事例検証で磨いた
未来洞察の力で
来たるべき課題を提起し、
その解決に貢献する

本格的な民間総合シンクタンクとして1965年に誕生し、来年創立60周年を迎える野村総合研究所。長年の調査・研究活動と、数多くの事例作りで磨き上げた未来洞察の力で、不確実性が高まる今日、進むべき道を示す羅針盤として日本社会に貢献している。

民間総合シンクタンクだからこそ
質の高い政策提言ができる

民間企業ながら、国や地方自治体に政策提言を行い、より良い社会づくりや、経済、産業の発展に貢献する──。そんな調査・研究機関のモデルがまだ確立されていなかった高度経済成長真っただ中の1965年、野村総合研究所(以下、NRI)は本格的な民間総合シンクタンクとして誕生した。

現在では、経営変革や事業変革のコンサルティングや、ITソリューションの提供など事業領域が拡大。東証プライム上場企業としての顔も持つが、政策提言のため、長年にわたり調査・研究活動に携わってきたシンクタンクとしての存在感は非常に大きい。

神尾氏
野村総合研究所
未来創発センター長
研究理事
神尾 文彦
慶應義塾大学経済学部卒業後、1991年野村総合研究所入社。長年にわたり、官公庁・地方自治体・公益団体などの調査・コンサルティング業務に従事。専門は都市・地域戦略、公共政策、社会インフラ戦略、政策金融など。近年は、地方創生、デジタルガバメントなどの領域に取り組む。

「私は91年の入社ですが、当時でも、民間でありながら公的な立場で質の高い調査・研究を行っているシンクタンクはNRIぐらいしかありませんでした。国や自治体から数多くの調査・研究を受託できたのは、データ分析だけでなく、徹底した現地調査で息の通ったエビデンスを積み上げ、説得力のある提言を行ってきたからだと思います」

そう語るのは、NRIで未来創発センター長 研究理事を務める神尾文彦氏だ。

神尾氏は、NRIが民間企業だったからこそ、国や自治体の要請に対して、質の高いアウトプットができたのではないかと考えている。

「企業である以上、収益はしっかり上げなければなりません。もちろん、その対価として質の高いアウトプットを提出するのは当然のこと。国や自治体から受託する調査・研究の場合、国民の税金が投入されるのですから、なおさらしっかりとした成果を出す必要があります。その緊張感が、シンクタンクとしての力量を高めるエネルギーになったのだと思います」(神尾氏)

ビジョンの見える政策提言が
シンクタンクの役割

NRIは、国や自治体からの要請を受けて行う調査・研究のほか、自らが主体となって、重要な社会課題の解決に向けた調査・研究も行っている。

神尾氏がセンター長を務める未来創発センターは、そうした主体的な政策提言のための調査・研究を担う部門だ。

不確実性が高まっている今日。10年後、20年後の社会がどうなっているのかを予想するのはますます困難になっている。

そんな中、未来創発センターはNRIがシンクタンクとして60年近く培った調査・研究の知見とノウハウを駆使して、確度の高い未来洞察を行っている。

具体的に、どのような未来や課題を見据えているのか。

神尾氏は、「日本の場合、少子高齢化や人手不足、年金不足といった国内課題と、気候変動、地政学リスクといったグローバルなイシューとのせめぎ合いにどう対処していくか、大きなチャレンジになると見通しています。2030年代から40年代にかけて、これらの社会課題が重なり合いながら一気に深刻化するので、なるべく早く有効な手を打たなければなりません」と語る。

森氏
野村総合研究所
未来創発センター
デジタル社会研究室長
森 健
1995年野村総合研究所入社。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)にて経済学修士課程修了。専門はデジタルエコノミー、グローバル事業環境分析。2012年から18年には、野村マネジメント・スクールにて「トップのための経営戦略講座」「女性リーダーのための経営戦略講座」のプログラム・ディレクターを務める。

また神尾氏は、「例えばカーボンニュートラルのようにグローバルな目標をみても、国によって戦略の打ち出し方には大きな差があります。欧州や中国、インドなどは、自国の産業競争力を維持・高めることを前提に目標達成年を巧みに設定しているように感じます。これに対し、日本では欧州のような国家の戦略とはあまり関係なく、『50年までにカーボン排出量を実質ゼロにする』という目標だけが独り歩きしてしまっているようです。日本のあるべき経済社会像の実現を見据えた脱炭素戦略を考えていくべきではないでしょうか」と提言する。

一方、「出生率の大幅な低下によって、日本の人口減少ペースは加速しています。これまで人口が増えることを前提としていた社会の仕組みを、抜本的に見直す時期に差しかかっていると思います」と語るのは、未来創発センター デジタル社会研究室長の森 健氏だ。

では、そうした未来洞察の下、NRIはどのように政策提言を行っているのだろうか。 森氏は、「政策を提言するにあたっては、その前提としてのビジョンを明確に打ち出すことを心がけています」と語る。

「政策を実行しても思ったような効果が得られないのは、多くの国民が賛同、共感できるビジョンがないことも理由の一つではないかと考えています。方向性がはっきりすると、動き出すのが日本人の国民性。その動きを促すため、政策提言にしっかりとしたビジョンを込めることもシンクタンクの役割だと思うのです」(森氏)

自ら事例を作って動かし
その効果を確かめる

深い未来洞察も、それに基づく明確なビジョンの提示も、徹底した調査・研究の裏付けがあるからこそ可能となるものだ。NRIは、そのケーパビリティをさらに高めるため、調査・研究を基に立てた仮説を自分たちで検証する取り組みも行っている。

「自ら事例を作って動かし、その効果を確かめることで、政策提言の精度を高めたいと考えているのです。エビデンスに基づく政策提言を行ってきたのがNRIの伝統ですが、それをさらに進化させる取り組みです」と神尾氏は説明する。

事例作りの一つとして神尾氏が挙げたのが、山形県鶴岡市などで支援している「デジタルローカルハブ」の構築だ。

「ローカルハブ」とは、NRIが提唱する概念で、地方における「自立経済都市(圏)」のこと。市民生活を支える産業だけでなく、国内外からヒト・モノ・カネを呼び込む様々な産業を集積、創造することで、地方都市を持続可能な都市圏へと発展させる構想である。

「これをデジタル技術によって構築するのが『デジタルローカルハブ』です。実証・実装の成果を基に次の地方創生、次のスマートシティのあり方について提言し、日本再生につなげることができればと思います」と神尾氏は語る。

森氏も、「エビデンスを集めるだけでなく、自らエビデンスを作り上げて未来を洞察することが、これからのシンクタンクには求められています。デジタル技術の進歩によって、かつては大がかりだった実証実験が、オンライン上で簡単にできるようになっています。事例を作りやすい環境が整ってきたので、当社がこれまで蓄積してきた調査・研究の資産とうまく融合させながら、より良い未来洞察を行っていきたい」と抱負を語る。

間もなく創立60周年を迎えるNRIは、時代がもたらした新しい環境の下、シンクタンクとしてのケーパビリティをさらに高め、より良い社会づくりに貢献しようとしている。これからの取り組みにも、ぜひ注目していきたい。