Beyond Finance みらいの社会のつくり手に 金融を超えた新しいビジネス決済市場を創る 第一弾のアパレル向けエコシステムが始動Beyond Finance みらいの社会のつくり手に 金融を超えた新しいビジネス決済市場を創る 第一弾のアパレル向けエコシステムが始動

NTTデータはBCE戦略の一環として、金流・商流・情報流を一体化した新しい決済インフラの創造に取り組んでいる。産業横断型のデジタル・サプライチェーンを実現し、あらゆる産業のグリーントランスフォーメーション(GX)を支援するためだ。その第一弾ともいえる取り組みがスタートした。それが「FEDI(フェディ)」である。これによってビジネスや社会はどう変わるのか。新しい決済インフラとFEDIが生み出す価値について、NTTデータの首藤 康之氏と吉本 幸司氏に話を聞いた。

決済を軸にサプライチェーンを高度化する

株式会社NTTデータ 第三金融事業本部 イノベーション創発室 室長 首藤 康之氏
株式会社NTTデータ
第三金融事業本部
イノベーション創発室 室長
首藤 康之

―NTTデータでは新しい決済インフラの創造に取り組んでいます。その背景について教えてください。

首藤これまでの決済インフラが様々な課題を抱えているからです。日本は1973年に世界に先駆けてオンラインリアルタイム決済が導入され、このころから給与も銀行振り込みになりました。日本の銀行口座保有率は、世界トップクラスです。

こうしたことから、ビジネスの決済慣行も口座間のお金の流れを意識した仕組みとして進化してきました。しかし、決済前後の業務との連携は進んでおらず、人手を要するアナログかつ煩雑な作業が今も多く残っています。

例えば、中堅・中小企業を含む国内全企業における請求書の電子化率、会計ソフトやインターネットバンキングの導入率、入金の自動消込率はいずれもまだまだ低く、アナログな作業が介在する非効率な取引慣行が常態化しています。

決済およびその前後のプロセスもデジタル化すれば、人手を必要としないかたちで決済を業務プロセスの中に組み込むことができます。そこで、当社ではこれまでの課題を解消し、多くのステークホルダーがシームレスにつながることのできる「ビジネス決済市場」の創生を目指しています(図1)。これは、金流だけでなく、調達や納品の確認、需要予測などの商流や情報流まで一体化した経済活動の場でありプラットフォームです。

図1 ビジネス決済市場の概念図

図1 ビジネス決済市場の概念図

産業の枠を超えたエコシステムを形成し、ステークホルダーがデータを共有できるようにする。業務プロセスをデジタル化するだけでなく、異業種連携を促進し、付加価値創造も連鎖させる

これにより、例えば、企業はクラウド会計ソフトを介してインボイス情報などから財務情報への変換を自動化できます。金融機関はそれを基に即座に格付けを行い、融資条件を確定できる。企業側は融資が受けやすくなり、そのスピードも大幅にアップするでしょう。

―取引が効率化するだけでなく、企業間の連携もより密になりますね。

首藤その通りです。サプライチェーンの上流から下流まで、多くのサプライヤーやバイヤーが一気通貫でつながります。いろいろな産業の企業がつながれば、産業の枠を超えたヨコの連携も進むでしょう。企業間取引がメッシュ型に行われ、商流情報や金流情報、企業情報が産業を跨って共有されることが理想だと考えています。

吉本これが実現すれば、産業構造を変革し、新たな価値創出による産業競争力の強化も期待できます。サプライヤーとの取引を多層化できるため、調達先を分散すれば、不測の事態にも備えられます。サプライチェーンの強靭化にもつながるはずです。

アパレル業界のエコシステムを創りGXも推進

―ビジネス決済市場の創生に向け、新たなエコシステム「FEDI」を発表しましたね。

吉本FEDIはファッション(Fashion)業界向けEDIの略。服や靴などの衣料品を扱う、いわゆるアパレル産業の企業間取引を革新し、GXを実現するための構想です(図2)。

図2 FEDIの全体構想

図2 FEDIの全体構想

請求・決済や貿易、調達・生産に係る事務をデジタル化し、各種法規制が求めるトレーサビリティにも対応。デジタルツインによる生産計画の最適化、AIを活用した販売予測、メタバースを活用した新たな体験も提供していく計画だ

ビジネス決済市場は業界横断の共通アセットをベースにしたエコシステムを目指しています。FEDIはその第一弾という位置付けです。

FEDIの立ち上げに向けて、多くのアパレル会社や金融機関にヒアリングを実施しました。そこで得られた業界および現場の課題を基に、全体設計を進めました。

―なぜファーストステップにアパレル産業を選んだのですか。

首藤アパレル業界には中小のブランドや縫製事業者も多く、未だに独自様式によるFAXやメールでのやりとりが根強く残っています。受発注や決済に手間と時間がかかるだけでなく、ミスによる手戻りのリスクもある。入金確認後の消込も請求書とのひも付けを人手で行っていることも少なくありません。

