイクロソフトのプレゼンテーションの中で、Copilot for Microsoft 365 に対する投資の規模、意気込み、パートナー連携による今後の広がりなどの説明を聞いてポテンシャルの高さを改めて認識しました。できることがどんどん増えていく中で、今の機能だけを評価しても意味がない。Copilot for Microsoft 365 をインターフェースとして、業務変革が起きると感じました」

住友商事
IT企画推進部 インフラシステム第二チーム
浅田 和明 氏

経営層の理解、アンケート結果、Microsoft Ignite の情報などから、同社は Copilot for Microsoft 365 の全社導入を前向きに判断した。課題となったのは、ライセンス数をどう増やしていくか。日常業務で使う Microsoft 365 アプリに組み込まれているため、職種を配布選別の要素にはできない。また通常のIT投資で行う、導入前の効果算出も難しい。Office アプリは業務内容によって利用するツールや利用頻度が異なるからだ。「使いたい人に焦点を当て、実際に効果が見えたら導入を拡大していくという考え方もありました」と塩谷氏は明かす。しかし、経営層とのディスカッションの中で全く異なることを言われたという。

「使わないという理由でライセンスを与えないというのは違う。そういう人たちにこそ、自身の生産性や創造性を高めるために使ってもらわなければならない。全員が Copilot for Microsoft 365 を使いこなし、飛躍的かつ持続的に成長する会社になる。目先の効果ではなく、目指す企業像を実現するために Copilot for Microsoft 365 は必要だというのが経営層の強い思いでした」(塩谷氏)

全従業員を巻き込むために
ムーブメントを醸成

2024年4月、住友商事は同社と海外ヘッドクォーターの全従業員・派遣スタッフに向けて8800ライセンスを配布。「使わない人にこそ、使ってもらうべき」という考えのもと、社内導入を担当するIT企画推進部の奮闘が始まった。1年間で一気に定着まで持っていくために、次々と施策を打ち出している。

最初に取り組んだのは、全従業員を巻き込むムーブメントを起こすことだ。「多くの社員が利用する社内食堂に Copilot for Microsoft 365 の動画を流し、オフィスにポスターを貼るなど機運を盛り上げる雰囲気づくりに力を入れました。メルマガも配信し、マイクロソフトの支援のもとセミナーも開催しています。そこで訴えているメッセージは、『Copilot for Microsoft 365 は、電話やPC、メールのように、オフィスワーカーが当たり前に利用するインフラとなる。いち早く取り組んで先行者利益を享受しよう』です」(浅田氏)。

社内食堂で動画を流したりオフィスにポスターを貼るなど、自然な形で
Copilot for Microsoft 365 に興味を持ってもらえるように、工夫を凝らしている

住友商事
IT企画推進部 基幹システム統括第二チーム 非財務データ活用ライン
荻野 雄輔 氏

定着・活用促進のためには、メリットを実感することが重要なポイントとなる。ハードルとなるのは、Copilot for Microsoft 365 に対するプロンプト(指示文)だ。その内容によってアウトプットが大きく変わるため、求めているものを得られずに諦めてしまうケースも生じる。そこで、プロンプトのテンプレートを作成し全社に展開した。展開する仕組みを作ったのは、IT企画推進部の荻野氏だ。

「ユースケースごとにテンプレートがあります。画面上で、すでに作成されているプロンプトをコピーして貼り付けるだけで結果が出てきます。日常業務で役立つユースケースの積み重ねにより、使う習慣を身につけてもらいたいというのが狙いです。実は、テンプレート共有アプリを開発したのも Copilot です。私は『こういうことがしたいから、コードを出してください』と Copilot に指示し、その結果を判断して修正を加えただけです」(荻野氏)

プロンプトのテンプレート

テンプレートを使うことで、誰でも求めている回答を得ることができる

各SBUで普及活動を担う
アンバサダーを配置

Copilot for Microsoft 365 は実務をサポートする。事業ごとにメリットを実感するシーンが異なるため、定着に向けたアプローチも事業の数だけ必要になる。重要な施策となるのが、各SBUで普及活動を担うアンバサダーの配置・活用だ。事業に精通し Copilot for Microsoft 365 を使いこなすアンバサダーが、身近な相談相手として存在することは各SBUへの浸透を促進する。

現状把握と、より効果的な施策を打ち出すために、定量的・定性的効果の測定も行っていくという。Copilot for Microsoft 365 を利用している従業員8800人に対してアンケートを実施し、使い方や使い勝手など率直な意見を収集。また、従業員の働き方を可視化できる「Microsoft Viva Insights」を活用し、Web会議数やオフィスアプリの利用時間の削減といった定量的効果も測定する。「Copilot for Microsoft 365 導入の意義は、業務効率化により創出した時間を、お客様との会話など本来業務に当てることにあります。また検索や要約だけでなく、アイデアの『壁打ち』の相手になってくれるなど創造性向上の意義も大きい。KPI(重要業績評価指標)や評価項目の設定はこれからです」(伊庭氏)。

Copilot for Microsoft 365 を最大限に活用するために、社内システムのあり方を見直す必要もあると浅田氏は指摘する。「今は、既存業務プロセスの中で生じた情報は、それぞれが所管する場所で保管されています。データ格納先を SharePoint や OneDrive に一元化することで、データ活用の幅が広がり、ユーザーの使い勝手や満足度がさらに向上します」。

「使わない人に、使ってもらう」という難題への挑戦では、マイクロソフトの親身なサポートが心強かったと浅田氏は話す。「検討から実際の導入、定着活動、効果測定まで、きめ細やかにサポートしてもらっています。情報提供だけでなく、それぞれのプロセスにおける課題に対して相談するとすぐに回答を返してくれるので、速やかなアクションにつながっています」。

今後について塩谷氏は話す。「住友商事では Copilot for Microsoft 365 を全従業員で使うことを意思決定して取り組んでいるので、今後もマイクロソフトには協力をお願いしたい。また住友商事で得た成功モデルを生かし、グループ会社への展開も検討テーマになると考えています」。

住友商事のコーポレートメッセージは「Enriching lives and the world」。「世界を、社会を、人々の暮らしを、より豊かにする」という誓いが込められている。Copilot for Microsoft 365 は、コーポレートメッセージを体現する従業員一人ひとりのCopilot(副操縦士)として共に歩み続ける。

日本マイクロソフト

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