「DXの死角」第2回 調査結果から浮上する、隠れた真因とは? システム障害対応の自動化、9割が進まない 〜DX人材不足を助長……人的資本経営を阻む「新課題」〜

調査結果によると、日本企業において重大なシステム障害(インシデント)が4割近くも増加している。経営視点ではビジネスへの影響拡大とともに、情報システム部門の負荷増大に伴うDX遅延が課題となる。これらを解決する鍵となるのが、システム障害対応の自動化だ。多くの日本企業はいまだ「人」中心で障害対応を行っている。システム障害を迅速に復旧させることでエンジニアの疲弊を抑制し、DX推進をサポートするPagerDuty。同社代表取締役社長の山根伸行氏に、日本とグローバルで実施したシステム障害に関する調査結果をもとに、人的資本経営の観点から事例も交えながら障害対応自動化の重要性と課題について解説してもらった。

重大システム障害対応が招く
もう1つの「見えない損失」とは?

山根 伸行氏

PagerDuty株式会社
代表取締役社長
山根 伸行氏

深刻化するIT人材不足はDX推進遅延の要因となる。有効かつ現実的な解決策がエンジニアのリソースを最大限に生かすこと。しかし、エンジニアは新サービス開発だけでなく、日々の運用業務に追われている。多忙な状況に拍車を掛けているのが、増加する重大なシステム障害(インシデント)への対応だ。

山根 伸行氏

PagerDuty株式会社
代表取締役社長
山根 伸行氏

グローバルでデジタル運用管理プラットフォーム分野を牽引するPagerDutyは、2024年8月に日本企業の意思決定者とITリーダーに対し「システム障害(インシデント)による被害リスクと対応実態調査」を実施。その結果、過去1年間で重大システム障害を経験しているとの回答率が6割に及んだ。さらに、その発生数も平均37%増加していることも分かった。

経営の観点では、ビジネスへの影響拡大が懸念される。調査結果では、重大システム障害が発生した場合、推定損害額が1企業当たり年間52億円にのぼることが明らかになった。しかし、「損害額の大きさに目が奪われがちですが、別の角度から成長を阻害する『見えない損失』にも注視すべきです」と、PagerDuty代表取締役社長の山根伸行氏は指摘する。

「調査では、『システム障害対応への対策に十分な投資をしている』との回答は、グローバル46%に対して日本はわずか10%、『システム障害対応の自動化を進めている』との回答率は、グローバルが38%に対し、日本はわずか10%でした。他部署との連携、診断・トラブルシューティング、障害の修復作業、社内ステークホルダーへの連絡、障害に関する記録など、ほぼすべてのタスクを人力で行っているケースが多いことが回答結果から見えてきました。障害対応の多くは未だマニュアル対応/人力で行っており、1件あたりの復旧作業に平均6時間超も要している。その影響で、ビジネス拡大に向けたDX推進やデジタル戦略などの、本来注力すべき業務に集中できていないこともある事実が本調査結果からも分かり、また、多くの経営層の方からも実際に伺っています」

システム障害対応の自動化は
部門横断で取り組むべきテーマ

システム障害対応の自動化は、2つの側面で重要な経営課題だ。1つ目が、自動化を中心とする対策を講じない限りは社内IT人材の価値を最大化する人的資本経営を阻む要因となること、そして2つ目が、システム障害対応を人力で行うことが復旧対応時間の遅れへと繋がり、それが企業価値や顧客満足度の低下の要因となることにある。

なぜ、日本企業ではシステム障害対応の自動化が進まないのか。調査結果では「人材/専門知識の不足」(34%)を抑えて「IT組織全体の連携不足」との回答(36%)がトップとなった。システム障害対応においては、まず障害を検知し、障害箇所を特定して切り分けを行い、影響が及ぶ担当者に通知し解決していく。クラウドサービスの普及などによりITインフラが複雑化する中、重大システム障害対応は部門横断作業となった。「自動化は部門横断で取り組むべき課題のため、企業としてそれを推進する合意形成が重要だと考えます」と山根氏は説明し、続けて強調する。

「DX推進とともにITインフラが複雑化し、それに伴ってシステム障害対応も複雑化しています。損害額の最小化、社内IT人材の有効活用を目的に、DX戦略とセットでシステム障害対応の自動化を、経営課題として今こそ取り組むべきです」

自動化実装への障害は?

システム障害対応の自動化は、部門横断で取り組むべきテーマ。だからこそ経営主導が求められる

システム障害対応の自動化を進める場合、すべてのタスクを一度に実現するのは現実的ではない。時間を多く要しているタスクから優先的に取り組むことも検討に値する。調査結果では、「障害修復作業」(20%)、「障害の詳細/対応策/調査結果の記録」(16%)、「社内ステークホルダーへの連絡」(10%)がトップ3となった。このトップ3は開発や運用、情報システム部門だけでなく、経営者にも直接関わる要素だ。

マニュアル対応しているタスクで、最も時間を浪費しているものは?

システム障害対応の自動化は、時間を多く要しているタスクから優先的に着手し段階的に実現するのが現実的だ

重大システム障害が起きた際に、経営者はビジネスへの影響を最小限に抑え、顧客や取引先、政府機関、サプライチェーンだけでなく、ステークホルダーに向けて、マスコミなどを通じた現在の状況や今後の見通し、対策などの説明責任を果たすことが求められる。重要な局面で必要となる経営者の意思決定に対し、自動化はスピードと的確性をもたらす。従来のようにシステム障害対応を人力で行い、結果6時間超を対応に要していては、意思決定に深刻な悪影響を及ぼすばかりか、SNSなどでの炎上リスクも高まっていく。

システム障害対応で
社員は疲弊している!

