PBR向上に挑む

事業ポートフォリオの
高度化で
収益力向上と
ROE8%以上を目指す

大倉工業株式会社
代表取締役社長執行役員
神田 進

大倉工業は成長分野への重点投資などによって事業ポートフォリオを高度化し、収益力の向上とROE8%以上の達成を目指す。
トップの強い意志の下、成長の源泉となる人的資本の強化にも乗り出した。
代表取締役社長執行役員の神田進氏が、PBR1倍台達成に向けた決意を語った。

2030年に売上高1200億円、営業利益100億円の達成を目指す

「加工技術」と「材料設計技術」が
創業以来の成長ドライバー

 大倉工業では、2022年に発表した経営ビジョン「Next10(2030)」で、30年に売上高1200億円、営業利益100億円の財務目標を掲げています。その実現に向け、「中期経営計画(2024)」で事業ポートフォリオを高度化する構造改革に取り組んでいます。低採算事業を見直し、高付加価値製品を生み出す事業への資本投下を通じて、収益力を向上させます。

 24年は、回復したスマートフォン向け需要や大型投資した広幅光学フィルム需要への確実な供給体制構築などで、連結売上高820億円(前年比4.0%増)、営業利益53億円(同6.9%増)の増収増益になるよう目指しています。

 現在の自己資本比率は60.6%まで高まっています。十分な財務健全性を得た今、企業価値向上のために重視する経営指標は自己資本利益率(ROE)です。資本コストを上回る8%以上を達成すべく、成長戦略と財務戦略を実行します。

 成長ドライバーは創業以来培ってきた「加工技術」と「材料設計技術」です。例えば、現在の主力製品である光学フィルムは、液晶パネルの黎明期(れいめいき)に、製膜技術やプレス技術を新素材の加工に応用すべく設置された新規材料事業にて製品化しました。また、大手自動車メーカーとの共同開発では、材料設計技術を駆使し、遮熱性能を持つ天井材の開発も実現しました。世界の様々なトップ企業との取引の中で、最先端の加工や材料設計に挑む機会を得て、独自の要素技術を磨いてきました。

 当社は「合成樹脂事業」「新規材料事業」「建材事業」という3つの事業を手掛けています。ただ、事業分野は異なるものの、多角化している認識はありません。要素技術を融合して相互に補完しながら、それぞれの事業を進化させてきたからです。今後も、要素技術の掛け合わせで、他社が容易に模倣できない、新たな価値ある事業や製品の創出が可能だと考えています。

成長分野に重点投資
海外売上高比率は倍増へ

神田 進氏

 成長戦略として取り組むのが、「情報電子」「環境・エネルギー」「プロセス機能材料」「ライフサイエンス」といった成長分野への重点投資です。現在の中計でも220億円の投資を行っていますが、25年から始まる新たな中計では、より大きな額を投じる予定です。

 設備投資についても、生産能力がなくてはお客様に相手にしていただけないことから覚悟を持って先行投資を行います。細胞培養用のシングルユースバッグは25年までに開発を完了し、26年から事業化させる予定です。

 海外展開も積極的に進めます。ベトナムに建設中の新工場では、25年から電気自動車(EV)のモーター等に使われる接着剤の生産を始めます。合成樹脂事業でもEV関連製品の生産を行い、ベトナムを海外事業拡大の拠点とします。現在、海外事業の売上高比率は14~15%ほどですが、30年には30%超を目指します。

不採算製品は整理を決断
環境価値の付加で収益性向上

 一方、コモディティ化が進む「生活サポート群製品」は、競合他社との状況を精査し、採算が取れないと判断した製品は、いち早く整理の意思決定を行います。継続する事業は薄膜化、CO2削減など環境価値を付加することで収益性を向上させます。24年中に生活サポート群製品の50%以上を、環境貢献製品に置き換える目標でしたが、上半期で既に54%に達しました。30年までに100%置き換える目標を掲げ、取り組みを加速させます。

 環境価値は中長期の観点で間違いなく競争力強化につながるという思いから、森林資源の循環を可能にする木質構造材、集成材事業にも参入します。約70億円を投資し工場も建設中です。

改革のために人的資本を強化
新たな教育・評価制度を導入

 財務戦略では、最適な資本構成になるよう資産を圧縮し、資本効率性を高めます。株価を見ながら政策保有株式を縮減し、連結純資産の10%以下とします。自己株式の取得も検討するなど、株主還元も拡充します。現在の配当性向は30%ほどですが、さらなる向上を目指します。リスクに備え自己資本水準を維持しつつ、事業領域を拡大して収益力を高めるための成長投資を重視していく考えです。

 事業ポートフォリオの高度化など、改革を進める上で最重要課題と捉えているのが人的資本の強化です。私自身の強い意思で、経営戦略と連動して変化を前向きに捉え挑戦できる人材を輩出する人材戦略を講じています。

 その一例として、従来とは異なる体系的な教育プログラムを導入しました。次世代リーダー向け、経営幹部向けなど属性や階層ごとに研修・セミナーを実施しています。24年からは新たな人事評価制度もスタートしました。評価項目に「チャレンジ」を加えるなど、従業員が意欲的にスキルアップに挑めるものとしています。

 東京証券取引所のプライム上場企業として、ガバナンスの成熟も求められます。指名報酬委員会など各種委員会を設置して体制を整えています。取締役会ではROEや株価純資産倍率(PBR)の向上を最重要テーマとして、集中的に議論を交わしています。

 こうした取り組みについて、積極的な情報発信と株主、投資家のみなさまとの対話にも努めます。当社の成長性をご理解いただきながら、早期のPBR1倍台達成を目指します。

※肩書と内容は、公開当時(2024年11月15日)のものです

神田 進
神田 進(かんだ・すすむ)
●大倉工業代表取締役社長執行役員
1977年4月大倉工業入社。2004年ユニオン・グラビア代表取締役、2009年大倉工業執行役員、2010年取締役に就任。2013年合成樹脂事業部長、2016年無錫大倉包装材料有限公司執行董事、2016年常務取締役を歴任。2017年代表取締役常務取締役を経て2018年代表取締役社長に就任。2020年より現職。
大倉工業株式会社

〒763-8508 香川県丸亀市中津町1515番地
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