タカラスタンダード株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 小森 大氏
PROFILE
小森 大 [こもり・まさる]
1970年、長崎県生まれ。1994年大分大学経済学部卒業後、 タカラスタンダード入社。2006年岡山支店長、2010年本社営業本部営業課長、2013年埼玉支店長、2019年東京支社長、2020年執行役員、2023年常務執行役員および取締役を経て、2024年4月から現職。人財の投入や組織の再編、拠点新設などマンションリフォームに特化した取り組みの推進により、首都圏のリフォーム売り上げ拡大に貢献。
100年の歴史で磨き続けた
「ホーロー」の技術を武器に
逆境の時代でもさらなる
進化を目指す
ホーローに対する誇りが
逆境に打ち勝つ原動力に
当社は1912年の創業以来100年以上にわたって、一貫して「ホーロー」にこだわり、水まわり製品を製造販売しています。
ホーローというのは、金属の表面にガラス質の釉薬を焼き付けた複合材料です。鉄の強さとガラスの美しさ、それぞれの長所を最大限に活かすことで、錆びやカビ、湿気に強く、様々な用途でサステナブルに使用できる点が大きな魅力となっています。
なかでも、タカラスタンダードのホーローは、当社独自の開発による鋼板や釉薬、長年培ってきた加工技術と焼成技術により生まれた、世界に類を見ない「高品位ホーロー」。まさに、“光り輝く素材”であると自負しています。
このホーローのパイオニアとして、家庭用ホーロー鉄器の製造を手がけていた当社は、1962年に世界初の「ホーローキッチン」の開発に成功。1982年には、ステンレス一体成型ユニットバスを日本で初めて商品化しました。現在では、国内キッチンでシェアトップ、システムバスと洗面化粧台で3位の、水まわり業界をリードする住宅設備機器総合メーカーヘと成長しています。
その勢いにより、2023年度の売上高は約2347億円と過去最高を記録。2002年度の売上高約1433億円と比べると、約20年で164%の伸長となります。
一方で、新設住宅の着工戸数はこの20年で約3割減少するなど、住宅設備業界にとっては逆風が続いています。人口が減少し続けるなか、この傾向はますます加速していくでしょう。
この状況下において、なお売り上げを拡大し続けているのは、当社が「逆境に強い会社」であることの証左といえます。
思い返せば、1970~80年代のオイルショック時代も、物価高による値上げトレンドのなか、当社は企業努力で価格を抑えたことでお客様と市場の信頼を得ました。また東日本大震災のときも、受注をストップさせることなく、お客様に製品をお届けしています。これは以前より、有事に備えた在庫管理や物流改革を進めていたからこそ成し得たことです。
お客様のニーズに応えた製品を作り、ご満足いただけるかたちでお届けする。そのための投資は決して惜しまないのが、当社の矜持です。それは、今後の厳しい環境下においても変わりません。
その根底にあるのは、「水まわりから、お客様の暮らしを豊かにしたい」という理念と、それを実現するホーローに対する揺るぎない自信です。
当社の社員は、ホーローという唯一無二の素材に誇りをもっています。これを作り、販売し、お客様にお届けできる喜びが当社のアイデンティティを育み、逆境に打ち勝つモチベーションの原動力となっているのです。
新設住宅着工戸数はこの20年で約3割減少。タカラスタンダードは、この逆風下で売上を大きく拡大させてきた
現場一筋の経験を活かした
社員ファーストの人事改革
私自身、これまでずっと現場一筋でやってまいりましたが、各地の支店長や東京支社長を歴任して実感したのは、社員の成長こそが企業を発展させるということ。この先も当社が持続的に成長していくためには、何よりも「人」を大切にした組織づくりが重要です。
そこで、2024年4月から「Change for the “Next Standard”」と銘打った新たな人事制度をスタートしました。
これは、社員のチャレンジを公正に評価することでエンゲージメントをより高め、タカラスタンダードとしてさらなる成長を追求していくための、抜本的な制度改革です。