調査結果では、「システム障害対応がビジネスに与えた影響」についての設問で、経営層も中間管理職も「システム障害に対応する社員の疲弊」がトップの回答となった。この点について「日本企業の経営層との会話の中で話題になることも増えてきました」と山根氏は話す。

社員のウェルビーイングやエンゲージメントの観点もある一方、中間管理職と経営層では「イノベーションの停滞」に対する懸念のレベルに明確な差異も明らかになった。近年、DX推進や「2025年の壁」対応などのイノベーションをドライブするIT人材の質と量の確保は深刻な経営課題として認識されている。経営層が懸念する「社員の疲弊」は、そうした危機感の現れだろう。

「インシデントがビジネスに与えた影響」において、経営層もITリーダーも「社員の疲弊」を最も懸念している点で共通しているが、<br>経営層はイノベーションの停滞にも比較的強い懸念を示した

「インシデントがビジネスに与えた影響」において、経営層もITリーダーも「社員の疲弊」を最も懸念している点で共通しているが、
経営層はイノベーションの停滞にも比較的強い懸念を示した

生成AIが経営者に
障害対応現場の状況を報告

システム障害対応の自動化で、最初に手をつけることが多いのがアラートの仕分け(トリアージ)だ。DXの進展によりITインフラが複雑化し、何十、何百ものシステムやアプリが絡み合い、システム障害発生時にシステムの異常を知らせる「アラート数」が急増している。IT運用部門は、膨大なアラートを確認し、緊急性の高いと判断したものから対応していかないといけない。そこにアラート仕分け自動化の効果は劇的で、かつ即効性があると山根氏は事例を交えて説明する。

「様々な監視ツールから大量のアラートが送られてきます。しかし、アラートの中には“CPU使用率が通常よりも多少高くなっている”など、緊急性が低いものもあります。このような重要性や種別も多岐にわたる大量アラートを、監視ツールごとにチューニングし、個別のダッシュボードを使って目視で精査するのは大変かつ、見逃しも発生します。弊社が提供する『PagerDuty Operation Cloud』は、数百種類の様々な監視ツール向けに用意されているコネクタ(API)に基づき様々なアラートを集約し、本当に対応すべきアラートを精査し、担当者に最適な手段で自動通知・エスカレーションをします。これにより、国内大手通信会社の事例では、月間10000件のアラートを1000件に削減しました。また、大手ECサイトやBtoCクラウドサービスの事例ではアラート数を98%削減できたケースもあります」

AIがルールに基づき膨大なアラートを自動集約・処理し、担当者に通知する

AIがルールに基づき膨大なアラートを自動集約・処理し、担当者に通知する

アラートの仕分け(トリアージ)だけでも大きな効果を得られるが、それだけでは6時間超の対応時間を短縮することはできない。障害のルートコーズ分析や修復の自動化にも踏み込むことが肝要だ。調査結果では、日本企業のほとんどが自動化に踏み込んでおらず、日本企業の平均修復時間は6時間12分(421分)かかることが明らかになっている。一方で、修復作業を自動化することで、平均修復時間2時間15分(280分)を実現できることも判明した。

システム障害対応の自動化は修復作業の大幅な時間短縮につながっている

システム障害対応の自動化は修復作業の大幅な時間短縮につながっている

重大システム障害が発生した際、経営者は「今」の状況を把握すべく、現場に情報提供を求める。しかし、障害対応に全力を尽くす現場担当者には余力がない。結果、状況報告が遅れがちになる。

PagerDuty Operation Cloudは、インシデントの影響範囲、進捗状況をリアルタイムで可視化できる。さらに生成AIが現場担当者をアシストする新機能も追加された。

「経営者が障害対応の状況を知りたい時、コミュニケーションツールのSlackやTeamsで『今、どういう状況か』と質問すると、PagerDuty Operation Cloudで一元管理された情報をもとに生成AIが自動的に答えてくれます。即時に状況を端的に知りたい経営者と、上層部への報告業務負荷を減らして対応に集中したい情報システム部門の、双方に大きなメリットがあります。また、障害報告書の作成も多くの工数を要する作業です。チャットツールでの会話ログや対応状況のログなど、散在している情報を集めて整理し報告書にまとめるのは、担当者に大きな負担となります。PagerDuty Operation Cloudでは生成AIが報告書の草案を作成することで、負担軽減と報告書提出の迅速化が図れます」

PagerDuty Operation Cloudは、アラートの仕分け(トリアージ)から担当エンジニアのアサイン、障害修復、将来のシステム障害発生予防のための分析までマニュアル業務をエンド・ツー・エンドで自動化する。グローバルで利用企業数は2万社。ユーザー100万人から信頼を得ている。日本企業も、特に顧客影響が大きいBtoCのサービスだけでなく、製造業、金融業、流通業、通信業でも導入が急速に拡大しており、日本法人設立後わずか2年で国内の導入企業は約400社までになっている。

PagerDuty Operation Cloudはシステム障害対応のプロセスを自動化し短時間で復旧させることでエンジニアの疲弊を防ぎ、DXを推進する

PagerDuty Operation Cloudはシステム障害対応のプロセスを自動化し
短時間で復旧させることでエンジニアの疲弊を防ぎ、DXを推進する

マニュアル作業を自動化し、障害対応という後ろ向きな作業ではなく、ビジネス成長に貢献する新機能開発にエンジニアのリソースを注力させる。これは人的資本経営の一環といえるだろう。システム障害対応の重責からIT人材を解放し、イノベーション創出にリソースを集中させる。障害による影響を最小化しつつ、DXを加速しさらなる成長を実現していくために、このシステム障害対応の領域にグローバルで15年以上特化し牽引しているPagerDutyのソリューションが果たす役割は極めて大きい。

お問い合わせ

PagerDuty

WEBサイトはこちら