自治体DXフォーラム 2024 Summer 限界突破のDX
NTTデータ

価値を∞型に循環させることで
持続可能な地域経営を支援する

複雑化する地域の課題を解消し、地方創生を実現するのは容易ではない。求められるのは、地域社会を根本から「リ・デザイン」することだ。地域の自然、社会、人的資源を再発見して資本に変え、得た成果を再還元する。この流れをつくり出せば、持続可能な地域経営モデルを創出できる。NTTデータは、自治体と伴走する形で、そのための仕組みづくりを支援。既に全国各地でリ・デザインの実証事例が登場している。

複雑に関連しあう地域の課題
包括的なリ・デザインが必要に

株式会社NTTデータ 公共統括本部 社会DX推進室長 松本 良平氏
株式会社NTTデータ
公共統括本部
社会DX推進室長
松本 良平
 地方創生が叫ばれて久しいが、地方経済が停滞して活力が失われている状況はなかなか改善されていない。様々な試行錯誤が行われてはいるものの、大きな成果に結び付いていないのが実情だ。

 「現在は“下りエスカレーター”の時代であり、そこに乗った人々が必死に上ろうとして疲弊している状態にあると考えています」とNTTデータの松本良平氏は言う。地方に人が集まり、需要の増加や価値の好循環が起こっていた1980年代ごろまでとは異なり、現在は地方経済の縮小によって「人・もの・こと・価値」の相互連携が失われつつある。

 人口流出や産業の衰退といった地域の課題は多元的かつ複雑に関連しあっているため、個別の課題に対応するだけで解決することは困難だ。地域社会全体を包括的にデザインし直す必要がある。

 そこでNTTデータは、「Moving forward in harmony」という全社コンセプトを踏まえ、公共領域では社会課題解決を経営の重要テーマに設定。「共創による社会のRe:Design」を推進している。エンジンになるのは、「本気で」「みんなで」「未来へ」「調和をもって」という4つの軸だ(図1)。  各自治体が、主体的かつ持続的な地方創生の取り組みを進めるためには、その地域が有する自然、社会、人的資源を再発見して磨き上げることが必要だ。そこで生まれた価値を地域資源に再還元する流れをつくる。これこそが、地域をリ・デザインする道筋になるという。

 「人やノウハウ、資金といったものがドライバーになって、地域の多様な資源群を『資本化』します。そのインパクトを地域経済や住人のQOL(Quality of ife)に還元することが重要です」(松本氏)。経済や生活が潤えば、そこで生まれた価値が再び地域の資源になっていく。この∞(無限大)型のサイクルを循環させることで、持続可能な地域経営を実現することができるという(図2)。

住民と自治体・企業の共創で
自然との共生を進める佐渡島

 地域社会のリ・デザインを進める上で、同社は大きく次の3つの手法を基本に据えている。

 1つ目は「トータルガバナンスする主体をつくる」。これには行政組織が庁内に組織をつくる方法、第三者機関に完全委託する方法などがあるが、NTTデータではその両方の中間型、つまり行政と住民が共に参画する組織を置く方法が望ましいと考えている。

 「理由は、民意を反映しやすく政策との合意形成も図りやすいためです。例えば近年、観光資源の有効活用を促進する組織としてよく見られるDMO(デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)はこのタイプといえるでしょう」と松本氏は紹介する。

 既にこの方式を取り入れた事例もある。新潟県佐渡市、国立新潟大学、NTTデータで立ち上げた「佐渡島自然共生ラボ」がその例だ。

 これは新潟県の佐渡島を舞台に、自然と共生する未来を探求する共創プラットフォーム。地域住民と自治体、大学が島内外の企業と連携することで、自然との共生を前提とした産業・社会・環境の好循環を実現するための取り組みを進めている。

 「例えば、竹チップを道路の舗装材に用いることで、放棄竹林の整備と資源化を模索するプロジェクトが進行中です。また、佐渡島の暮らしや文化に根付いた『おいしくて人にも地球にも優しい特産品』を開発する地域商社もラボのプロジェクトから設立されました。ほかにも多彩なプロジェクトで産官学民が連携し、スピード感を持った取り組みが進められています」と松本氏は言う。

ドローンによる災害時の河川巡視
電力配分の最適化なども実証中

 リ・デザインの手法2つ目は「ありたい姿を想像し、そこに向けた道筋を描く」。あるべき未来からバックキャストして価値を定義し、その実現に向けて政策や事業を創造することを指している。

 この手法の事例としては、北海道の石狩川/千歳川流域における防災向け自動巡航ドローンの実証実験がある。豪雨の際などの河川の巡視をドローンで行うことで、災害に強い地域づくりを目指すもの。国土交通省 北海道開発局とのプロジェクトである。

 「これまでは人が車両で見て回っており、危険な上に多くの時間がかかっていました。ドローンであれば危険な場所も無人で巡視できるほか、高度150mほどの上空から広い範囲を鮮明な画像で捉えられます。巡視・点検業務の安全性・効率性を高められると考えています」と松本氏は説明する。

 そして3つ目は「データを集め、常に可視化、分析、検証可能にする」。この手法については、2022年度には沖縄県の宮古島でエネルギー分野の実証を行った。

 具体的には、地域の「再エネサービス企業」と協力し、島内約1000件の電力需要データをNTTデータが構築した「グリーン分散エネルギー情報流通基盤」で可視化。さらに、データを分析することで再生可能エネルギーの最適配分、CO2排出量の抑制などにつなげる狙いだ。

 「地方創生でまず大切なのは、いかに地域の多様なポテンシャルを引き出せるかです。また、地域資源は様々なステークホルダーが保有しているため、活用に際してはガバナンスを利かせることも欠かせません。資本化ドライバーを経済インパクトやQOLインパクトに結び付ける際にはイマジネーションやクリエイティビティーが求められ、ソーシャルインパクト化するフェーズではデータを有効活用することが問われます」(松本氏)。これらを押さえることが、地域社会のリ・デザインの要点になるという。

 図2で示した∞型のサイクルを循環させて、持続可能な地域経営を推進する。これを個々の自治体が単独で行うことは難しいだろう。NTTデータは産官学民を適材適所でつなぐとともに、必要なテクノロジーを提供することで、今後も多くの地域のリ・デザインに伴走していく構えだ。
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