第1弾となる今年度は、評価制度や等級制度、キャリアコースの新設定など、社員が長く活躍していくための骨格部分を整えました。今後も現場の声を取り入れながら、継続的にアップデートしていく予定です。
また、5月には「中期経営計画2026」を発表しました。テーマは「変革への再挑戦」。再挑戦と謳っているのは、もともと目指していた変革への取り組みが、コロナ禍で一時ストップしてしまったためです。
というのも、この3年間は巣ごもり需要の拡大により、オーダーが急増。お客様に満足いただける製品をお届けするためにも、まずは供給体制の強化に努めました。結果的に、会社として変革するタイミングを逸してしまいましたが、これを迅速に前進させることが、私のミッションであると肝に銘じています。
中期経営計画で目指す
3つの変革ポイント
中期経営計画は、収益構造改革、財務戦略、サステナビリティ戦略を成長戦略の3つの柱としています。なかでも収益構造改革の要となるのが、「リフォーム強化」と「システムバスの売り上げ拡大」「世の中、業界を変える構造改革」です。
「リフォーム強化」については、世の中のニーズに合わせ、中・高級品シリーズや高機能商品の強化を図ってまいります。背景にあるのは、人口減に伴う新設住宅着工戸数の減少と、6000万戸を超す潤沢な住宅ストック。今後8兆円規模まで成長するといわれるリフォーム市場を、まっ先に取りにいくのが狙いです。
これに先駆けて、2022年には業界唯一のマンションリフォーム特化型拠点「東京MRe.墨田ショールーム」と、お得意様向けの研修施設「東京MRe.テクニカルベース」を新設しました。こうした取り組みにより、2023年度の東京エリアのリフォーム売上高は、2018年度比で約1.8倍に拡大しています。
また、水まわりをトータルコーディネートしていくためにも、現在シェアトップのシステムキッチンに続き、「システムバスの売り上げ拡大」にも力を入れていきます。
具体的には、主力の福岡工場へのシステムバス専用棟の新設に向けて、400億円規模の設備投資を計画しています。2027年度の本格稼働以降は、ホーローシステムバスの生産能力が約1.5倍となる見込みです。さらに、アクリル人造大理石浴槽の生産工場である千葉の関東工場にも100億程度の投資を行い、生産能力を大幅に拡大していきます。
3つ目の「世の中、業界を変える構造改革」については、TDX(Takara standard Digital Transformation)によりサプライチェーン全体の業務を抜本的に見直し、「戦力の最大有効活用」を図ってまいります。
当社のDXは、単なるデジタル化ではなく、変革に注目し、シンプルかつわかりやすい一気通貫のオペレーションを目指すものです。ゆくゆくは、これを自社だけでなく、サプライチェーンを含めた業界全体を挙げてやっていきたいと考えています。労働人口がますます減少していくなかで、まず我々が先陣を切って、業界全体を働きやすく魅力的な場にしていくことが、事業の持続的成長にもつながると確信しているからです。
もともとタカラスタンダードには、業界の常識を打ち破ってきた歴史があります。従来の慣習に抗い、消費者目線に合わせた適正価格の設定を徹底してきたのもその一例です。また、この業界特有ともいえるマンパワー任せの営業スタイルを脱却し、顧客情報の一元管理や営業活動の可視化により、効率的な提案活動を行ってきた実績もあります。
これらの取り組みにより、2023年度は過去最高の売り上げを達成。その成果が認められ、「Salesforce全国活用チャンピオン大会2023」における優勝や、一般社団法人CRM協議会の「2023 CRMベストプラクティス賞」の受賞にもつながりました。
変革はまだ始まったばかりですが、すでに手応えは感じています。今後もこの3つの取り組みを、スピーディーかつ着実に実行してまいります。
ショールームの全国展開と
メディア戦略によりシェア拡大
成長戦略を実現していくにあたって、欠かせないのがショールーム展開です。
当社は業界に先駆け、1960年代からショールームを運営しています。当時はメーカーがショールームを開設することはめずらしく、我々も「原寸大のカタログ」と称していました。
先にお話しした通り、ホーローキッチンを世に送り出したのは、当社が世界初。まだ誰も見たことがない、その美しさや機能性をお伝えするには、実物をご覧いただくのが一番だと考えたのです。
