パーソルグループ
一方、「攻め」のGXビジネスをけん引するパーソルP&Tは、パーソルのグループ企業としてITやエネルギーなどのアウトソーシング事業に取り組みながら、エネルギーマーケットでの知見を蓄積してきた。同社執行役員の小野陽一氏は、GXサービスを立ち上げた経緯をこう説明する。
「私たちは業務プロセスを効率化するための実行支援を得意としています。脱炭素の取り組みを進める際には、情報の開示やサプライチェーンの変化といった業務プロセス上の課題が出ることが予想されたため、エネルギー関連の知見と実行支援の強みを掛け合わせたGXサービスを20年からスタートさせました」(小野氏)
GXビジネスではデータをいかに収集するかが重要なポイントだが、営業所の多い企業がデータを収集するためには、大規模な業務設計が必要になる。小野氏によると、この実行部分を担えるプレーヤーが現在は手薄で、パーソルP&Tが存在感を示せているという。PwCコンサルティングの伊賀氏も、パーソルP&Tの実行力に大きな期待を寄せている。
「PwC JapanグループもGXビジネスを展開しており、一見すると競合関係に思えますが、当社は戦略策定を得意としているので、実行支援に実績を持つパーソルP&Tとは共創関係として補完し合えると考えています」(伊賀氏)
さらに、パーソルP&TがGXサービスを構築し、実績を積む中で、より大きな価値創造につながることに気づいたと小野氏は話す。
「GXサービスのスタート時には、脱炭素やGXに関連する業務プロセス変革の支援を行う際に、ビジネスを作ることだけを想定していました。しかしより広く社会を見ると、サプライチェーンや産業構造が変わるということは、労働移動が起きることと相関します。パーソルグループは人材サービス事業が主軸なので、これに対してしっかりと向き合い、気候変動のマテリアリティに取り組むことが、カーボンニュートラルに関連する新たな雇用の創出や人材育成にもつながります。そういう意味では、8つのマテリアリティの1つとして『気候変動への対応』を選定していたことは、当グループにとって大きかったと思います」(小野氏)
パーソルグループは人的資本の方針として「多様な人材が“はたらくWell-being”を体現」することを掲げている。8つのマテリアリティにも「多様なはたらき方の提供」や「多様な人材の活躍」が含まれており、人材サービス事業を展開する同グループのSXへの取り組みにおいて、各マテリアリティが相互にリンクしていることが分かる。
パーソルグループの取り組みに続いては、SXの今後について議論が進んだ。村澤氏がポイントとして挙げたのは2点だ。
「1つは時間軸です。基本的には、長期ビジョンからのバックキャストで中期や短期の施策を判断するという考え方ですが、社会課題や法制度の変化が加速しているので、当グループとしての社会課題の捉え方も定期的なアップデートが必要だと考えています。もう1つは、ステークホルダーの拡大です。サステナビリティは未来のためのものなので、投資家や取引先だけでなく、将来の社会の担い手である子どもたちに向けたキャリア支援なども模索できればと考えています」(村澤氏)
多くのSX案件に携わる坪井氏も、「投資家だけでなく、幅広いステークホルダーとのコミュニケーションやフィードバックの仕組み作りは重要ですね。また、未来のステークホルダーを重視するという考え方は、バックキャストを行う上でも有効ですし、若い世代はサステナビリティに対する感度が高いのでメッセージが届きやすいと思います」と評価する。
もちろん、課題も少なくない。東條氏や小野氏もホールディングス側と事業側、パーソルグループと投資家との間に意識のギャップがあることを感じているという。
「サステナビリティは中長期的な価値創出のための活動なので、ここに注力しなければ責任ある企業として認められない時代だという意識付けをして、ギャップを埋めていく必要があります」(東條氏)
「社会貢献であるGXがビジネスとして利益を上げることは会社の持続的な成長にもリンクしますし、産業構造の変化でニーズが生まれるのが人材サービス事業の強みなので、人的資本と絡めて成果を出せるという点は社内外に向けて発信していくべきだと思います」(小野氏)
これを受け、坪井氏はリスク管理の観点からもサステナビリティの重要性を指摘する。
「SXで後れを取ると、取引がなくなったり規制強化でペナルティーが大きくなったりするリスクがあります。逆にSXを進めることで、企業の事業自体のレジリエンスが高まるほか、投資家や雇用マーケットの評価も上がるため、企業価値の向上につながることは知っておくべきです」(坪井氏)
最後に、パートナーとしてのPwC Japanグループに期待することをパーソルグループの3人に語ってもらった。
「他業界の事例や海外での取り組みなど、専門的かつフレッシュな知見でアップデートのお手伝いをしていただけると助かります」(東條氏)
「世の中の仕組みやフレームづくりで力を発揮していただきたいです。私たちも実行支援の面から共創させていただければと思います」(小野氏)
「様々な業界や自治体などとも接点を持つPwC Japanグループが、ハブのような役割を果たしていただけるとありがたいですね」(村澤氏)
このような期待に対して、伊賀氏も「パーソルグループとの共創スキームや業界・企業横断のハブとして役割の型化ができれば、他の社会課題の取り組みにも転用できると考えています。カーボンニュートラルに限らず、様々なテーマで企業や社会の持続性に貢献していければと思います」と応え、今回の座談を締めくくった。