


大澤 労働人口が減少の一途をたどる日本において、優秀な人材を確保することは企業にとって重要な課題です。近年、経営戦略として「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進する企業が増えていますが、中でも女性活躍のための出産・育児支援に注目が集まっています。企業は、子育てと仕事を無理なく両立できる環境を整えることが大切だと思いますが、制度を整えても「周囲に迷惑をかけられない」と考え、育児休業の取得や時短勤務を利用することに抵抗を感じる従業員がいたり、それを支える同僚に業務負担が偏ったりしていることが社会課題になっています。
オープンワークでは、1700万件を超える(2024年9月現在)投稿からAIでクチコミ内容をスコア化し、企業の働きがいや働きやすさを可視化する「従業員クチコミレポート」というサービスを提供しているのですが、大和リースさんは同業他社と比較して非常に高いスコアが出ています。詳しく調べてみると、子育て中の従業員を支援する先進的な取り組みを行っていることが分かりました。制度導入の背景や今後の人事戦略についてぜひ伺いたいです。

大和リース株式会社 上席執行役員 人事部長
佐伯佳夫 氏
佐伯 それは光栄です。当社のスコアが高いというのは嬉しいですね。まず出産・育児支援については、日本では性別ごとの役割分担という固定観念がやはり未だに残ってしまっている傾向があり、仕事と家事・育児を両立しようとする女性の負担が大きいと感じています。女性が会社で活躍するためには、男性の家事分担を促し、女性の時間をつくることが必要です。家庭の中の家事・育児が女性に極端に偏ってしまうと、心理的なプレッシャーも強くなってしまいます。当社では、まずは男性が家事・育児を分担しないと始まらないと考え、男性の育休取得を促すため、男性の育休取得日数に応じて最大100万円を支給する制度をつくりました。さらに、休むだけでは意味がないので家事の役割分担を細かい一覧にした「家事育児シェアシート」を作成し、家事をどう分担するのか、夫婦で話し合ってもらう仕組みにしました。育休終了時には女性(妻)にコメントを書いてもらい会社に提出します。女性が復職してからも助け合えることを期待し、家事育児を2人で分担していくためのトレーニングプログラムにしたかったからです。

オープンワーク株式会社 代表取締役社長
大澤 陽樹 氏
大澤 子育てをする人にとってありがたい制度ですね。業務を支える同僚にも配慮した制度を策定していると伺っています。
佐伯 はい。育休を取得する従業員の業務を引き継ぐ同僚に負担がかかってしまう現実もあります。そこで、同僚のケアとしてつくったのが「サンキューペイ」制度です。育休で職場を離れた従業員の代わりに、支えた同僚へ賞与原資を分配する制度です。支給される平均額は17万円くらいですが、育休取得者が重なった職場では数十万円に達する従業員もいます。一番のポイントは上司がフォローの状況を適正に評価し、人事に報告することです。やはり人知れず頑張るのは辛いものです。例えばAさんが育休をとり、Bさんが難度の高い仕事をフォローしてくれた時などは、「上司が自分の頑張りを見てくれた」ことが救いになる。ボーナスを再分配されていると思えば、休む側も申し訳ない気持ちが薄まり、実際に中長期で育休を取る後押しになったという声が届いています。
大澤 確かに、頑張った分の報酬がもらえるだけでなく上司が頑張る姿を評価してくれるなら、やりがいも生まれそうですね。この10年間で働き方改革は大きく進展しました。OpenWorkに投稿された大和リースさんの「女性の働きやすさ」「ワーク・ライフ・バランス」に関するクチコミを企業分析に優れた株式会社クレジット・プライシング・コーポレーション協力のもとAIで分析すると、同業の2社や東証プライム・スタンダード上場企業の平均スコアより高く、且つ右肩上がりの傾向が見られました。日本の多くの企業で「働きやすさ」が改善傾向にある中、同業他社より高い評価を得ることは簡単ではなく、本当に素晴らしいと思います。また、大和リースさんの「女性の働きやすさ」に投稿されたクチコミの頻出単語をワードクラウドという方法で可視化したところ、「女性が働きやすい」というワードが多く投稿されているという結果が見られました。女性活躍のための制度が従業員に浸透していることがわかりますね。