また、この時代のキッチンやバスは施工業者が選ぶもので、お客様にはほぼ選択肢がない状態でした。そこにホーローという新素材を投入し、ショールームを通じて多くのお客様の支持を得られたことが、今のシェア獲得につながったのは間違いありません。
現在、当社のショールームは全国47都道府県に約160カ所。約800名の正社員ショールームアドバイザーを配置し、「見て、触れて、納得」いくまで体験できる地域密着型のショールームを擁する点は、当社の大きな強みといえるでしょう。
全国約160カ所に点在する地域密着型ショールームでは、約800名の正社員ショールームアドバイザーがきめ細やかに接客。納得いくまで見て、触れて、高品位ホーローの魅力を実感できることから、ユーザーの満足度も高い
また、2019年から注力しているメディア・プロモーション戦略も、成長を加速する大きな要因となりました。
従来比約2倍の費用を投じ、CMの大規模リニューアルからテレビドラマセットへの商品提供、Webをはじめとするメディア戦略まで様々なプロモーションを実施した結果、ホームページのアクセス数は3年間で2倍近くに増加。ブランド認知度も格段に向上しました。ショールームと連動したWeb施策が功を奏したことも、コロナ禍における売り上げ伸長にもつながっています。お客様からメーカー指定を受ける機会が増え、当社のシェアが目に見えて拡大したのも、この頃からです。
今後はこれをさらに推し進め、水まわりメーカーとしてより一層の存在感を示していきたいと考えています。
「全世界ホーロー化計画」のもと
グローバル展開を加速
当社が磨き上げてきた高品位ホーローは、国内のみならず、海外でも高い評価を得ています。とくに高温多湿な東南アジアでは、湿気や熱に強いホーロー製品の需要も旺盛で、富裕層を中心に人気を博しています。
現在は中国、台湾、ベトナムをメインに事業を展開していますが、今後はインドとインドネシアにも拡大していく計画です。2023年12月には、インドの大規模な展示会にも出展し、好感触が得られたことから、目下進出に向けてのパートナーを検討しています。
海外事業は、当社における新たな柱の1つです。新中期経営計画でも「Takara Global Vision2030」を掲げ、海外事業を加速させることを宣言しています。
世界中にホーローのキッチンやバスを広め、住宅の質とサステナビリティを高めていく。これを「全世界ホーロー化計画」として、今まさに取り組んでいるところです。
目標は、2030年度までに海外売上高100億円を達成し、日系キッチンブランドのグローバルトップを目指すこと。その実現に向けて、4月には海外事業部を社長直下の「グローバル事業本部」に変更し、人員も2倍に増強しました。
また、国内・海外を通じて、新規事業の拡大にも注力してまいります。その1つが、「ホーローパネル事業」です。
これは、高品位ホーローの技術を活かした内外装材で、住宅のみならず、駅舎や社屋、公共施設など幅広いシーンで活用されています。2023年に独自のホーローインクジェット印刷技術による高精細なデザイン手法が実用化されたことで、建築素材としての可能性はさらに拡大。その意匠性の高さから、現在では中国のオフィスビルなどでも使用されています。
これからもホーローパネルの市場を国内外に広げていくことで、多彩なホーローの魅力を世界にアピールしていきたいと考えています。専業メーカーとしてのプライドをもって、より良いキッチンやバスの開発を進める一方で、オープンイノベーションで新ビジネスを共創していく。そのためにも、今後は様々な企業やアカデミアとも積極的に連携を図っていく考えです。
例えば、具体的に動いているわけではありませんが、家電メーカーやITスタートアップとコラボすることで、自動化キッチンの開発なども期待できます。また、当社の釉薬技術を活用した新素材開発など、新しいビジネス領域での共創も視野に入れています。
我々が得意とする水まわりのものづくりと高品位ホーローの技術。これらを軸にお客様が求めるモノを提供することで、タカラスタンダードは新たなチャンスとチャレンジを創出してまいります。
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