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東京建物
都市開発事業第一部
八重洲一丁目東
プロジェクト推進室長沢 俊和氏
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日経BP 総合研究所
主席研究員小林暢子
東京駅八重洲口の目の前で建設が進む、地下4階、地上51階建て、高さ約250mの超高層オフィスビル。東京建物は地権者や様々なパートナーと共に「八重洲プロジェクト」を進めている。コンセプトにウェルビーイングを掲げる狙いなどを、プロジェクト責任者である同社の沢 俊和氏に日経BP 総合研究所の小林暢子が聞いた。
ウェルビーイングなオフィス環境とは?

東京駅の東側、八重洲・日本橋・京橋エリアは伝統と革新が交わる多様なまちだ。江戸時代には、大名屋敷が並んでいた丸の内とは対照的に、多くの職人や町人が暮らし、新しい文化を生み出した。明治維新以降は、経済面でも存在感を示すようになった。その地区で、大規模な再開発事業「八重洲プロジェクト」が進んでいる。コンセプトはウェルビーイングだ。
小林 コロナ禍以降、ウェルビーイングについての話題が増えています。出社と在宅ワークを併用するハイブリッドワークの定着もあり、とくに、働く環境がウェルビーイングへ与える影響への関心が高まっています。
沢 今、多くの企業が「人」に関する課題を抱えています。人的資本経営や健康経営の推進のためにもワーカーのウェルビーイング向上を実現するオフィス環境が求められていると考えました。ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に健康であることなどと定義されます。欧米では個人的な健康にフォーカスされる傾向がありますが、私たちは、個人を尊重しながらもより社会とのつながりを重視する、日本的なウェルビーイングを目指したいと考えています。
小林 日経BP 総合研究所が2024年4月に行った働き方に関する調査では、週に1~2回リモートワークを行い、他の日は出社する人が最も多くなりました。出社する理由としては「会社からの要請」に続き、「同僚などとの直接の対話」「仕事モードへの切り替え」を求める声が上位を占めました。また、リモートワークばかりで運動不足になった、食事が単調になったとの声も聞かれます。
沢 八重洲プロジェクトでは、13階に食堂などの機能を備えた入居企業向けのオフィスサポートフロア「Wab.(ワボ)」を用意します。キリンホールディングスとの協業により免疫ケアメニューを提供するほか、ワーカー同士が交流できるイベントキッチンの導入など、食を通じたコミュニケーション機会の創出とワーカーのウェルビーイング向上をサポートします。このフロアには集中作業やディスカッションに適したワークスペースも用意するので、仕事をする場の選択肢が広がり、気分転換やリフレッシュにもつながります。
ワーカーのウェルビーイング向上につながるサービス例
ウェルビーイングをエリア全体へ
小林 八重洲プロジェクトの施策とウェルビーイングの相関を教えてください。
沢 まずは、ウェルビーイングに関する施策をまちづくりに実装することを目的にプロジェクトチームを立ち上げ、予防医学研究者の石川善樹先生監修の下、約1万人を対象にアンケート調査を行いました。その調査結果を基に分析を行い、特定したのが20個の「ウェルビーイング向上因子」です。八重洲プロジェクトでは、この因子を基にサービスや施設を設計しています。41階の高層オフィスサポートフロア「YAESU SKY LOUNGE」には、周囲を気にせずにリフレッシュできる個室空間「リトリートルーム」を用意。温泉ミストによる湯治体験や瞑想といったウェルビーイング向上に資するサービスを提供します。
20個のウェルビーイング向上因子を特定
東京建物は、首都圏で働くビジネスパーソン約1万人にアンケート調査を実施。ウェルビーイングを向上させる行動や状況を分析し、上記20個のウェルビーイング向上因子を特定した。また、同調査の結果と学術的な見解を基に有用性が確認された設問に毎日1つ回答してもらうことで、個人のウェルビーイングの状態を簡易に測定・可視化できる「ウェルビーイングスコア」も開発している。
小林 調査による裏付けがあるわけですね。取り組みを八重洲プロジェクトの外へも広げる計画はありますか。
沢 八重洲・日本橋・京橋はYNK(インク)と呼ばれ、歴史的にも新しい価値観を取り入れて発展してきたエリアです。YNKエリアが有する多様性はウェルビーイング向上につながる重要な要素であり、本プロジェクトとの連携も計画しています。
当社は「リジェネレーション」という概念にも注目しています。サステナビリティの考えを発展させ、持続・維持にとどまらず、多元的な価値創出を目指すものです。例えば、交通機関による利便性ばかりを追求せず、あえて歩くことで様々な価値を見いだすウォーカブルなまちづくりは、排ガス削減に加え、働く人の健康増進やコミュニケーションの促進、地域の店やまちへの愛着を生み出すといった効果も期待できます。デベロッパーとして、こうした価値観の醸成と浸透にも貢献していきたいと考えています。
小林 素晴らしい考え方ですね。ただ、1社だけでは取り組みに限界があるのではないでしょうか。
沢 その通りです。ですから仲間をつくっていきます。ビルの入居者様、地域の商店や企業などと連携し、共に知恵を出し合える環境をつくっていきたいのです。そうした環境を用意するのも、私たちのようなまちづくりに取り組む企業の役割だと思っています。