データを分析して顧客体験向上につなぐ カギを握るコンタクトセンターの仕組みと、実現方法は

ビジネス競争力の強化や顧客から支持される企業づくりに向けて、重要なのが顧客体験(CX)の向上だ。一方、日本企業はこの領域の取り組みで世界に後れを取っている。その要因はどこにあるのか。また、現状を脱却し、高度な顧客対応とデータに基づく改善サイクルを実現するためのアプローチは。求められる組織体制やITシステムについて、専門家に聞く。ナイスジャパン株式会社 セールスディレクター 島田 宏巌氏

CX向上に向けて不可欠なのはリーダーシップ

企業が持続的成長を実現する上では、CX(顧客体験)を強く意識することが欠かせない。

背景にあるのが消費者の価値観の変化だ。現在はインターネットやスマートフォンの普及によって、消費者が様々な情報にアクセスできるようになっている。商品・サービスの購買行動が変化し、検討から購入、その後の利用までのプロセスで経験する「うれしさ」「楽しさ」といった感情的な価値がより重視されるようになった。そのため企業は、それらを継続的に提供し続けることが、持続的なビジネス成長に向けて不可欠になっているのだ。

「しかし、まだ日本国内には『CXがどのようなものかよく分からない』『具体的な取り組みはまだ始めていない』という企業が少なくないようです。これはグローバルの潮流に比べて大きく遅れており、非常に危機的な状況だと感じます」とナイスジャパンの島田 宏巌氏は警鐘を鳴らす。

また、仮にCXの重要性は理解していても、取り組みをうまく進められていない企業は多いという。代表的なのは、CX向上施策の立案・実施が現場任せになっており、全社の足並みがそろっていないケースである。この状態では、顧客がA部門に問い合わせた際と、B部門に問い合わせた際の対応内容や品質が異なり、結果的にCXを低下させてしまう。「CX向上に向けては、強力なリーダーシップのもと、全社的な視点を持って施策を展開することが肝心です」と島田氏は言う。

 具体的には、組織全体の取り組みを主導するCX担当部門を設置する。そこに営業、マーケティング、ITなどの部門のCX関連業務を集約し、全社統一の取り組みを推進することがカギになるという。「営業部門内に設置する、あるいはIT部門を拡張して設置するなど、、CX担当部署の最適な設置の仕方は企業によって異なります。ただ、いずれにせよCXにかかわるリーダーシップを持ち、組織横断的に管轄する体制を採ることがCX向上の第一歩になるでしょう」と島田氏は強調する。

ナイスジャパン株式会社 セールスディレクター 島田 宏巌氏

コンタクトセンターの役割が拡大し、システム刷新が必要に

その上で、実際のCX向上に向けて重要な役割を果たすのがコンタクトセンターであり、それが担うべき役割は、以前よりも大きく拡大しているという。

「従来のコンタクトセンターは、電話とメールが主な顧客接点でした。しかし現在は、WebサイトやSNS、チャットなどを使ってアクセスしてくるお客様にも対応することが求められています」(島田氏)。また、それぞれのチャネルのやりとりの内容を集約・蓄積して分析し、次に生かすデータ活用のアプローチもCX向上に向けて重要になっている。多種多様な顧客チャネルを横断的にカバーし、継続的な顧客とのリレーションを構築する。これにより一貫した高品質なCXを提供することが、コンタクトセンターに与えられた新たな使命といえるのだ。

このような新しいコンタクトセンターを実現する上では、ツールも見直すことが必要だ。日本企業の現状を見ると、電話、チャット、Web、SNSなどのチャネルごとに使われているツールやシステムが異なり、それが“縦割り型”対応の原因になっているケースが少なくない。

「そもそもコンタクトセンターシステムは、これまでオンプレミスで構築・運用してきた企業が多いと思います。はじめは電話(音声)の仕組みをつくり、そこに必要に応じてメールやチャット、SNSなどの機能を個別に追加してきました。しかし、その結果としてシステムの複雑化が進行。オペレーターは個々のシステムを使い分ける必要があり、顧客対応に時間がかかっているほか、業務の負荷も高まっています」と島田氏は指摘する。また、システムを自前で運用する必要があるため、維持・管理にも多くの人手とコストが必要になっているという。

