アナログな輸送手続からの脱却で業務効率を向上
国土交通省が提供する
国際物流プラットフォームとは

株式会社IDホールディングス 代表取締役社長 グループ最高経営責任者 舩越 真樹氏
国土交通省 港湾局長
稲田 雅裕
日本の生活や企業の経済活動を根底から支えているコンテナ物流。しかしその輸送手続の多くが依然として紙や電話を主体に行われ、荷主や物流会社の業務生産性を阻害する要因となっている。課題解消に向け、国土交通省はコンテナ物流データプラットフォームを開発。物流にかかわる民間事業者に広く開放している。手続の電子化は、コンテナ物流の起点となる荷主にどのようなメリットをもたらすか。国土交通省 港湾局長の稲田 雅裕氏に話を聞いた。

手続のデジタル化による
情報連携の実現が喫緊の課題

 海に囲まれた日本では、国際物流の大半が港湾を経由する。その物流に欠かせないのがコンテナだ。その貨物量は経済成長率を上回る伸びを続けているが、物流手続の多くがいまだに紙・電話・FAXなどアナログな手段で行われている。コンテナ物流には、貨物の輸送を依頼する荷主、輸送手段を手配するフォワーダー、倉庫会社、陸/海運会社、通関事業者をはじめとする多種多様な関係者が介在する。そこで行われる手続がアナログなままでは、業務効率の向上は望めない。

 「トラックドライバーの時間外労働規制による輸送能力の低下が懸念される“2024年問題”がクローズアップされていますが、この問題を解消するためにも貨物量の多いコンテナ物流のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を加速させることが不可欠だと考えています」と話すのは、国土交通省港湾局長の稲田 雅裕氏だ。

 近年は船舶の大型化に伴い、1回の寄港で積卸しするコンテナ数が増加し、コンテナ搬出入トレーラーの到着が特定の時間帯に集中。ターミナルゲート前の混雑を招く要因となっている。国土交通省ではこうした状況に対応するべく、ターミナルの運用を最適化する「ヒトを支援するAI ターミナル」や、コンテナターミナル前のトレーラーの渋滞を防止する「CONPAS(Container Fast Pass)」などの画期的な仕組みを導入してきた。

 「港湾関連業務の効率化をさらに進めるには、民間事業者による手続を電子化して共通のデータ基盤で共有することも必要です。そこで『港湾の電子化推進委員会』を立ち上げ、荷主、船社、港湾物流関係団体などの意見を採り入れながら、コンテナ物流手続のデータプラットフォームである『サイバーポート』を構築したのです」(稲田氏)

 国土交通省が提供するサイバーポートは2021年4月に運用が開始され、登録企業は2023年12月時点で約600社。利便性が認知されるにつれ、ユーザー数は急速な勢いで増加しているという。

書類作成などに要する時間を
最大で6割削減可能に

 サイバーポートが目指すのは「アナログ・個別最適な手続」を脱却し、「デジタル・全体最適な手続」を実現すること。貨物を輸出入する荷主が紙書類で手続を行えば、物流会社や通関会社などはその内容を自社のシステムに入力する手間を強いられる。また、荷主側も貨物の状況を確認する際は電話・FAX・メールによる問い合わせがなされ、やり取りが煩雑なうえに情報をタイムリーに得ることは難しい。

 「サイバーポートを活用して、荷主が登録したデータをすべての関係先が一気通貫で共有するようになれば、内容の再入力やそこで発生しがちだった入力ミスを防止できます。また、荷主は関係先に問い合わせることなく、手配した貨物の状況をシステム上でいつでもすぐに確認できます」と稲田氏は語る。

 サイバーポートを通じて、荷主は船積依頼やインボイスなどを物流会社へ共有することができ、対応船社のブッキング情報などが自動で蓄積される。

 これまでに行われた実証実験では、コンテナ物流手続が電子化されたことで、書類の作成・送信、データの取得・再入力、問い合わせ等に要する時間が最大60%ほど削減されたという。併せて、電子帳簿保存法に基づく電子取引のデータ保存完全義務化の流れに沿うことも、メリットの1つといえるだろう。

 物流手続をデジタル化するプラットフォームは民間企業も提供しているが、なぜ国土交通省がサイバーポートの開発と運用に乗り出したのだろうか。稲田氏は次のように説明する。

 「コンテナ物流には多数のプレイヤーがかかわり、プレイヤー間に複雑なルールや慣習が定着しています。そのことが業界全体のDXを遅らせる一因ともなっていたことから、国が規格を標準化したプラットフォームを提供し、荷主が手続を電子化しやすくすることに大きな意義があると考えています。加えて、NACCSや民間プラットフォームとの連携を進め、一気通貫でのデジタル化を実現します」

 コンテナ物流にかかわるあらゆる関係者やシステムが安心して参加できるプラットフォームをつくる――。これが国土交通省の描くサイバーポートのイメージだ。
サイバーポートの活用で変わる物流手続
荷主を起点に関係者間で次々に派生するコンテナ物流データが一元管理されることで、各事業者の業務生産性が向上し、トレーサビリティも確立する

2025年度までは無料で提供し
きめ細かい導入サポートも実施

 サイバーポートの利用法は2通りある。現状、物流手続に関するシステムを所有していなければ、クラウド上のサイバーポートを利用すればよい。逆に物流管理システムなどを既に運用している場合はAPI連携でサイバーポートとつなげば、入力する手続データを自動的にサイバーポートに取り込ませることができる。

 物流データには秘匿すべき内容も少なくないが、情報漏えいなどの危険性はないのだろうか。稲田氏によれば、登録されたデータは関係者で構築される閉じたネットワーク内でしか閲覧できないことに加え、例えば荷主が輸出を依頼したフォワーダーが陸運会社に輸送を任せる場合に貨物の金額を開示しないよう自動制御する特許技術が組み込まれるなど、情報セキュリティーにも十分な対策を施しているという。

 気になるのは利用料だが、2025年度までは導入促進期間として無料で提供され、2026年度より月額6600円で有料化される。事業所数やアカウント数にかかわらず1社あたりの定額料金であることを考えるとかなり低廉で、使えば使うほどコストパフォーマンスを高められそうだ。

 国土交通省は現在、各社の業務フローに合わせた運用設計などの導入サポートも無料で行い、利用企業の裾野をいっそう広げようとしている。その先に見据えているのは、サイバーポートに蓄えられる多様なデータの活用だ。

 「ビッグデータを分析すれば、港湾施設の拡充や運用の効率化などの政策に資することができます。また、入港船舶、海上出入貨物、コンテナ個数などの港湾統計をまとめるには一定の時間を要しますが、サイバーポートが収集したデータから速報値を出せば、貿易関連企業のビジネス戦略立案にも寄与できると思います」(稲田氏)

 今後サイバーポートがこうした用途にも活用できるようになれば、日本の物流DXに弾みがつき、国際競争力の強化にもつながるだろう。
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国土交通省 URL:https://www.cyber-port.net/