テリロジーホールディングス 代表取締役社長 鈴木 達氏
PROFILE
鈴木 達 [すずき・とおる]
1959年山形県生まれ。東北大学経済学部卒業。経営学修士。1982年日商岩井(現・双日)入社。ITX取締役、UCOM代表取締役社長、オリンパスビジネスクリエイツ代表取締役、日商エレクトロニクス取締役常務、インヴェンティット代表取締役社長を歴任し、2016年テリロジー入社。2024年4月にテリロジーホールディングス代表取締役社長に就任。
「一意専心」の気概を持つ
多様なグループ企業の連携によって
社会課題の解決に貢献する
松尾芭蕉が「五月雨を集めて早し最上川」と詠んだ最上川。その山形県北部の戸沢村が私の生まれたところです。江戸時代には新庄藩の船番所が置かれていたことで知られる村ですが、四方を山に囲まれた狭い盆地で、しかも豪雪地帯であり、産業がなかなか育たず、人口もどんどん減少して過疎化が進む状況にありました。
当時、7期にわたり村政を担っていた祖父は、そんな戸沢村をどうすれば豊かな地域にできるかと粉骨砕身していました。その姿を間近で見ていた私は幼心に大きな影響を受け、お互いが助け合う相互扶助の精神の大切さを学びました。
その後、地元の山形東高校に進みます。ここでも素晴らしい友人や先輩、先生方に恵まれ、多くのことを学びました。また、私はフェンシングで山形県のチャンピオンにもなったのですが、部活動を通じて顧問の先生から教え込まれたのが、騎士道の基本である「ノブレスオブリージュ(仏: Noblesse Oblige)」の精神です。
私利私欲に流されず、強き者は弱き者を助けるべきである――。この倫理観が、現在まで私の根幹を形成しています。
33歳で初めて経営した会社を
6年で年商45億へ成長させる
東北大学を卒業し、総合商社の日商岩井(現・双日)に就職しました。自由闊達で、若手にもどんどん仕事を任せる企業風土がある日商岩井は、まさに私があこがれる商社像にぴったりでした。
ITビジネスとの出会いは入社3年目のときです。人事部で新卒採用や研修を担当していたのですが、1984年、米国の通信自由化による市場の急拡大を見据え、情報産業本部が新設されました。私はここに最年少メンバーとしてスカウトされたのです。以降、通信プロジェクト案件を中心に、通信機器のマレーシア生産シフトの現地合弁事業立ち上げ、そしてそれを北米市場で流通・販売する事業会社への駐在など会社経営を経験。帰国後、情報処理サービス事業の社内ベンチャーとして創業したアトラクス社の代表取締役社長に抜擢されました。当時の私はまだ33歳の平社員です。そんな若輩者に経営を任せてくれて、10億円もの大金を投資してくれる。嬉しさと共に、その責任と期待の大きさに、身震いする思いでした。
私が社長を務めた6年間でアトラクスは年商45億円、営業利益5億円、従業員数150人の会社に成長しました。この経験から、私は事業弾力度の高いIT分野でさらに実績を重ね、社会に大きく貢献できる企業経営者になりたいと強く考えるようになりました。

小規模でも、ポジションを
確立できる市場をつくる
その後も国内外複数企業の立ち上げや上場、再建、売却、清算などあらゆる経験をしました。ご縁があってお声をかけていただき、2016年からテリロジーに参画。2024年3月にテリロジーホールディングスの代表取締役社長を拝命しました。
名だたる大手企業が群雄割拠するIT業界にあって、私たちテリロジーグループは2023年度の連結売上が約70億円規模、従業員数も現在333名の独立系の小さな上場会社です。しかし、“小国には小国なりの戦い方”があると私は考えています。
「スーパーニッチャーからグローバルニッチャーへ」というスローガンはその1つ。小国が生き残るには、自分たちの得意領域をつくり上げることが不可欠です。今後成長が見込める次世代ニーズをいち早く見いだし、まずは規模が小さくても支配的な地位を獲得できる市場をつくり、その市場を育成・拡大させていく。これが基本戦略です。
具体的には、特定領域を深掘りする専門性の高いグループ企業をつくり出し、事業連携・展開していく。それぞれがエッジを効かせた「一意専心」の気概で事業拡大に注力する。これによりグループとしての収益リスクの分散を図り、事業に関連性と多様性を持たせ様々な社会課題の解決に貢献したいと考えています。
テクノロジーの知見と高い経営能力を持つ
人材の育成こそが成長の鍵
OT(制御技術)分野向けのセキュリティソリューションはその1つの代表例です。長く製造業界の常識であった「工場内は閉域網、サイバー攻撃とは無縁だ」という考えは、もはや通用しなくなりました。この市場に早くから着目して品ぞろえをし、高い知見と経験を持った当社グループと共にOTセキュリティ強化に取り組むお客様が増えています。
そのほか、各種マネージドサービスをはじめとした「セキュリティソリューション+サービス」のバンドルモデルも、グループ事業連携を生かせる我々ならではのものだと自負しています。さらに最近は、訪日外国人向けの多言語映像通訳サービス「みえる通訳」も提供開始。インバウンド市場のみならず、在日外国人向けの防災、学校教育、病院、役所窓口対応など利用シーンも増えています。このように業容の転換スピードが速いのも当社の強みです。
最後に、このビジネスモデルを加速していく際に欠かせないのが人材です。私自身がそうだったように、若いうちから経営の実戦経験を積ませる形での経営者人材育成を後押ししたいと思います。
デジタル技術は、いまやあらゆる産業に欠かせないものになりました。私たちは、自らの知見や技術で社会の課題解決に貢献しなければならない。それが、これからの時代の私共の使命だと考えています。
記事中の肩書きやデータは公開時点の情報です




