北陸新幹線が2024年3月に敦賀まで延伸開業し、沿線の地域経済に活力をもたらしている。北陸新幹線の開業工事を手掛けた鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)は、サステナビリティボンドによる資金調達を行い、鉄道建設や鉄道事業者、海上運送事業者の支援を通じて日本の交通ネットワーク整備や地域社会の発展に貢献する。JRTTの目指す方向性を藤田理事長に聞いた。
北陸新幹線の延伸工事で観光振興に貢献
JRTTが参画した北陸新幹線の金沢・敦賀間の延伸工事が完了し、2024年3月に開業しました。
北陸新幹線(金沢・敦賀間)の開業は、観光や様々な経済活動の面で、沿線地域と首都圏、あるいは北陸圏内の交流を活発化させ、地域経済を活性化させることはもとより、豪雪などの災害時の安定した運行や、他の交通ネットワークが障害を受けた際の代替機能を果たすことも期待されます。開業後1カ月間で金沢~福井間の利用は前年比1.26倍の72.3万人になり、効果が目に見える形で表れています。
同じ北陸新幹線の敦賀・新大阪間も、着工に向けて環境アセスメントなどを進めています。全線開業すれば関西圏と北陸地域の結びつきがさらに深まり、ビジネス・観光交流の拡大が関西圏にも活力を与えるなど大きな効果が期待できます。
また、現在は北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)の建設事業も進めており、開業すれば現在3時間以上かかる新函館北斗・札幌間が約1時間で結ばれ、観光客の増加も期待されます。
鉄道網整備を主体とする当機構としても事業を通じて沿線地域の発展を目の当たりにすることが何よりの喜びであり、今後も整備新幹線の建設主体として求められる役割をしっかりと果たしていきたいと考えています。
提供:JRTT鉄道・運輸機構
全国の鉄道施設の災害復旧や保守、修繕を支援するため、2023年4月に「鉄道災害調査隊」を創設しました。
当機構は従前から、新幹線の建設などで培った技術力を活用して自然災害などにより被災した鉄軌道施設などの早期復旧を支援してきました。近年、激甚化・頻発化する自然災害による鉄道施設などへの被害が相次いだことを受け、国土交通省の要請に基づいていち早く被災現場に派遣する「鉄道災害調査隊」を正式に発足しました。
提供:JRTT鉄道・運輸機構
鉄道の復旧には、土木・軌道・建築など幅広い分野の技術者が必要ですが、中小の鉄道事業者には十分な体制の確保が困難な状況が見受けられます。現地踏査などにより被災現場の全体像を迅速に把握し、災害復旧工事の工法や二次災害発生防止のための技術的助言を行います。2024年6月時点で6件の支援実績があり、2024年元日に発生した能登半島地震で被災した、のと鉄道七尾線の調査も行いました。
日本が直面する課題を解決する3つの“シンカ”目標
持続可能な社会の実現に向けて建設 DX ビジョンを策定しました。
当機構は、2023年10月の設立20年を契機に、20~30年後に達成を目指すべき目標として「建設 DX ビジョン」を策定しました。ビジョン策定の背景には、我が国が直面する「持続可能性」に対する課題、つまり、人口減少や地球温暖化による災害の激甚化、デジタル技術導入の遅れに対する問題意識があります。これらは、当機構の主力事業である鉄道建設においても避けては通れない課題です。当機構は、「安全・安心で環境にやさしい交通ネットワークの整備を通じた持続可能な経済社会の発展への寄与」を使命としています。ビジョンは、この使命や持続可能な社会に向けて“シンカ”するというコンセプトに基づき、次の20年を担う若手・中堅職員を中心に策定しました。なお、“シンカ”には、「進化」「深化」「新化」の意味が込められています。
20~30年後に達成を目指す
「建設DXビジョン」
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<鉄道の建設現場の“シンカ”>

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<サイバー空間を活用しオフィスを“シンカ”>

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<鉄道運行や技術支援を“シンカ”>

提供:JRTT鉄道・運輸機構
ビジョンの具体的な取り組みや展望を教えてください。
鉄道は、地域活性化や都市機能の向上に資する重要な社会資本であり、CO2排出量が少ないエネルギー効率に優れた輸送手段です。一方で、鉄道建設の現場は、長時間労働や危険を伴うといったイメージに加え、建設業就業者の減少や次世代への技術承継に対する懸念もあり、持続可能性に対する課題が顕在化しています。そうした課題に対応するため、ビジョンでは、ロボットやAIなどを活用し、現場作業を自動化・効率化することで就業者数の減少を補い、危険な箇所での労働災害・公衆災害を防止することを目指しています。またこのたび、ビジョンを具体化するためのロードマップを策定しました。多様な事業主体と連携し、ビジョンの実現に向けた取り組みを進めていきます。
クリーンな輸送を実現するため、サステナビリティボンドの発行を通じて資金調達を行っています。
2019年以来、継続的にサステナビリティボンドを発行しています。調達した資金は整備新幹線や都市鉄道などの建設資金や借り換え資金に充当し、債券発行を通じて持続可能な社会の実現に貢献していきます。
債券の質の高さに自負があり、第三者評価機関からサステナビリティ性の検証・評価に加え、環境改善効果について厳格な国際基準を設けている国際NGOのClimate Bonds Initiative(CBI)からプログラム認証を取得しています。鉄道建設や船舶建造といった当機構の事業との親和性に加え、当機構債券の高い品質・信頼性を理解していただいた結果、2024年5月末時点で373件の投資表明をいただいており、投資家の皆さまからいただいた共感の声は、我々の業務推進における大きなモチベーションとなっています。
JRTTは2023年10月に20周年を迎えました。事業を通じてどのような社会づくりに貢献する考えですか。
当機構は設立以来、「明日を担う交通ネットワークづくりへの貢献」という基本理念に基づき、地域の人々が生き生きと幸せに暮らせる社会を実現するため、事業に取り組んできました。時代が大きく変化し、当機構に課せられたニーズも変化していく中、業務運営のあり方を不断に見直して諸課題に柔軟かつ適切に対応していきます。




