利益を増やしたければ支出に目を向けよ
注目集める「支出管理」とその効果は

株式会社IDホールディングス 代表取締役社長 グループ最高経営責任者 舩越 真樹氏
株式会社TOKIUM
代表取締役
黒﨑 賢一
日経BP 総合研究所
イノベーションICTラボ所長
大和田 尚孝
株式会社TOKIUM
代表取締役
黒﨑 賢一

1991年生まれ。筑波大学在学中の2012年に株式会社BearTail(現TOKIUM)を共同創業。2016年には法人向けサービス「TOKIUM経費精算」、2020年には請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」をリリース。2021年末から2022年にかけて約35億円の資金調達を実施し、支出管理クラウド「TOKIUM」を通して、企業の支出に関する業務における課題解決に取り組む。

日経BP 総合研究所
イノベーションICTラボ所長
大和田 尚孝

SEを経て2001年日経BP入社。『日経コンピュータ』記者としてエンタープライズIT分野の取材を重ねる。2010年副編集長。2012年アジア事業プロデューサー兼務。2014年に日本経済新聞社出向、IT/通信業界を担当。2017年日経コンピュータ編集長。2019年『日経クロステック』IT編集長を兼務。2020年4月総合研究所イノベーションICTラボ上席研究員。2022年4月から現職

企業が利益を増やすためには、当然ながら「売上増大」と「支出最適化」の両面で取り組みを進める必要がある。ところが、売り上げに関するデータ活用は進んでいるものの、支出に関するデータの取得・活用は遅れている。請求書や領収書などの多くの書類が紙ベースで扱われており、棚に保管されたままだったり、全社で共有できていなかったりする企業は多いはずだ。このような問題を解決し、利益増につなぐ「支出管理」の考え方と、その導入方法について、TOKIUM代表の黒﨑賢一氏、日経BP総合研究所 イノベーションICTラボ所長の大和田 尚孝が語り合った。

売上増と同様の効果を
より少ない労力で生み出す

大和田 あらゆる企業・組織にDXは不可欠ですが、日本企業の取り組みは欧米に比べて遅れていると言われます。その要因や、DXを加速するためのポイントについてどのように考えていますか。

黒﨑 DXが遅れている背景には、ソフトウエア活用で成果を上げた実体験をもつ経営層や管理職が少ないことがあると思います。成功体験がないため、思い切った施策を展開できずにいるのではないでしょうか。

 ただ、コロナ禍を経て空気が変わりました。半ば強制的ながらも業務のデジタル化が進んだ結果、「苦境を乗り切ることができた」「自社も変われる」という自信が芽生え、システム投資が加速しているように感じます。

大和田 経営層が自らデジタル活用の効果を感じられたことは大きいですね。その上で、DXのゴールは「デジタル活用によって付加価値を創出すること」であり、価値の創出が利益につながります。つまり「持続的成長のための利益を確保する」こととも表現できますが、このようなゴールに向けて企業が取り組むべきことは何でしょうか。

黒﨑 利益を増やす方法そのものはシンプルで、売り上げを増やすか支出を減らすしかありません。売り上げについては既に多くの企業がSFA(営業支援)やMA(マーケティングオートメーション)などのツールを導入し、様々な取り組みを進めています。注目すべきは支出です。売り上げを上げるための投資は活発に行われてきましたが、支出削減に向けた投資はこれまであまり行われてきませんでした。もちろん、プロジェクトごとにコスト削減に取り組む日本企業は多いですが、支出を部門横断的に可視化して、最適化に取り組めている企業は多くありません。実際に、新たな拠点や店舗を展開する際、過去の膨大な購買履歴や発注に至った経緯などのデータを参照して、ベストな調達につなげるなど、利益増に向けて戦略的に取り組めば、売り上げを伸ばすよりも支出を削減する方が近道だという話もあります。

意思決定の迅速化、利益増など
多くの効果をもたらす支出管理

大和田 支出に関する戦略的な意思決定を実践できている企業は、まだ少ないという指摘ですね。たしかに、それはそう感じます。

黒﨑 求められるのは、これまで紙で扱われてきた膨大な支出関連の書類をデジタル化し、部署や拠点などをまたいで共有することによって、データをいつでも活用できるようにすることです。この考え方は「支出管理(BSM:Business Spend Management)」と呼ばれ、欧米を中心に採用する企業が増えています。

 デジタル化して一元管理することで、支出の傾向やパターンを把握したり、分析したりできるようになります。これにより、購買の最適化やコスト削減、経営判断の迅速化につなげることが可能です。

大和田 単に目先の支出あるいは特定部署の支出を削減するのではなく、意思決定を迅速化して将来の支出を最適化する、あるいは全社規模での支出を減らして利益増につなげるのが支出管理のポイントですね。

黒﨑 おっしゃるとおりです。当社は、これを支えるソリューションとして支出管理クラウド「TOKIUM」を提供しています。
「BSM(Business Spend Manegement:企業の支出管理)領域のプラットフォーム構想」
「BSM(Business Spend Manegement:企業の支出管理)領域のプラットフォーム構想」

日本固有の業務課題だからこそ
国産製品の強みが生きる

大和田 TOKIUMの特徴はどこにありますか。

黒﨑 先ほど、支出管理にはまず紙をデジタル化して可視化することが必要だとお話ししました。膨大な量の領収書や請求書を紙で保管している企業はまだ多くあります。TOKIUMは、それらの書類の受領を代行し、専任のオペレーターとAI-OCRによって高い精度でデータ化、そのまま保管まで行います。

 これにより、紙のデジタル化と業務負荷軽減の両方を実現します。ゆくゆくは、利益増につなげる支出管理も実現していきたいと考えています。現在は請求書や領収書のほか、契約書などの書類も扱えるように機能強化を進めています。

大和田 黒﨑さんは創業者として、どのような思いでこのサービスを創り上げたのですか。

黒﨑 私は創業以来一貫して、支出管理に関する事業を手掛けてきました。なぜなら、「何にお金を使うか」がその人や法人の今後を左右し、お金の使い方で時間の使い方が変わると考えているからです。

 おかげ様で導入社数も増えてきています。お客様に不安を与えないために、投資家からの資金調達やテレビCMの出稿、会計監査やセキュリティー監査への対応も行っています。

大和田 導入企業はどのようにTOKIUMを活用しているのですか。

黒﨑 モバイルバッテリーなどの世界的ブランドを提供するアンカー・ジャパン様では、社内承認と請求書処理を別々のシステムで行っていたため、予実管理が難しく、データ活用も上手くできていないことに課題を感じていました。導入後は部門ごと、プロジェクトごとに費用を細かく把握できるようになったほか、カテゴリー別、ブランド別、販売チャネル別などで支出データを活用しやすい環境を構築しています。

大和田 DXを積極的に推進する企業に採用され、その実績や成果などが増えてくると、後に続く企業としても導入しやすくなりますね。ユーザー企業にさらなる価値を提供するため、今後はTOKIUMをどのように進化させていくつもりですか。

黒﨑 一元管理した支出データをTOKIUM上で分析できるようにし、企業の利益創出に貢献できるサービスに育てることで、より大きく社会に貢献できればと思います。2024年2月28日にウェスティンホテル東京で開催するカンファレンスでは、この辺りについてもう少し詳しくお話ししたいと考えて います。

大和田 支出管理という側面から、日本企業のDXへの後押しを期待しています。
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