大和リースのクチコミから頻出単語を表示したワードクラウド。出現頻度が多いほど文字列の面積が大きくなる。※色は視認性の向上のためのもの
佐伯 ほかにも、2022年に生理休暇の名称を変えた「M休暇」もつくりました。「休暇制度があっても申請しにくい」という声がある中、ただ名称を変えても意味がないので、産業看護師が生理について説明をする研修動画をつくり、多くの従業員に視聴してもらいました。その結果、男性陣の理解も深まり、導入前に比べて取得数は21倍まで増えています。
大澤 現場の声をベースにした制度ですね。労働人口が減っていく中で労働参加率を高めることは重要です。私は、従業員の声を拾い、多様な人材に活躍してもらえる環境を提供できる会社が生き残っていくと考えています。大和リースさんのように働く人の声に耳を傾ける経営者が増えてほしいですね。
大澤 SNSを中心に、子育て中の従業員を「子持ち様」と呼び、批判する書き込みが論争となったことも記憶に新しいです。私はこの言葉自体があってはならないと思うのですが、子供がいる方もそうでない方も、共にもやもやした思いを抱えている現実があることを知りました。子育てを支援する制度を不公平だと感じていたり、子育てのために勤務時間に制約のある従業員が職場に多いと業務の負担が偏ったりする、という声もあります。このように、従業員の本音や可視化されていない問題を拾うためには、1on1などで従業員との対話を増やすことが必要だとされていますが、私が一番大事だと思うのは「共通の物差しを持つこと」です。例えば受験に偏差値がなかったら、どの科目をあとどれくらいやらなければいけないのかがわからず、勉強を頑張れないと思います。受験に限らず、こういった共通の物差しがあるからこそPDCAが回せるようになるのではないでしょうか。様々な会社が従業員のエンゲージメント向上に取り組んでいますが、今まで会社間で横比較ができるものがありませんでした。当社の「従業員クチコミレポート」は、共通の物差しで組織を比較できる指標を日本で初めて開発できたと思っています。共通の物差しを持って競合他社と比較すると、効果的に課題を見つけることができ、良い会社をつくっていくためのヒントが得られる。そんなサービスになると自負しています。
大澤 先進的な取り組みで育児支援や女性活躍に貢献している大和リースさんですが、人事戦略において今後どのようなことが重要だと考えているのでしょうか。
佐伯 当社は人事評価や免許・資格などの管理はしていますが、それだけではその人の本当の良さが見えないため「アビリティ管理」を実行したいと思っています。昔は一級建築士を取得した社員にはお祝い金を出していましたが、現在は数十種類の資格をスコア化しています。今後は趣味のような分野でも「料理が得意」「釣りが好き」といったその人の価値観などをスコア化したいと考えています。当社は建物をつくるだけでなく、それを通して地域を盛り上げていくことが仕事です。建物が地域の人たちに馴染んでいくアプローチをしないと、本当の意味での地域活性化にはなりません。オペレーションの際には、その人の得意分野を反映することもできます。人の持つ様々な側面での能力を生かす「適能適所」ができれば、これからの時代の若い人たちが、自分の伸ばしたい部分の「見える化」が実現されると思いますね。オープンワークさんはどのような展望を考えているのでしょうか。

大澤 今のお話に近いことを、当社はジョブマーケット全体でやろうとしています。まずは企業向けの「従業員クチコミレポート」サービスを提供して、良い会社を増やしたいです。さらに、良い会社を増やすだけではなく先ほどの「適能適所」を世の中で実現していきたいです。「OpenWork」には約670万人のユーザーと、100万人を超える履歴書・職務経歴書を保有しています(2024年9月現在)。企業と求職者をマッチングさせるサービスも展開していますが、私たちが実現したいのはその一歩先のことです。
例えば、能力はすごくあるけれど、大きなライフイベントを迎え、これまでの働き方では働きにくいと感じる方がいるとします。その方の特性やクチコミに投稿したコメントの傾向と類似する方々が、どのような職場で満足しているかをAIで類推し、満足度が高そうな職場を紹介する、そんなことを目指していきたいです。個人は本当に輝ける場所で働くことができ、企業側も相性の良い人材を採用できれば、退職率が下がり、エンゲージメントや生産性は上がるでしょう。労働人口は同じでも、日本全体の生産性が高まっていく可能性があります。クチコミをAIで解析して、当社にしかできないマッチングを実現し、本当にその方が輝ける仕事・会社を結びつけて、結果的に国の生産性も上がっていく社会を実現したいです。
大和リースさんのような素晴らしい取り組みをされている会社のことをまだ知らない求職者も多くいます。従業員が本当に楽しく働き、輝ける会社は数多くあります。大和リースさんもその一つですが、いい会社をもっと世の中に発信し、日本の働きがいを増やしたい。労働が苦役ではなく楽しいものとなり、結果として生産性が向上する道を模索していきたいと考えています。

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従業員の本音をベースに企業の組織風土を可視化する
オープンワークは、転職・就職のための情報プラットフォーム「OpenWork」に掲載されたクチコミをAIで分析・スコア化し、企業の組織風土を可視化する「従業員クチコミレポート」の提供を開始した。
国内最大級の社員クチコミを有する「OpenWork」に投稿された社員クチコミ文章を、AIの自然言語処理により定量データに変換し、組織環境を評価できる「働き方スコア」として、「組織文化」「働きがい」「働きやすさ」の3項目に分けてレポート内でスコア化する。時系列での自社のスコア推移だけでなく、東証プライム・スタンダード上場企業平均スコア・競合企業スコアとの比較が可能だ。また、自社の特徴を示すワードクラウドや退職検討理由等もレポート上に掲載される。



