Innovative Transformation 可能性を解き放つテクノロジー 日本の科学技術発展に寄与した 研究者たちの素顔と思いに触れる「市村賞受賞記念フォーラム」 公益財団法人 市村清新技術財団 会長 中村 高 氏Innovative Transformation 可能性を解き放つテクノロジー 日本の科学技術発展に寄与した 研究者たちの素顔と思いに触れる「市村賞受賞記念フォーラム」 公益財団法人 市村清新技術財団 会長 中村 高 氏

人を愛し、国を愛し、勤めを愛す──。この「三愛精神」に基づき、日本の技術革新と人材育成に尽力してきた実業家・市村清氏。その遺志を受け継ぎ、半世紀以上にわたって新技術の開発や研究者を表彰、支援してきたのが「市村清新技術財団」だ。8月に開催される「市村賞受賞記念フォーラム」を前に、あらためて財団の歴史と功績を振り返る。

 「アイデア社長」「経営の神様」と呼ばれた、リコー三愛グループの創業者・市村清氏。数々の功績を残した氏の最後の事業となったのが、「新技術開発財団」の設立だ。創設は氏の没年である1968年。その背景には、「戦後、焼け野原となった日本を再び輝かせたい」という強い思いがあった。

 「日本を復興・成長させる鍵は、科学技術の発展に他ならない。そう考えた市村は、亡くなる直前に私財をすべて寄贈し、財団を世に残したのです」。

 こう語るのは、市村清新技術財団会長の中村高氏だ。「それから56年、財団では新技術開発への助成を毎年行っています。産業分野、学術分野に貢献した技術や研究者を顕彰してまいりました」。

 

 ここまで長く続けてこられたのは、審査委員の方々の熱意に支えられたからこそだと中村氏。「新しい技術や研究人材を発掘し、支援し育て、日本の産業発展に寄与したいという先生方の情熱は、まさに財団を創設した市村の思いそのもの。設立50周年を機に、『市村清新技術財団』と名称を変えたのも、市村に賛同する皆さまのご提案によるものでした」。

リコー三愛グループの創業者・市村清氏(写真左上)が亡くなる4日前に設立が正式に許可された「市村清新技術財団」。かつて市村氏の私邸だった財団本部には、「三愛精神」が掲げられている(写真右上)。1969年に開催された「第一回市村賞贈呈式」では大植専務理事が開会の辞を述べた(写真左下)、2024年開催「第56回市村賞贈呈式」で市村学術賞本賞を受賞した東京工業大学の西森秀稔特任教授と令夫人(写真右下)

数々の取り組みにより日本の科学技術発展に貢献

 市村清新技術財団の事業は、大きく分けて4つ。1つは科学技術の研究開発助成事業だ。これには「新技術開発助成」と「地球環境研究助成」がある。「当財団の新技術開発助成は、中小企業を対象としており、その目的は独創技術の “実用化”にあります。毎年2回開催し、助成金額は最高2400万円。開発に役立てていただけるよう、助成金は先にお渡ししております」。

 2つ目は、科学技術や産業の発展に貢献した個人や団体を表彰する「市村賞」の授与。「市村産業賞」「市村学術賞」「市村地球環境産業賞」「市村地球環境学術賞」の4部門がある。「研究者たちに活躍の場を広げてもらうために、各学術賞受賞者には、国際会議などへの渡航費や国際研究集会の開催を助成する『国際技術交流助成』も用意しております」。

 3つ目は、少年少女創造性育成事業。小中学生を対象にした「市村アイデア賞」の創設とともに、「キッズ・フロンティア・ワークショップ」の開催により、科学や創造の楽しさを子どもたちに伝えている。

 そして4つ目が、植物研究助成事業。市村夫妻の別荘であった熱海の「清恵荘」を植物研究フィールドとして提供し、毎年助成を行うというものだ。「日本には植物研究に対する助成が少ないため、全国の大学や施設も注目するユニークな事業となっています」。

最先端の技術を身近に学べる「市村賞受賞記念フォーラム」

 市村賞は、市村清氏の紺綬褒章受章(1963年)を記念して創設された。学会や市場におけるその影響力は高く、これまでもリチウムイオン電池や燃料電池自動車、QRコードなどの革新技術をいち早く表彰。市村賞の受賞が、その後の研究発展や実用化につながった例も少なくない。

 その偉業を讃え、研究者同士の交流を通じて科学技術の振興を図ることを目的に創設されたのが、「市村賞受賞記念フォーラム」だ。「50周年記念事業として、2018年よりスタートしました。市村賞を受賞したすばらしい技術や研究者たちを全国に知らしめたいという思いから、例年は地方を回っていましたが、今年からは東京での開催となります」。

 変わったのは場所だけではない。フォーラム自体も、ビジネスパーソンがより楽しめる内容に刷新される。

 「基調講演には、かつて市村賞を受賞した、旭化成名誉フェローの吉野彰氏が登壇。さらに、サイエンスライターの竹内薫氏と今回の受賞者たちによるパネルディスカッションも予定しています。一般の方にも理解を深めていただける構成となっているので、会場やオンラインでご参加いただけると幸いです」と中村氏。

 日本の科学技術の発展を支えてきた、市村清新技術財団。「市村賞受賞記念フォーラム」は、その技術や思想の最前線に触れる絶好の機会となりそうだ。

8月30日、明治記念館にて開催! 市村賞受賞記念フォーラム2024

市村賞受賞者や第一線の研究者たちが集う「市村賞受賞記念フォーラム2024」。旭化成名誉フェロー・吉野彰氏の講演をはじめ、受賞者によるパネルディスカッションを通じて、最新の科学技術を分かりやすく紹介する。

SHARE

記事中の肩書きやデータは公開時点の情報です