多様なツールを連携して高度なインタラクションの分析を実現

複雑化したシステムのままでは、高度なデータ利活用を進めることも困難だ。例えば現在、CX向上に向けた重要な取り組みの1つといわれるのが「VOC(Voice of Customer)分析」や「顧客とオペレーターによるインタラクションの分析」である。自社の製品・サービスに対する顧客の声を集めた分析や、顧客とオペレーターのインタラクションを分析することでCX施策の検討・改善に生かすのだ。

「オペレーターとの会話内容やその際のお客様の感情の動き、ユーザーアンケートの結果、SNSのコメントやWebサイト上の行動ログなどの情報を、高度なテクノロジーを用いて分析することでお客様との関係性強化を図り、LTV(顧客生涯価値)の向上につなげます」と島田氏は説明する。

これを実現するには、電話やメール、チャットはもちろん、SNSやWebサイト上の行動データなどを柔軟に連携できるシステム基盤が必要になる。あらゆるチャネルのデータをシームレスに扱える、統合的な仕組みが不可欠といえるだろう。


多彩なコンタクトセンター機能を段階的に拡張していける

そこでNICEは、このような要件を満たす次世代型のコンタクトセンターシステムを提案している。それが、クラウドコンタクトセンター基盤(CCaaS)「NICE CXone」(以下、CXone)だ。

電話、メール/SMS、チャットなどの機能をワンプラットフォームで提供するとともに、各ツールをシームレスにつないだ顧客対応を可能にする。各種レポート機能やオペレーターのスキル管理・評価、シフト管理などのSV向け機能も充実。さらに、AIによるリアルタイム音声認識・テキスト化や、リアルタイム翻訳などの先進機能も備えている(図)。

オペレーションに必要な各種ツール/機能はもちろんのこと、AI機能や高度なVOC分析機能も備える。もともとNICEは通話録音からスタートした会社であり、データの分析に強みを持つ点がこれらの下地になっている

図 CCaaS「NICE CXone」の機能群

オペレーションに必要な各種ツール/機能はもちろんのこと、AI機能や高度なVOC分析機能も備える。もともとNICEは通話録音からスタートした会社であり、データの分析に強みを持つ点がこれらの下地になっている

「これにより、例えばお客様がFAQで満足する回答が得られなかった場合、『何か困りごとはありますか』といったポップアップ画面を端末上に表示するといったサポートも実現可能です。そこからチャットや電話などの別のチャネルに誘導すれば、お客様の課題の早期解決、CX向上につなげることができるでしょう」と島田氏は紹介する。

さらに、従業員満足(EX)の向上に役立つ機能を搭載している点もCXoneの特徴だ。例えば、オペレーターは生成AIが要約した過去のメール/チャット履歴を見ながら対応できる。また、質問に対する回答の候補を画面にレコメンドするといったオペレーションの効率化、生産性向上につながる機能なども提供しているという。様々なチャネルで得たVOCのデータを分析にかけて、オペレーションの改善・最適化に役立てることも可能だ。

「もちろん、すべての機能を使わなければいけないわけではなく、必要な機能から使い始めて徐々に機能を追加し、導入に時間を要することなく拡張していくことができます。あるべきコンタクトセンターの仕組みを見据えて、段階的に成長させていける。オンプレミスでは難しかったこのような使い方が可能です。各社のCCaaSを比較・検討するお客様からも、このようなCXoneの高度な拡張性が評価されています」と島田氏は語る。

クラウド型のため、今後もCXoneの機能は随時拡充されていく。これについて現在、NICEが見据えているのがインタラクション分析のさらなる高度化だ。例えば、「最もコンバージョンの高いオペレーターと低いオペレーターの応対の違いは」「スコアの高いオペレーターを見本として、新人向けのトレーニング資料を作成したい」といったことを生成AIにチャットで問いかけるだけで、詳細な分析結果や必要な資料等が得られるようにする。これにより分析プロセスを省力化でき、データに基づいた業務改善、新施策立案などのサイクルを高速化することができるだろう。

CX向上はあらゆる日本企業にとって避けて通れない取り組みだ。「何もやってこなかった」が大きな違いを生み出す時代が、すぐ目の前まで迫っている。ナイスジャパンの提言を基に、組織体制および仕組みの刷新を図っていくことは、重要なアプローチとなるだろう。手遅れになる前に検討することをお勧めする。


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