日経ビジネス55th 消費の最前線にフォーカス

たんぱく質の価値を共に創る企業へ
日本ハムの挑戦

日本ハム株式会社 代表取締役社長

井川 伸久

関西大学法学部を卒業後、1985年日本ハム株式会社に入社。2005年加工事業本部デリ商品事業部デリカ商品開発部長、15年加工事業本部営業本部フードサービス事業部長に就任。その後、加工事業本部長、代表取締役副社長などを歴任し、23年4月より現職。

「たんぱく質を、もっと自由に。」を掲げ、たんぱく質をベースに味や健康にこだわった食品を安定的に提供するニッポンハムグループ。「たんぱく質の価値を共に創る企業へ」をテーマとする新たな中期経営計画の発表を前に、『日経ビジネス』発行人の北方雅人が、日本ハム代表取締役社長の井川伸久氏に話を聞いた。

挑戦する風土を醸成したんぱく質の可能性を広げる

2023年4月の社長就任からもうすぐ1年がたちます。経営に当たって意識したことは何でしょうか。

井川 重視しているのは現場との対話です。私自身、現場たたき上げですが、すべての現場を知っているわけではないので、まずは現場と接点を持ち、彼らの考えや課題を知るところに力点を置いています。

どのような課題があると感じましたか。

井川 当社はもともと、スケールの大きなことに挑戦する社風を持っています。例えば、豚や鶏の生産から販売・流通までを一貫して手掛ける垂直統合型の事業モデルを業界でいち早く確立したり、オーストラリアの牧場を買収するなどグローバル展開を積極的に進めてきたり。ただし、ここ20年ほどは、コーポレート・ガバナンスの強化に重心を置くあまり、攻めの意識が薄くなっていました。現場との対話を通して、組織風土の改革を進めなければと感じました。

前社長の時代から続くビジョン「たんぱく質を、もっと自由に。」の実現には社員のチャレンジ精神も必要ですね。

井川 当社グループは日本で消費されているたんぱく質の約6%を供給しており、日本のたんぱく質供給に重要な役割を果たしている自負はあります。

しかし、40年には世界のたんぱく質供給が不足する「プロテインクライシス」が起こると言われている状況の中で、まだまだ挑戦すべきことが山ほどあると考えています。自由な発想でたんぱく質の可能性を広げ、お客様に新たな価値をお届けするという意味で、まさに当社の今後を象徴するビジョンです。

自由な発想で開発に挑むたんぱく質の新しい選択肢

挑戦する風土を醸成するためにどんなことに取り組んでいますか。

井川 一例として、若手の開発担当者が新商品のアイデアを競い合う「開発甲子園」を6年前から実施し、すでに17品目が商品化しています。直近では、ゲームをしながら片手で食べられるゼリー状のラーメン「ブーストヌードル」を展示会に出展しました。私たちでは思いつかないアイデアが出てくるので刺激になっています。

また、サステナブルな発想のアイデアとしては、鶏レバーを使用した「グラフォア」という商品があります。フォアグラは世界三大珍味の一つですが、アニマルウェルフェアの観点から生産量が減少しています。一方、鶏レバーは季節商品で冬場に需要が落ちるため、余剰分の鶏レバーからフォアグラの代替品を開発するというアイデアが出ました。開発甲子園で上位入賞後、1年間かけて旨味や口どけを再現する製法を開発し、23年に販売を開始しました。新たな価値創造として評価をいただいており、今後は業務用やグローバル市場なども視野に入れて展開していく予定です。

サステナブルという面では、プラントベースフード(植物由来食品)にも取り組まれていると聞いています。狙いや成果を教えてください。

井川 将来的なたんぱく質不足が懸念される中、肉の代替品の開発に挑戦するのは当社の使命です。当社は20年から大豆ミートを使用したブランド「ナチュミート」を展開しており、そのノウハウがプラントベースフードに生きました。直近の展示会では、植物由来のまぐろの刺身「プラントベース まぐろ」を発表し、24年4月からは業務用として販売を開始する予定です。こうしたプラントベースフードは、外資系の飲食業や海外からのニーズが高まっており、新たな市場開拓先として期待しています。また、麹を原料とした食品の開発も進行中です。麹は無味でたんぱく質や食物繊維が豊富なので、健康に資する食品として、こちらも可能性を感じています。

たんぱく質にはじまり、たんぱく質の未来を広げる
ニッポンハムグループの取り組み
図:動物性たんぱく質の安定供給、多様な摂取機会・方法、選択肢の創造・提供。人生100年時代の健康サポート、安定供給に欠かせない畜産農家支援。

食肉や乳製品を中心とした動物性たんぱく質の供給をベースに、植物性の「ナチュミート」や「プラントベース まぐろ」といったたんぱく質の新しい選択肢の開発を実現してきたニッポンハムグループ。麹や細胞性食品に着目するなど、未来に向けた取り組みにも挑戦している。

畜産の未来を切り開き多様なたんぱく質を提供

写真:井川 伸久氏

今後、たんぱく質の安定供給に向けてどのような挑戦をお考えでしょうか。

井川 まず養豚事業ですが、新規就業の減少が進む中で生産数を維持するには、デジタルの活用が不可欠です。そこで、NTTデータグループとの共創で養豚の見える化を図る「スマート養豚プロジェクト」に取り組んでいます。AIを活用して豚の発情期や発育状況を自動で判断するシステムを開発。効率の良い養豚を推進することで、若い世代が畜産を仕事として選びやすくできる環境を整えていきたいと考えています。

また、23年オープンの北海道ボールパークFビレッジも活用しながら、当社事業拠点の約20%が集中する北海道を、世界に向けたたんぱく質体験発信の拠点に育てていく所存です。

さらに、26年度までの3年間の中期経営計画では、日本ハムという企業を「たんぱく質を日本で最も供給する食品企業」から「たんぱく質の価値を共に創る企業へ」の変革を目指します。これまでの慣習や「あたりまえ」にとらわれず、グループ各社、地域の皆様、様々なパートナーの力を掛け合わせ、生命の恵みが持つ可能性を最大限に引き出すための挑戦を続けます。

ロゴ:日本ハム株式会社

日本ハム株式会社

〒530-0001
大阪府大阪市北区梅田2丁目4番9号
ブリーゼタワー 18F

https://www.nipponham.co.jp/

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