「紙を電子化する」ではなく
「作業をなくす」

企業間取引、
真のデジタル化
アプローチ

企業間取引のデジタル化は日本企業にとって喫緊のテーマだ。帳票のペーパーレス化による工数削減、環境負荷低減のほか、蓄積した取引データを活用した新たな施策を生み出すことも容易になる。ところが、この領域で日本は世界に大きく後れを取っている。速やかにデジタル化を進める方法とその効果について、トレードシフトジャパンの菊池 孝明氏に聞いた。

帳票の電子化はまだ中間段階
取引プロセスのデジタル化を

トレードシフトジャパン株式会社 代表取締役社長 菊池 孝明氏
トレードシフトジャパン株式会社
代表取締役社長
菊池 孝明
NTTで新規サービス立ち上げに携わり、外資系企業でプロジェクト責任者などを歴任。2014年、トレードシフトジャパンの設立に参画し、ゼネラルマネジャーとして国内市場開拓とサービス展開を指揮。2020年1月より現職
――日本における企業間取引は、海外に比べてアナログなプロセスが多く残っているといわれます。原因はどこにあるのでしょうか。

菊池 何事も「大きく変えることを嫌う」マインドがあることは根底にあると思います。インフラ面では、日本のインターネットカバー率はほぼ100%なので、決して海外に比べてデジタル化が困難というわけではありません。しかし、デジタル化の効果を正しく理解できていないために、抜本的なDXを意思決定できる経営者や経営幹部がまだ少ないのではないでしょうか。

――紙の帳票の電子化(PDF化)を進める企業は徐々に増えていますが、これとデジタル化はどう違うのですか。

菊池「電子化」は紙からPDFなどの画像データに保存媒体を置換するものです。一方で「デジタル化」は意味付け・構造化されたデータにすることを指し、これにより人とシステムの両方が処理できるようになります。電子化はデジタル化に向けた中間段階だと位置付けられていますので、それ自体は悪いことではありませんが、その効果は限定的です。

 例えば、郵送でやりとりしていた紙の帳票をそのままPDF化しただけでは、受け取り側は記載内容をシステムに手入力したり、OCRで読み取ったりしてデータ化しなければなりません。

 プロセスを全面的にデジタル化すれば、紙帳票を扱う作業やデータ入力などの作業自体がなくなります。さらに、リアルタイムな情報連携によるスピード向上や、取引データを使った経営分析、共創による価値創出の可能性も広がります。デジタル化の真の価値はそこにあると考えています。

まず取り組むべきは請求書
非効率なプロセスを「なくす」

――多種多様な企業間取引の中で、どこから手を付けるのがお勧めですか。

菊池 取り組みやすいのは請求書(インボイス)です。インボイス制度は社会で広く認知されており、社内承認を取りやすいこと、また取引先にも理解を得られやすいことがその理由です。また、あらゆる企業が扱うものであるため、効果創出につなげやすいことも要因です。日本政府もデジタルインボイスへの移行を推奨しています。

 請求書をきっかけに企業間取引のデジタル化を始め、そこから上流プロセスである購買、調達プロセスのデジタル化に進んでいく。このアプローチをお勧めしています。

――デジタルインボイスの導入によって得られる効果を教えてください。

菊池 請求・支払、入金消し込みなどの業務における工数・コスト削減とチェックの自動化などによるスピードアップが期待できます。また、物理的な制約がなくなるため、テレワークの推進、さらには業務の平準化も実現できます。送付コスト削減を目的に請求をまとめる必要がなくなるため、売り手は納品後すぐに請求でき、買い手も月末を待たずに会計仕訳を進めることができます。

 日本では労働力不足が大きな問題になっています。その意味でも、PDF化のようなカイゼンにより既存工数を「削る」ことから一歩進めて、プロセスそのものを「なくす」発想が非常に重要です。

基本機能が無料で
操作も簡単
取引先が参加しやすい
仕組みを用意

――ただ、企業間取引のデジタル化では取引先の合意や対応が必要です。これがハードルとなり、思うように取り組みを進められないケースもあるようです。

菊池 その通りですね。「取引をデジタル化したい」という自社の提案にどれだけ多くの取引先が賛同してくれるか。この割合を高めるには、相手にもメリットのある仕組みを用意することが大切です。

 当社が提供する企業間取引プラットフォーム「Tradeshift」は、導入企業はもちろん、取引先企業も基本機能を無料で利用できます。操作もスマートフォンのアプリのように簡単で、マニュアルを見なくても使えます。始める際の経済的・心理的ハードルをなくすことで、多くの取引先が参加しやすい仕組みにしています。

 また、アプリを使って自由に機能拡張ができることにより、複雑なプロセスを必要とする大企業のニーズにも柔軟に対応できます。

 既に世界200万社以上がTradeshiftを利用して、成果を生み出しています。例えばある海外のお客様は、別のシステムで企業間取引のデジタル化を進めたものの、参加してくれる取引先がなかなか増えず、4年間で350社ほどに留まっていました。それがTradeshift導入後、わずか1年で5000社を達成しました。そのほか、多くの国内企業が短期間で取引先の参加率を高め、成果を上げています(図)。
国内におけるTradeshift導入企業の取引先参加率
国内におけるTradeshift導入企業の取引先参加率
多くの企業が導入後数カ月~1年程度で70%以上の取引先の参加を実現している。操作が簡単で、取引先も無料で使える点がその大きな理由といえるだろう
――大きな成果を得るためにも、発想の転換が大事だということですね。

菊池 人口減少が加速する日本において、人がいないと回らない業務は近い将来、事業の大きな足かせになります。「業務の自動化やアウトソーシングを考えている」という声を耳にすることもありますが、その前に、デジタル化により不要なプロセスをなくすことが肝心です。自動化やアウトソーシングにおいても、対象となるプロセスが短くシンプルである方が経済的であり、属人化を解消する効果もあります。

 俯瞰的に見れば、デジタル化を進めて人の負担を削減することは、社員の働きやすさやエンゲージメントの向上、ひいては組織自体の魅力アップにつながるものです。単純/反復作業はなるべくシステムに任せて、人はよりクリエイティブで楽しい仕事にシフトする。この視点でも、企業活動の起点である取引のデジタル化は不可欠です。Tradeshiftの導入がその第一歩を踏み出すきっかけになれば、こんなうれしいことはありません。
お問い合わせ
トレードシフトジャパン株式会社 URL:https://tradeshift.com/ja/