株式会社NTTデータ 金融イノベーション本部 グローバルカスタマーサクセス室 室長 吉本 幸司氏
株式会社NTTデータ
金融イノベーション本部
グローバルカスタマーサクセス室 室長
吉本 幸司

吉本環境面でも多くの課題を抱えています。日本市場向けの衣料品は年間約36億着も生産されていますが、その98%は海外で作られています。素材の調達、製造、輸送に伴って多くのCO2を排出します。アパレル業界全体のCO2排出量は海運業界、国際航空業界を合わせたCO2排出量よりも多いといわれているのです。

またシャツ一枚作るのに、人が3年半かけて飲む量と同じぐらいの水が必要だそうです。染色のために大量の水を使うからです。その水は水質悪化の一因にもなっています。

こうして作られたもののうち、実際に売れるのは半数程度。売れ残ったものの多くは廃棄されます。廃棄プロセスでも多くのCO2を排出しますが、廃棄衣料の製造に要した水の量は年間で琵琶湖1.5倍の量になるそうです。

このように多くの課題がある業界だからこそ、デジタル化のメリットも大きいと考えたわけです。

―アパレル産業は環境汚染産業ともいわれていますね。

吉本EUでは売れ残った衣料品の廃棄を禁止する法案が制定され、2025年ごろから施行される見込みです。捨てるのではなく、修理やリサイクルを促すかたちに変わろうとしているのです。この流れはいずれ日本にも訪れるでしょう。アパレル業界に対するGXの要請はより強くなっていきます。取引に伴う環境への影響を定量化する必要性も出てくるでしょう。金流だけでなく、商流・情報流まで一体化されていれば、そうした対応も効率化できます。

修理やリサイクルのニーズが高まれば、そこに新たな商取引の機会も生まれます。課題ばかりでなく、その先には新たなビジネスチャンスもあると考えています。

受発注、決済、輸送・貿易事務もデジタル化

―FEDIの全体像について教えてください。

吉本NTTデータのインフラやソリューション、業界のアセットを連携することで、アパレル業界のサプライチェーンにおける一連の取引業務をデジタル化します。その中核となるのが、請求・決済連携プラットフォーム「TetraBRiDGE(テトラブリッジ)」と、金融業界で培ったノウハウを生かした貿易プラットフォーム「TradeWaltz(トレードワルツ)」です。

TetraBRiDGEはインボイスの受領と一元管理、金融機関や金融システムとのデータ連携や即時決済が可能です。一方のTradeWaltzは貿易業務に関する一連のプロセスをデジタル化し、手続きの時間とコストの削減、在庫や物流状況の可視化と一元化を実現します。

TetraBRiDGEとTradeWaltzを中核として、業界の様々なアセットとも連携し、デジタル化の領域を拡大していきます。

―今後、FEDIで提供される機能のロードマップはどうなっているのですか。

吉本まず業界標準となるEDI機能を2024年10月に提供予定です。これが実現すれば、サプライヤー、バイヤー間の受発注のデジタル化が可能になります。

その後もTetraBRiDGEがサプライヤー向けの機能を拡充し、FEDIと連携することで、受発注から請求処理、支払い、入金確認・消込といった一連のプロセスを自動化することを目指しています(図3)。

図3 TetraBRiDGEの将来イメージ

図3 TetraBRiDGEの将来イメージ

インボイスの受領と一元管理、各種金融機関や金融システムとのデータ連携と即時決済は既に実現済み。今後はPeppol対応、各業界のEDIシステムとの連携、入金消込の自動化などを実現していく

将来的には素材や製品のトレーサビリティにも対応していく予定です。TradeWaltzでは、船荷証券のデジタル化とその即時決済も実現していきます。

リアルとデジタルの併存による変革を推進

―大手企業ばかりでなく、中小企業もFEDIに参加できるのですか。

首藤もちろんです。むしろデジタル化に出遅れている中堅・中小企業の方がメリットは大きいでしょう。

吉本新たなビジネス機会の創出を目指しているのもFEDIの特徴です。FEDIのプラットフォーム上で、デジタルツインによる企画やデザイン作業のデジタル化、メタバース空間のアバターを使った衣料品の試着や販売サービスなども考えています。既に関心を持つ企業とPoCを進めています。中堅・中小企業でも新たな顧客接点や販売チャネルを持つことができるでしょう。

―最後に今後の展望を教えてください。

首藤国内企業のデジタル化が進まない大きな原因は、請求・決済のような業務間、バイヤー・サプライヤーのような企業間、産業間の分断だと考えています。BCE戦略の「Connect」によりこれらの分断を解消し、ビジネス決済市場にかかわるステークホルダーで形成されるエコシステムが国内企業の飛躍的な業務効率化やデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させていく仕組み創りを支援していきます。

吉本NTTデータはFEDIだけにとどまらず、食品、自動車、住宅業界など多様な産業がつながる業界横断の共通アセットの実現を目指しています。今後もBCE戦略の下でデジタル化とGXを産業全体に広げ、異業種連携による価値創造と新規マーケットの創出を支援していきます。

吉本 幸司氏/首藤 康之氏
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